第47話 外伝6 とある村の悲劇
Side ~村長~
わしはとある村の村長である。
わしの村はとても美味しい果物が作られる事で有名でのぅ。
それ故、果物村などと呼ばれておる。
それほど大きな村ではないが、わしらは豊かで平和な日々を過ごしておった。
・・・あの日までは。
とある日の事、果物の収穫に励んでおったわしらの前に、闇大陸の王を名乗る男がやってきたのじゃ。
とても巨大な鳥に乗っとるもんじゃから驚いたわい。
呆然とするわしらを尻目に、自称王様は勝手に果物を1つ取り齧りついた。
「ほう!!
噂通り美味いじゃないか、この村の果物は。
気に入った!!」
そして、とんでもない事を言い出しおった!!
「村民共よ、この国の王として命じる。
この村にある果物と財産の9割を税として納めろ!!」
9・・・9割だと!?
バカ言うでないわ!!
普通、税などせいぜいが収穫の約3割程度じゃわい。
それにどんな暴君であろうと9割も税を取る者などおらぬ。
そんなに蓄えを奪うと、村の存続自体、危うくなるからのぅ。
短期的にならまだしも、長期的に見れば税を取る側としても悪手でしかないわ!!
この者・・・姿形こそこの国の王であらせられるが、きっと姿だけ似せた偽物に違いないじゃろう。
これほど頭の悪い発言をするものなぞ、国の王どころか村の長すら務まらぬ。
「申し訳ありませぬが、お断りしますですじゃ。
そのような愚かな発言をする者を、王として扱う気はありませぬ。」
そう言いながら、わしは手で合図し、この村で雇っている護衛達を呼び寄せる。
・・・この村は果物や財産を狙って、悪者達が近寄ってきやすいからのぅ。
こんな時に備えて、屈強な護衛達を雇っておるのじゃ。
中には魔法を使えるものもおるでの、山賊程度なら軽く返り討ちに出来るわい。
「まっ、あんたの言う事ももっともだ。
けどな・・・頂上国の王族だったらこの程度の事、当たり前のように命じるぜ!!」
そんな作り話の愚王共と現実を一緒にするでないわ!!
「戯言など聞く気はありませぬ。
痛い目を見たくなければ、早くお帰りくだされ。
偽の王よ。」
「しょうがねぇなあ・・・よしっ。
じゃあ俺と勝負して勝ったら、税を取るのは許してやろう。」
勝負じゃと?
この偽王は一体、何を考えておるのだ!?
じゃが偽王1人ならともかく、あの巨大な鳥に暴れられるとかなりの被害が出るじゃろう。
それに巨大な鳥の上に幾人もの人間が乗っかってるのも気になるわい・・・。
ちらちらと巨大な鳥の方を見つめていたのに気づいたからじゃろうか?
偽王が呆れた顔でこんな事を言い出しおった。
「なんだなんだ、あいつ等が怖いってか?
安心しな。あんたらの相手をするのは俺1人だからよ。
だがそっちは何人で掛かって来ても良いぜ?
殺せるもんなら、殺したって構わねえ。」
ファッ!?
バカなのか、この偽王は?
これだけの屈強な護衛を前に1人で挑むなど、現実が見えぬ大馬鹿者としか思えぬわ!!
それとも1人で戦うと言いながら、隙を見てあやつ等に不意打ちをさせる気か?
・・・じゃが、そんな事を企んでいるようにも見えぬ。
本当にわしらなんぞ1人で勝てると思っているようじゃ。
「なんと愚かな・・・。
護衛の皆様方、あの王を名乗るうつけ者を退治して下され。」
「「「お任せ下さい!!」」」
********
「バ・・・バカなぁ!?」
山賊の集団すら軽く追い払える護衛達が、武器も持たぬ偽王1人相手に全滅・・・じゃと?
「なんだよ、もう終わりか?
ほらほらどうした、掛かって来いよ!!」
いや、おかしい。
おかしすぎるわい!!
「い、いくらなんでも強すぎるのじゃ・・・。
貴様、本当に人間なのか!?」
「失礼だな。一応、俺は人間だよ。
『今は』正真正銘、この国の王様でもある。
・・・さて。
もう誰も俺と遊んでくれないようだし、約束通りこの村の果物と財宝の9割を頂くとするか。
野郎共!!」
「「「おおーーーー!!」」」
雄叫びと共に巨大な鳥に乗っかっていた者どもが、村の果物と財産を根こそぎ奪いに掛かる!!
ほ、本当にこの村の果物と財宝の9割を税として持って行く気か?
そんな事をされては、この村は滅びてしまうのじゃ。
「お、おやめくだされ。
どうか・・・どうかお慈悲を。」
「うるせぇ!!」
偽王に必死でしがみつくも、あっさりと振り払われてしまう。
「俺のやる事が気に食わねぇってんなら、殺す気で掛かって来いよ。
どうした・・・来いよ!!
王を名乗るうつけ者なんかに、大切な蓄えを奪われたくねえんだろ?」
そう言って偽王は、嗜虐的な表情でわしらを睨みつけた。
・・・恐怖のあまり、震える事しか出来ぬ。
「うぉおおおお!!
くたばれ、この偽お・・・ぐはぁ!?」
1人の若者が勇敢にも突撃するが、偽王の手刀で心臓を貫かれ、あっけなく絶命する。
ダ、ダメじゃ。
あの偽王には村人全員で掛かっても勝ち目は無い。
護衛達やあの若者のように、あっけなく殺されるだけじゃ・・・。
「あ~あ、情けねえ奴等。
・・・おっ?
可愛い子、見~っけ!!」
「きゃああああああああ!!!!」
さらに偽王は果物や財産だけに留まらず、村の美しい娘達まで奪い始めたのじゃ!!
「ど、どうかもうお許しくだされ。
その娘達を返して・・・。」
「あ~ん!?
なんだ、やっぱり俺のやる事が気に食わねえんだ?
ふ~ん・・・。」
拳を鳴らし、凶悪な表情をしつつ、わしを近づく偽王。
こやつがその気になれば、わしなんぞ簡単に殺されてしまう・・・。
わしは恐怖のあまり、悲鳴を上げながら引き下がるしかなかったのじゃ。
「・・・はん、情けねえ奴。
さて。取るもん取ったし、もうこの村に用はねぇ。
とっとと帰るぞ!!」
こうして、偽王とその一行はこの村から去って行った。
この村の蓄えや、美しい娘達と共に・・・。
********
富のほとんどを奪われ、多くの人材まで失ったわし達。
豊かで平和だったこの果物村は一気に寂れてしまったのじゃ。
今となっては村人全員が明日、食べる物にさえ困るありさま・・・。
かく言うわしも、空腹のあまり生きる気力を失いかけてのう。
すっかり痩せこけてしまい、今やミイラと見間違えるかのような姿じゃ。
わしだけじゃなく、他の村人達も皆、やせ細ってしまい、満足に働く事も出来ぬ。
「ここは本当に果物村・・・なのか?
前来た時と違って、果物1つ実っていない。
間違えて、別の村へ来てしまったんだろうか?」
「せっかくラージトロルに襲われそうな西港町を捨てて、ここまでやって来たというのに!!」
ん?
あの連中は、西港町から来た者どもかえ?
これは運が良いわ!!
「・・・」
「・・・」
「・・・」
何人もの村人達が、ナイフやクワなどを手に客人へと近寄っていく。
「な、なんじゃ。貴様ら?
近寄るでない!!
この私を誰だと思っている!?」
「薄気味悪い連中め。
とっとと離れやがれ!!」
そう言いながら、護衛らしき男が一人の村人を全力で殴りつける。
それなりに屈強な男に殴られた村人はあっさりと倒れ、絶命した。
だがそれでも、村人達は怯む事無く、客人達へとすり寄っていく。
「ひぃいいいいーーーー!!
く、来るな、来るなぁ!!!!」
「が、がふっ!?」
「お、おい。どうし・・・はが!?」
そして、目の前の連中に意識が向きすぎた客人達は、背後から近寄る村人に気付かなかったようじゃの。
護衛らしき男の1人はナイフで腹を刺され、もう1人の男はクワで頭をかち割られ、死亡した。
「お、おおおお前ら!?
や、やめろ。
やめろおおおおおおおお!!!!」
********
・・・今のわしらは、山賊や盗賊の真似事でもせぬと生き長らえる事さえ出来ぬ。
しかしそれも限度があってのう。
この村では既に餓死者が大勢出ておる。
生き残っている者も飢えに苦しむ余り、道端に生えた雑草目当てに殺し合いを行う有様じゃ。
だが、財も気力も根こそぎ奪われたわしらでは、他の村に助けを求める力も残っておらぬ。
・・・ああ、どうしてこんな事になったのじゃ?
わしらはただ、普通に過ごしておっただけなのに・・・。
飢えで意識が朦朧とする中、ふと10年以上前にこの村へとやって来た怪しい連中の言葉を思い出す。
『いずれ勇者の子供達が成長し、世界を救う事になるだろう』と。
当時はカルト宗教の信者達が、胡散臭い宣伝をしているだけだと思っておったわい。
じゃが、今は違う。
勇者の子供だ、世界を救うだなんぞ、絵空事でしかないのはわかっておる。
だがもし、本当に・・・本当に勇者の子供が存在するのなら・・・。
どうか、救ってくだされ。
世界を救う前に滅びゆくわれらの村をどうか、救ってくだされ。
どうか・・・どう・・・・・・か・・・・・・・・・・・・。
「あ~あ、可哀想になぁ。
でも、お前達が弱いから悪いんだぜ。
弱者なんて、強者からゴミのように扱われるだけなんだよ・・・この俺のようにな。
ははははは、ひゃーっはっはっは!!」




