表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/297

第45話 人魚編⑥ 正義無き判断

一応、勇者と魔王の物語なので「正義」がテーマになる事もちょくちょくあります。

・・・主人公があれな性格なので、模範解答からは程遠いですがw

傍迷惑な人魚とその愛人(?)のいざこざからようやく解放された俺達。


・・・なんかもう疲れた。

今日は早く休みたい。





「全く、傍迷惑な連中だよな。

 あんな事情があるなら、初めから話してくれれば良かったのに・・・。」


話してくれればアカリもレイドも、無闇に首を突っ込もうとはしなかったはず。


「それな。

 ・・・あー、しんど。

 中級魔法を使った後はやっぱ堪えるわぁ。」


「・・・。」


そう言えば、俺も中級魔法を使ったけど今回はそこまで消耗してないな。

発動させただけで、力を放出しなかったからかな?


「本当、あの男ったら最低。

 同じ人間なのが信じられないわ!!」


「罪と罰のバランスはきちんと取るべき。

 あの男は惨い罰を受けて当然の罪を犯している。」


アカリやユラもあの男に対し、怒りを露わにしている。

人魚と同じ性別なだけに、俺やエルム以上に憤りを感じているようだ。


「まっ、今回の俺達の行動は紛れもなく正義だよな。

 これで上級魔法に一歩、近づいたってもんだ。」


「正義って・・・。

 人魚の味方をした事がか?」


「違うよ。ほら、人魚やあの男がこんなニュアンスの事、言ってたじゃん。

 『大半の人間は自分達と関わるのを嫌がって去って行った。』って。


 つまり俺達は大半の人間と同じ行動を取ったんだ。

 これを正義と言わずに何と言おうか!!」


『大勢の人と同じ選択肢を取る』は俺が真理だと信じている数少ない正義である。

こればっかりは、誰にも否定なんて出来やしない。

否定する奴は『人間なんて皆、間違いだらけの悪党』と、公言しているようなものだからな。


だからこそ俺は、自分や仲間、親しくなった人などがピンチにならない限り、この正義を遂行しようと思っている。


「あのねぇ、ライト。

 まあ、今回に限ってはライトの事、あんまり攻めれないけど・・・。」


そりゃ結果的に俺と同じ判断を下したからな。

だけど俺の言いたい事はそれだけではない。


「それにさ、仮に町や国のお役人達があの人魚と出くわしたとしよう。

 事情を知ればきっと見て見ぬ振りをするに違いないぜ。


 だってあの人魚は、町を半壊させたハオガーに匹敵するパワーを持ってるんだ。

 下手に刺激すれば、自分達の命が危ないどころか、無関係な人達にまで被害が及ぶかもしれない。

 そうとわかってて、あんな助ける価値も無い奴に手を差し伸べたりなんてしないだろ?」


「つまり人を裁く権利のあるお役人だって、私達や怯えて逃げ出した人達と似たような行動を取るはず。

 だから今回の行動は正義だって、言いたいの?」


「そゆこと。」


あの人魚に限らず、法を犯そうが裁かれないケースは少なくない。

お偉いさんの悪行とか。

そこにはお金や保身、周りへの悪影響が大きいなどの理由でもあるのだろう。


そういう意味では人外の力を持つ魔族も、悪事を働くお偉いさんも変わらないのかもしれないな。


まあとにかく、大勢の人が取るであろう判断+人を裁くお役人ですら取るであろう判断。

それらと似たような判断を下した俺達が、絶対正義である事に疑いようは無いはずだ!!


「いやあの・・・言いたい事はわかるけどさぁ。

 お前、絶対『正義』をバカにしてるよな?」


エルムの奴、妙な誤解を。

正義をバカにするなんて恐れ多い事、するはずないってば。


「ライト・・・。

 『お役人の判断』や『大勢の人と同じ行動』が正しいとは限らない。

 思考停止しちゃダメ。」


お前ら・・・まあ、言いたい事はわかるよ?

だけどさ。





「あのな、ユラ。

 もし『お役人の判断』や『大勢の人と同じ行動』が正義じゃないとしたら、さ。

 今回の一件に正義なんて無いんだよ。


 どんな選択を取ろうが、何かが間違ってるし、誰かが理不尽な思いをするんだ。

 そして俺達は非道な人間として、貶される事になる。」





「・・・え?」


「あの男が言ってたんじゃん。

 俺達の事を『苦しめられている人間を放置する外道』ってさ。

 あと『ここで人魚を殺さなければ、討伐しようと近づいた連中が犠牲になる』とも、言ってたっけな?


 それはそれで、間違った意見って訳じゃないんだよ。

 ・・・あいつ自身が言うのはどうかと思うけど。」


見方によっては、人魚は既に終わった事を掘り返して不幸を撒き散らしてる、とも取れる。

だから人魚を止めず、苦しめられるあの男を放置する事は完璧に正しい行いとは言えない。


とは言え・・・。


「じゃ、じゃあ人魚を倒して、あの男を助けた方が良かったって言うの!?」


「そうとも言い切れないさ、アカリ。

 あの男は人魚に対して、取り返しの付かない事をした・・・しかも、薄汚い私欲のために。


 それなのに人魚に復讐を止めろだなんて、あの男にばっか都合が良くて理不尽だろ?

 大体、あの男が余計な事をしなければ、誰も不幸にならずに済んだ訳だしさ。」


それにユラも言ってたが、あの男を解放する事で、人魚を放置する以上の災厄が生まれる可能性も高い。

そういう意味では、あの男よりも人魚を尊重する方が世の中のためとも言える。


「まあ、二人とも改心させるってのが、一番良いとは思うけど・・・。

 片や復讐しか頭に無い人魚。片や救いようの無い極悪人。

 そんな二人に赤の他人が薄っぺらい説教なんぞした所で、通じるはずないだろ?」


「だからライトは『今回の一件に正義なんて無い』って考えたのね。

 なんだかやり切れないわ・・・。」


一応、二人とも世界にとって害悪だから、まとめてぶっ殺してしまえ!!

って、考え方もあるけど・・・うん。

権利も無いのに正義がどうとか言って、自分達と無関係な連中を惨殺するなんて、サイコパスすぎて絶対無理。


そもそも主観で悪を成敗するってのが、あんまり健全じゃないしなぁ。

そんな暴挙を許した所で、不毛な争いが増えるだけである。





「とにかく、今回の一件はどんな選択を取ろうと何かが間違ってしまうんだ。

 だったらもう、直感で判断しちゃえば良いんだよ。

 どれだけ考えようと、正しい答えなんて絶対に無いんだからな。」





つまり人魚とのいざこざに巻き込まれた時点で、俺達は正義無き判断を下さなければならなかった訳だ。

ああ・・・なんて可哀想な俺達。


「こいつ、最後の最後で台無しにしやがった!!

 ・・・さすがライト。無駄に捻くれてやがる。」


「ライトは考えてるのか、考えて無いのかわからない。」


こらこら。エルム、ユラ。

急に呆れた顔すんな。


「あ~あ。やっぱり正義を成そうと思ったらさ。

 権力持って自分が絶対正義でいられるようにするとか?

 サンドバッグになりそうな相手を集団リンチにするとか?

 そういう方法しか無いのかなぁ。」


つっても、今の俺達に権力を求めたり、弱い者いじめをするような暇なんぞ無い。

いつ、魔王の呪いで死ぬかわからないんだし・・・。


つまり、楽して正義を成し遂げる事なんて出来ないのだ。

悲しい話である。


「また捻くれた事を・・・。

 あのね、ライト。

 そんな事したって、誰のためにもならないでしょうが!!」


「そりゃそうだけどさ。

 けど、そうでもしないと常に正義でなんていられないだろ?」


「目的と手段が入れ替わってるぞ、お前。」





しょうもない言い合いをしながらも、俺は思う。


今回の件に限らず、正しい答えの無い物事なんてたくさんある。

だが、それを完璧に避けながら生きていくなんてまず不可能だ。


常に正義でいるなんて本当に幸せな奴以外、無理なのかもしれないな・・・。









「・・・。」


それにしてもさっきからレイドの奴、嫌に静かだな。

あいつ、意外とお喋りなのにさ。


「おいおい、やけに静かじゃん。レイド。

 人魚との戦いでは、中級魔法まで覚えて大活躍だったのによぉ。」


そう言いながら、エルムがレイドの背中を軽く叩いた。



ドサッ。



え?



「「え、えええええええええ!!!!」」


「う、うわぁああああ!!!!

 レイド? レイド!!」


うつ伏せになったまま起き上がらないレイドに、俺達は思わず騒ぎ出す。


「さ・・・騒がなくて良い。

 大丈夫、だから・・・。」


あ、生きてる。

良かった。


全く、脅かすなよな。

大体なんで、背中を軽く叩かれただけでぶっ倒れるんだよ・・・って、まさかこいつ!!


「さてはお前、めっちゃ疲れてる癖にやせ我慢してたな?」


中級魔法って、かなり体力を消耗するからなぁ。

特に初めて使った時の脱力感は半端無い。


「ほら、起きて。レイド。」


倒れているレイドに対し、ユラが手を差し伸べる。


「ありがとう、ユラ。」


「お前な・・・。

 今は敵もいないんだし、見栄なんて張らなくて良いだろ!?」


「う、うるさい。

 男たるもの、人前で情けない格好など晒せるものか。

 俺は疲れになんぞ絶対に負けん!!」


そう叫びながら、必死で普段通りに振舞おうとするレイド。

お前は一体、何と戦ってるんだ?





変な連れに脱力しつつも、俺達の旅はまだまだ続くのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ