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断界のネーデ  作者: 萱 景一
第1章

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27/34

情報

「にしてもよ~。よくあのヤバそうな4人に囲まれた状態から逃げ切れたよな。コモの奴、一体どういう能力なんだ?」


 並んで歩きながら、凪が不思議そうに首を傾げる。

 確かに、俺自身もコモの能力の全容を全く把握していない。

紫焔斬(しえんざん)』にしても、ただ漠然と「物を切断する斬撃を飛ばす!」というイメージで放っているだけだ。

 俺が初めてあの技を使った時、緋音さんが『斬撃を受けた感覚ではない』と不可解そうに言っていた。

 その言葉通りであれば、あれはただの炎や剣撃とは根本的に「何かが違う」のだろう。


「コモ本人に聞いてみるか。おーいコモ。お前って自分の能力のこと、どう認識してるんだ?」

 

 俺は歩きながらスマホを取り出し、コモのアプリを立ち上げる。

 画面の中央に、腕を組んで少し考える表情をしたコモが表示された。


【う~ん……僕も、自分の能力がどういう理屈なのか、よく分かってないんだよね。ただ感覚としては、この世界の『システムそのものを騙す』能力だと思うんだけど】


 システムを騙す能力……。

 そう言われると、確かにそんな気もしてくる。

 俺は物理的な斬撃を飛ばしていると思っていたが、実際は全く違う概念を飛ばしているのか。

 もしくは、相手のシステムに「斬られた」と思い込ませているだけなのか。

 実際、奴らに囲まれたとき、ピンチを切り抜けた『狐幻(こげん)』も、敵の視覚を騙すような能力だった。


「だけどよ、前にお前が暴走した時、紫色の炎を水膜の盾で防いだんだけどよ。炎に触れた水が、蒸発したんじゃなくて……空間ごと食い破られたみたいに不自然に消滅したんだよな。あれもシステムを騙した結果なのか?」

【うーん。そう言われても僕も分からないよ。水が存在しているというデータを消したとか、消えたように錯覚させたとか……かな?】

「なんだそりゃ。ていうか、自分の能力が分からないってどういうことだよ。ガル、お前も最初はそうだったのか?」


 凪は胸ポケットに入れていたスマホを取り出し、ガルを呼び出した。


【そんなわけ無かろう。己の能力や特性は、一番己自身が理解しておるに決まっとる。コモよ、お主、自分の能力が本当に分からないのか?】

【うん……僕、記憶がなくって……】


 コモの記憶喪失は、こんな自身のステータスにまで影響しているのか。

 ……そういえば、凪達にはコモの記憶がない事をまだ伝えていなかったな。

 俺が記憶喪失であることを知っている凪は、ハッとしたように目を見開き、どこか罰の悪そうな表情でポリポリと頬を掻いている。

 変な空気にさせてしまった。

 これは伝えていなかった俺が悪い。


「ごめん、凪。言ってなかったんだが、実はコモも俺と同じ『記憶喪失』なんだ。俺も、コモが自身の能力の事まで忘れてるとは思ってなかったけど」

「あっ、いや……ごめんな、コモ。俺、そうとは知らなくて無神経なこと聞いちまった。でも、記憶がない者同士だからこそ、波長が合ってバディになれたのかもな。ほら、ガルも謝れ」

【うむ……コモよ、デリカシーが無く申し訳なかった。いつか記憶が戻ると良いな】


 凪とガルが、画面越しに二人そろってシュンと落ち込んでいる。

 いつもガルが凪を怒っている姿ばかり見るが、こういう根が素直な所は本当に似た者同士のバディだなと思う。


【そんな! 全然気にしてないよ! 謝らないで!】


 コモが画面の中でアワアワと両手を振り、慌ててフォローを入れていると、スマホの上部にピコンと通知が流れた。

 緋音さんからだ。

 恐らく、さっきのプレイヤーに関する続きだろう。


「おっ、緋音さんから返信が来たな。どれどれ……」


 俺と凪は足を止め、一つのスマホの画面を覗き込む。


『アカネ:さっき零人が言っていた4人組だが、私の抱えるネーディアの情報屋を使っても、何一つ有用な情報が得られなかった。細心の注意を払え』


 ん? 情報が手に入らなかったのに、注意を払うのか?

 どういうことだろう。


『れいと:情報が得られなかったのが、そんなに危険なことなんですか?』

『アカネ:あぁ。その情報屋はネーデの裏事情にかなり精通しているんだが、特定のプレイヤーの足取りが完全に掴めなかった事は今まで一度もない。恐らく奴らは、意図的にシステムのログを消去して回っているか……奴らを目撃した者を、一人残らず物理的に『消して』いるか。どちらかでしかない』


 なるほど……。背筋がゾッとした。

 一瞬、『最近始めたばかりの初心者だから情報がないのでは?』と楽観視しそうになったが、俺が対峙した時の奴らの放つ殺気は、間違いなく強者のそれだった。

 初心者が纏えるような生半可なオーラではない。

 そうなると、非常にまずいな。

 俺は奴らの能力を「目玉を出せる」ことしか知らないが、奴らは俺が「分身を出せる」事を知っている。

 さらに最悪なのが、俺が着ていた空亡の制服だ。

 もし、同じコートを着ているアーサーや紗奈さんが奴らの視界に入れば、即座に俺の仲間だとバレてしまう。

 明らかに、こちらが情報戦で圧倒的に負けている。


『れいと:マズいです。俺、あの時空亡の制服を着てたんで、アーサーや紗奈さんが奴らに見られたら、速攻で俺の仲間だとバレるかもしれません』

『なぎざっぷ:そうなると、あんまり戦力を分散して別行動するのは良くないかもな。カテナに断章があるようだし、まとまって動いて警戒しようぜ』

『アカネ:……おい。待て』


 緋音さんからの返信が、不自然に途切れた。


『アカネ:……なぜそれを今言った。カテナに【断章】があるだと?』


 あ……。

 そういえば、誰も緋音さんにその最重要事項を報告していなかった気がする。


『れいと:そうなんですよ。アーサーが持ってる章探機(しょうたんき)の針が、狂ったように反応してました!』

『アカネ:それを一番最初に言え!! 私も大至急、カテナに向かう』

『なぎざっぷ:団長! おねがいしまっす!!』


 相変わらず凪はラフだな。

 だが、あの規格外の強さを持つ緋音さんが直接来てくれるなら、これほど心強いことはない。


「よし、そうと決まれば、一刻も早くネーデにダイブしてアーサー達と合流し、断章を回収するか。じゃあな、また後で!」


 通学路の分岐点に差し掛かると、凪は気合いを入れるように拳を打ち鳴らし、自分の家の方角へと走り去って行った。

 寝不足で頭は重いが……俺も気合いを入れて、ネーデに戻るとしよう。

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