第36話 研究所編② 夢の中の研究所
怪しい地下室で一晩を過ごそうとする俺達。
しかしユラの発言から、この地下室が実は夢の中に登場する研究所の成れの果て・・・かもしれない事が判明する。
俺、エルム、アカリ、そして今は亡きハジメは謎の研究所の夢を見る事が多かった。
俺は奇妙な悪魔から『ブレイブチルドレン』や『偽りの平和』などの意味深な単語を聞かされ。
エルムは数え切れないほどの赤子の死体を見つけてうなされ。
アカリは酷く汚い声で『使命を果たせ』『魔王達を倒せ』などと言われ続け。
ハジメは確か、自分とよく似た女の子が出てくるって言ってたっけな?
・・・それにしても。
「ユラ・・・。
やっぱりお前も研究所の夢、見るんだな。」
「うん。時々見る。
でも、全然楽しくない夢。
外にも出れず、首輪を付けた目が死んでいる人達と過ごすだけの寂しい夢。」
首輪を付けた人達?
俺の夢の中でも見かけたような気がする。
「けど『やっぱり』って・・・。
ライト達も研究所の夢、見るの?」
「ああ。ちょいちょい見てる。」
俺達三人は研究所の夢で見てきた事を、ユラとレイドに話した。
「そう・・・。
私も奇妙な悪魔や謎の汚い声はなんとなく覚えがある。
赤子の死体だけはよくわからないけど。」
「赤子の死体は俺だけかよ、ついてねぇ。
なあなあ。レイドは研究所の夢、見ないのか?」
エルムに問い掛けられたレイドは、酷くつまらない顔をしながら質問に答えた。
「・・・俺も研究所の夢はたまに見る。
無味乾燥に日々を過ごすだけの退屈でつまらない夢だ。
あまり良い気分がしないから、話すつもりは無かったんだがな。」
あー・・・確かに特別な事がある時以外、何も無い場所だったよなぁ。
喧嘩大好きで血の気の多いレイドにとっちゃ、そんな場所の夢は苦痛でしかないだろう。
でもこれで、勇者の子供疑惑のある6人全員が謎の研究所の夢を見てたって事になった。
いくら何でも偶然で片づけるのは無理がありすぎる。
・・・まだ会った事の無い勇者の子供(仮)達も研究所の夢、見てんのかな?
「しかしユラの言った通りね。
薄汚れてはいるけど、夢の中の研究所とそっくり過ぎるわ。」
「うんうん。
汚れと骸骨が邪魔で分かり辛いけど、本当によく似てるよな。」
「ライト、アカリ・・・。
お前ら、研究所かもって思った途端、全然びびらなくなったな。
現金な奴等め。」
余計な茶々を入れるな、レイド。
気が散る。
「・・・。なあ、皆。
寝る時間にはまだ早いし、この地下室をちょっと探索しないか?
夢の中の研究所と何の関係があるか、気になってしょうがないんだ。」
「「「「・・・・・・。」」」」
こうして俺達はエルムの提案に乗り、この地下室を探索を開始した。
皆、多かれ少なかれ、この地下室と夢の中の研究所の関係は気になっていたようだ。
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地下室の中を歩き回る俺達だが、想像以上に広い。
そして想像通り、歩けば歩くほど夢の中の研究所とそっくりだって事がわかった。
濁った赤色の染みさえなければ、真っ白であっただろう床や壁がそれを物語っている。
「!! この部屋・・・。」
扉が開きっ放しの広い広い部屋まで来た俺達が見たのは、大量のベッドだった。
歩くスペースなどは確保されているものの、たくさんの人間を一ヵ所に押し込むかのような構造。
だが俺は初めて来たはずの部屋から、何故か強烈な既視感を感じていた。
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「うー?」
「勇者の×××××××子供達よ。
呪われし運命を乗り越え、生き延びるのだ。
そして××のために、己が使命を果たせ!!」
「・・・うぇ。」
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!?
これって俺がまだ赤子だった頃の記憶?
そして誰だろう・・・酷く汚い顔と声で妙な事を言う人物は??
その人物は特に不細工では無いし、声質自体が悪い訳でも無い。
しかし性根が腐りきっており、さらに理不尽な願望が剥き出しだったのだろう。
顔も声も同じ人間とは思えない醜さで、凄く嫌な気分になった記憶がある。
「うー・・・。
この部屋に来ると、酷く汚い声で『使命を果たせ』『魔王達を倒せ』って、言われ続けた時の事を思い出すわ。
夢の中の話だけど。どうしてかしら?」
「・・・夢じゃなくて、現実にあった事だから?」
「ほほう、面白い考え方だな。
つまりユラは夢の中の研究所は、過去の自分達の記憶だと言いたいのか?」
「うん・・・。」
・・・要するにここは俺達がずっとずっと昔に過ごしていた場所って事か?
ありえるって言いたい所だが、ありえない。
何しろ俺達三人とユラは、旅を始めるまで光大陸から出た記憶が無い。
レイドだって武術大陸出身なんだし、闇大陸にある研究所で過ごしていたなんて矛盾している。
船旅だってつい最近の1回以外、全く記憶にないし。
「・・・ユラの言ってる事が本当かどうか、確かめる方法はあるぜ。
もももし、ここが昔俺達が過ごしてた場所だっつんなら、あ・・・あそこにあれがあるはず、だ。
数え切れないほどのあか、赤子の死体が!!」
ちょっと待て、エルム。
なんつー事を言い出すんだ?
そんな悍ましいもん、見たくねえよ!!
「ヒィ・・・ちょっと止めてよ。エルム。
私、そんなもの、絶対見たくないわ!!
大体、エルムだって凄く嫌がってたじゃない?」
「そりゃ、嫌だったさ。
嫌だし見たくないけど、本当に赤子の死体があるのか気になるじゃねぇか!!」
「見たくないけど、見てみたい気持ち・・・。
わからなくもない。」
矛盾しているはずのユラの言葉が、何故か理解出来てしまう不思議。
俺も段々気になってきた。
けど、やっぱり見たくない。
でも気になる・・・・
「い、嫌だったらお前達はここで待ってろ。
おお俺は行くぜ。
あの夢が真実だったのか、今ここで確かめるんだ!!」
そう言って、エルムは一直線に走り出した。
来た覚えの無い場所にも関わらず、その走りっぷりに迷いが無い。
ユラの『夢の中の研究所は、過去の自分達の記憶』説が、より濃厚になった瞬間だった。
「って、ちょっと待てよ。エルム。」
「・・・しょうがない。
俺も赤子の死体とやらが気になるし、後を追うか。」
「私も。」
「わ・・・・・・・・・・・・私も行く、わ。」
「はーっ、はーっ。
この部屋だ・・・。
この部屋に数え切れないほどの赤子の死体があったんだ。」
そう言ってエルムは、広い地下室の隅っこにある目立たない扉を指さした。
他のメンバーも全員揃っている。
ん〝?
わずかだが異臭が・・・。
って事は、まさか本当に大量の赤子の死体がこの扉の先に?
い、嫌だぁ・・・でも、気になる。
エルムも震えて中々扉を開けられなかったが、ついに意を決したのか、ドアノブに手を回す。
「・・・俺はもう、あの時の俺じゃない。
俺は中級魔法を身に付ける程に強くなったんだ!!
だから過去のトラウマを、今ここで乗り越えるんだ!!!!」
ラージトロルの時と違って、非常に情けない心の叫びだと思ったが、それはさておきとうとう扉が開かれる。
ところが俺達が目にしたものは、予想の斜め上をいくものだった。
「あ、あれ・・・?
なんだ。これ??」




