第35話 研究所編① 半壊した建物の地下室
俺の名はライト。
勇者の子供(仮)だ。
今は仲間達と共に不死鳥の宝玉の手掛かりを求め、幻影城へ向かって旅を続けている。
だけどそろそろ日が暮れてきたようだ。
近くに村や町などは見当たらない。
お腹も減ってきた俺達は、皆で夕食の準備を行っていた。
今日は食用の魔物と出会えなかったが、今の俺達はクラーケンやラージトロルの肉を大量に所持している。
ゴールがはっきりしない旅路なので、食料に余裕があるのはありがたかった。
「ライト。お前達は魔王に死の呪いを掛けられていると聞く。
俺にも掛かっているそうだが、どういう経緯でそんな話を信じたのか、教えてくれないか?」
夕食の準備をしつつも、レイドが尋ねてくる。
ユラはともかく、レイドがこういう雑事を抵抗なく行うのは予想外である。
・・・やってくれる事自体は良いんだけどね。
『こんな下らない事、俺のやるべき事じゃない。』って態度だったら、ブチ切れそうだし。
その辺を本人に聞いた所、『戦う力だけが強さの全てではない。様々な事が出来てこそ、本当の意味で強い男なのだ。』との事。
レイドにとっては、雑事をこなす能力も強さの一つって訳か。
わからなくもないが、おかしな所で哲学的な奴である。
「えっと、俺達の仲間・・・ハジメって言うんだけど、何の前触れもなく突然死しちゃってな。
悲しんでいた所をクズじじぃから『魔王の呪いが掛かっているから、ハジメは死んだ。お前達も他人事ではない。』って聞いてさ。
だから、魔王討伐の旅を続けている。」
「いや、ちょっと待て。
仲間が突然死んだってのはともかく、お前達は怪しい人物の妄言を信じて魔王を倒そうとしているのか?
・・・占い師に脅された俺が言うのもあれだが、やはり頭の病院へ行った方が良いんじゃないのか?」
心底心配そうな表情と声色で語るレイド。
そんな態度でそんな事を言われると、バカにされるよりも傷つくんだが。
「レイド。
ライト達は心が弱っている所を不審者に付け込まれただけなの。
そんな風に言わないであげて。」
「おい、ユラ。俺達が騙されてるとでも言いたいのか!?
・・・そりゃ、本当に騙されてるかもしれねぇけどよ。
他にハジメの死因が思いつかないんだし、しょうがないじゃん。」
「ううむ。
溺れる者は藁をも掴むと言うやつか。」
エルムの言う通り、俺達三人も魔王の呪い云々を完全に信じきってなどいない。
だけどハジメが死んだ事や、その死亡原因がはっきりしない事は事実なのだ。
とは言え、ユラやレイドはハジメの死を直接見ていない。
俺達以上に魔王の呪いを胡散臭く思うのも、無理のない話だった。
・・・証言者が胡散臭すぎるせいで、信憑性が皆無なのも事実だけど。
もっと信用に値する人物の発言なら、魔王の呪いを掛かってるんだって信じれたのに。
あーあ、何か証拠でもあったらなぁ。
「はいはい。話し合いはそれくらいにして。
クラーケンが良い感じに焼けたわよ。
早く食べましょう。」
どこかに呪いの手掛かりになるような物や場所でもあれば・・・もぐもぐ。
うん、美味い。
普通のイカ焼きよりも匂いが良いし、触感もGoodだな。
「・・・ライト。お前、切り替え早すぎだろ。
確かにクラーケン焼きは美味だが。」
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夕飯を食べ終え、後片付けを済ませた所で、再び俺達は歩き出した。
しかしもう夜で暗いし、今日は野宿に向いてそうな場所を見つけたら、テント張って休むって感じかな?
無闇に徹夜決行して、体調崩してもしょうがないからな。
「あら、何かしら。この建物?
半壊しているみたいだけど・・・。」
アカリの声を聞いて振り向いてみると、そこには半壊した建物がポツンと残っていた。
左半分を失い、建物の中が丸見えな上、瓦礫があちこちに散らばっている。
魔物にでも襲われたのだろうか?
「おっ、こんな所に地下への階段があるぞ。
なあなあ、今日はこの中で休もうぜ!!」
「ふむ。それも面白そうだ。」
「うーん。誰も使って無さそうだし、文句は言われないと思うけど。
なんだかちょっと不気味だわ・・・。」
俺はエルムやレイドの意見に賛成かな。
テントを張らずに済む上、魔物の警戒をせずに休めそうだし。
アカリの意見もわからなくはないが。
ザー・・・。
「あ、雨が降って来た。」
「マジ!? うわー、濡れるのはマジ勘弁。
早く地下室の中へ行こうぜ!!」
「「「賛成。」」」
「皆、ちょっと待って。
置いてかないでよ、もう。」
そんな感じで、俺達は半壊した建物の地下室の中へ入った。
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「きゃ!! ・・・何、ここ?
凄く不気味だわ。」
うん。アカリの言う通り、確かに不気味だ。
壁や床が濁った赤色に染まりまくってる。
血じゃないよな?
ただのペンキの塗り損ないだよな??
それに・・・。
「ひぎゃーーーー!!
が、骸骨ぅ!?」
この地下室、あちこちに骸骨が転がっているのだ。
あんまりにも景色が気色悪すぎて泣きそう。
「ふぉ!? ラ、ライトは相変わらずヘタレだなぁ。
ががが骸骨なんかにビビってんじゃねぇよ。」
「・・・エルム、お前も十分ビビってるだろうが。
男が二人して物言わぬ屍程度に怯えるとは情けない。」
怪談が苦手なエルムもビビっているようで、そんな俺達をレイドが小馬鹿にしてくる。
あいつだけすまし顔なのがなんか腹立つ。
「ね、ねぇ。
やっぱりここで一晩過ごすの辞めにしない?
なんか気味が悪いし・・・。」
俺もアカリの意見に賛成である。
口にこそ出さないが、エルムもここで一晩を過ごしたくはないようだ。
「だが外は雨だ。
ここで一晩過ごす方が、効率良く体力を回復出来るだろう。」
ぐ、それを言われると・・・。
おまけに雨が降る音はどんどん酷くなる一方で、今更外でテント張ろうとも言いにくい。
「大体、お前らなぁ。
仮にも魔王を倒そうとしている癖に、こんなお化け屋敷もどきに怯えてどうする?
・・・本当に情けない連中だ。」
そんな事言われたって、怖いものは怖いのだ。
・・・ゾンビとか出てきそうだし。
揉める俺達だが、ふとユラが一言もしゃべっていない事に気が付いた。
元々、物静かな方だがここまで何も言わないのは珍しい。
そう思ってユラの方を見ると、彼女は俺達の話など聞こえていないかのように、地下室そのものを凝視している。
血(?)に濡れた床・壁も骸骨も、全く怖がっていなさそうだった。
この様子じゃ、お外で休もうなんて言わないだろうなぁ。
けどユラの奴、この地下室の何がそんなに気になってるんだ?
「この地下室・・・。
夢の中の研究所にそっくり。
・・・なんで?」
夢・・・研究所・・・?
!!!!????
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「ブレイブチルドレン、勇者の子供達よ。
そう遠くない未来、お前達は自らの運命に絶望し、人間を・・・世の全てを恨む事になるだろう。
・・・ならばせめて、束の間だけでも偽りの平和を味わうが良い。」
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ま、まさかこの地下室って、夢の中に出てきた研究所・・・の、成れの果て???




