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第46話 外伝5 愛憎の末路

Side ~人魚~


勇者の子供達との戦いから、しばらく経ったとある日。

私はいつも通り水球にあの人を閉じ込め、溺れ苦しむ様を楽しんでいた。





ああ、歌いたいなぁ。





・・・って、ダメダメ。

またあの子達のような強い連中と戦う羽目になったらたまらないわ!!


あの子達はまだ、話せばわかってくれたけど、普通は人外となった私の話なんか聞こうとしない。

今思えば本当、不思議な子供達だったわね・・・。





あれ?


辺りが真っ暗?

おかしいわ。

まだ、お昼のはずなのに??





「ぎゃああああああああ!!!!」


ボキッ!!





!?


あの人の声?

え??

空中に浮かべていた、私の水球が消えた???


どうして・・・。



「あううう・・・あ!?

 ニンヨの奴、なんか様子が変だな。

 !! ハハハ、そうか。とうとう死ぬ時が来たのか。」



死。


そうか。

私、もうすぐ死ぬのね。


でもその前に一つだけ、やらないといけない事がある・・・。


「まあ、魔族にしては長生きだったかな?

 はー・・・これでやっと溺れる苦しみから解放される。

 ざまぁ見やがれ、あーはっはっは!!


 っておい、ニンヨ。何マジックバックなんか漁ってやがる?

 なんだそのロープは・・・やめろ、こっちくんな!!」


私はマジックバックからロープを取り出し、あの人を縛り上げた。

仮に死ぬ直前だったとしても、あの人をロープで縛りつける程度、楽勝よ。


だってあの人、弱すぎるもの。


「ニ・・・ニンヨ、どういうつもりだ?

 俺をロープでなんか縛って、何をする気だ!?」


「シラタ様・・・あなたの言う通り、私、もうすぐ死ぬと思うわ。

 だから命が尽きる前にあなたを湖の底の岩にでも縛り付けようと思って、ね。


 大丈夫。私が死んだらあなたに掛かっている死ねない呪術も解ける。

 呪術が解けて数十分も経てば、あなたは溺死するはずよ。」


「ふ、ふざけるなああああ!!

 やめろ、やめてくれええええええええ!!!!

 死にたくなーーーーーーーい!!」


「嫌よ。絶対にやめない。

 だってあなた、私が家族を殺したくないって言っても聞いてくれなかったじゃない・・・。

 さあ、湖の中で最後の一時を過ごしましょう。」


「嫌だああああああああ!!!!」


子供のように藻掻くあの人を引きづりながら、湖へと向かう私。


いつもならこれくらい、全然余裕なのに今日はとても辛い。

この調子だと、湖の中に入る前に力尽きるかもしれない。



けど、私は・・・。


--------


「いつか、君が憎しみから解き放たれる事を願ってるよ。」


「もうあの男への復讐にケリを付けて、前を向いて生きていかないか?

 ずっと憎しみに囚われてるみたいで、悲しく思えるんだよ。」


--------


・・・私は、最後まであの人への想いを貫いて見せる!!

だって私にはあの人への想い以外、何も残っていないんだから!!!!





ぶわっ!!





風?





あ、悪魔?

私とあの人をここまで運んでくれた、あの悪魔だわ。


だけど、悪魔は何をするでもなく、静かに私を見つめている。

恨み多いはずのあの人には目もくれず、私の最後を見届けるかのように・・・。



「・・・心配しなくても大丈夫。

 あの日、魔王様に誓った通り、私は命尽きるまであの人への想いを貫き通すから!!」


「・・・・・・。」



私の想いを聞いてなお、悪魔はただ静かに私を見続けている。

死に際を見届けにやって来る悪魔・・・なんて恐ろしいのかしら?


けど、神も天使も私があの人にどれだけ苦しめられようが、全然手を差し伸べてくれなかった。

それに比べたらまだ、あの悪魔の方が心優しいのかもしれないわね。


少しだけ気力を取り戻した私は、なけなしの力を振り絞り、あの人と共に湖へと飛び込んだ。


「ガボ、ガボボボボボ!!」


そして湖の底の適当な岩とあの人をロープで繋ぎ、決して解ける事がないよう、強く結ぶ。


よしっ。

これで私が死んでも、あの人は湖から抜け出す事は出来ない。

あとは命を尽きるのを待つばかり。


呼吸が出来ない苦しみと、死への恐怖で水よりも青ざめた表情のあの人へ私はそっと寄り添った。





振り返れば、私のあの人への想いはいつ無くなってもおかしくないものだったと思う。





曲りなりにも愛した人を傷つける事に罪悪感を持ち、苦しむ事も多かった。

もうこれくらいで許すべきかと、悩んだ事も幾度となくあった。



他の人と恋に落ち、幸せになりたいと言う気持ちもあった。

こんな姿の私でも、きっと愛してくれる人がいると信じて。



でも私にはあの人への想いを捨てる勇気が無かった。


勇者や彼の子供、ライトの言う通り、憎しみを捨て、前を向いて生きれたら・・・。

全てを捨てて、残り少ない人生を目一杯楽しめたらどれだけ幸せだっただろうか?


だけど私には、そういった生き方を選ぶ事が出来なかった。



そんな弱い私を救ってくれたのがあの人だった。

私の仕返しに憎悪を持っていたとは言え、あの人は元々は自分が悪かったんだと気付くことさえ無かった。


あの人が少しでも、ほんの少しでも私への罪悪感を持ち、心の底から謝罪してくれたのであれば。

過去の仕打ちを許し、あの人を解放したかもしれない。

そして空っぽになった私は生きる気力を失っていたに違いない・・・。


・・・あの人が最後の最後までクズであり続けたおかげで、私の持つ怒りが、想いが最後まで消えずに済んだの。

ありがとう、本当にありがとう!!



さあ、一緒に地獄へ行きましょう。

絶対に生まれ変われないよう、死後の世界でも永遠に縛り付けてあげるから!!


私はあの人を抱き枕のようにぎゅーっと抱きしめながら、意識を朦朧とさせる。

骨にヒビでも入ったのか、あの人はますます苦しそうな表情になったけど、きっと許してくれるよね。


お休み、私の大好きなシラタ様。

私がいつどこで目覚めたとしても・・・。





エイエンニイッショダカラネ。





私が意識を失う寸前、悪魔がどこかへと飛び立ったのが見えた。

一枚の黒い羽根が落ち、湖の上に浮かんでいる。


その景色を最後に私、ニンヨは死後の世界へと旅立った。

最愛のシラタ様と共に・・・。


これで人魚の話は終了です。

やっぱり恋愛話は難しいですね。

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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

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