28話 今日から新しい親友です!
「さっ、話はこれくらいにしてさっさと食べましょ。鈴も放置したままだしね」
「あはは、お気遣いなく」
「いや、普通に時間なくなるから食うべ」
昼休みの教室で、少し遅めのランチを始めた俺達。
内容はやはりというか俺と鈴の関係性についてだった。
話すのもどうかと思ったが、鈴自身が皆と仲良くなりたいと言って、話すことを決意したからだ。
「無理しなくても大丈夫だよ。私達も無理に聞き出したいってわけじゃなくて、どっちかというと興味本位だし」
「そうね。今まで接点がないと思ってた理人と、友達だったっていうのに驚いたから聞いただけだものね」
琥珀と紫音の言葉に真白もうんうんと頷いている。まだ人見知りが発動しているようだ。
「ううん。理人くんが皆なら大丈夫って言ってたから、むしろ私が聞いてほしいかな。えっと……皆は私の噂って知ってる?」
東雲鈴は人気がある。
しかしその人気は表立ったものではない。
そして同時に東雲鈴には必要最低限でしか誰も近づこうとしない。
それは鈴の言うある噂が原因なのだ。
「確か……入学初日から停学になってる、ウチのクラスのよくない噂がある男子に付きまとわれてるとかって話よね?」
「うん、私もそう聞いた。えっとその人のお家もその……」
「ヤクザって噂だな」
「そうなの、あま……リトくん?」
呼び方を変えたのは良いが今までの癖が消えないようで、時々間違えて言い直すのが可愛い今日この頃。
ちなみに真白以外はあまり浸透していなかったのですんなり名前呼びになっている。
「実はそれは間違い……っていうか、誤解で……その、わ、私の家がそっち系の家なの!」
「そうなのね」
「そうだったんだ」
「へぇー」
三者三様の反応を見せるが、やはり思っていた通り拒否反応は全くない。
なんだったら、だから何? みたいな空気だ。
その姿に驚きつつもホッとした様子の鈴。
「でも、それならなんでそんな誤解が生まれたの?」
「えっとそれは……」
「鈴は昔から家のことを隠してたんだけど、小学校の時にどこかから家のことがバレたらしい。んで、それを庇ったのがそいつだったわけ」
「うん。教室内で噂されるたびに、それは自分の家で、私は一緒にいるだけなんだって言って庇ってくれた。それからずっと私達はお互いにお互いの家を自分の家だって言うことにしたの」
「もちろん鈴は訂正しようとしたけど、そいつ俺と同じで性格も目付きも悪いから全員信じたらしい。それに何よりそいつ自身がその状態を望んだからな」
鈴が無駄なことでハブられるくらいなら自分の方が良い。そんな考えから、一度も否定しなかったらしい。
「噂とはまるで違うわね」
「まあ、基本的には良い奴だよ。一緒にいると喧嘩に巻き込まれるから推奨はしないけど」
「あー、理人君は結構巻き込まれてたもんね」
「えっ!? リトくん喧嘩とか巻き込まれて大丈夫だったの!?」
「まあ、平気?」
「なんで疑問形なのよ」
素直に答えたら何故かツッコまれた。
「理人君はストレス発散とか言い切ってたもんね」
「理人は理人でそんなタイプなのね」
なんか呆れられたので笑って誤魔化すことにした。
「ちなみに停学食らった理由は、登校中に絡まれて、返り討ちにしてるところをよりによってここの教師に見られて、そのまま連行。結果、停学を食らったらしい」
「それはなんというか不運ね。というか返り討ちね……」
「いやまあ、本人は春休みが増えたって喜んでたけど」
「なんか微妙にこなれてる感のある台詞だね」
まあ、本当に慣れてるからなぁ。
「実際、何回か停学になってるから慣れてはいるんだよね。まあ、停学に文句はなくても、理人君が一緒に暴れてても一回もバレたことないのは文句言ってるけど」
「そうなの?」
「品行方正ゆえ」
「一緒に喧嘩してる人の言うことじゃないわね」
「見解の相違だーね」
人は何故こうも分かり合えないのだろうか?
「あっ、そうだ。あの……皆ちょっといい?」
そう言って鈴は俺以外の三人を教室の隅に誘導する。
うーん。仲間外れ。まあ、女の子同士の話に踏み込む勇気も意思もないから良いのだが。
しかしそんなに離れているわけではないから、部分的に会話が聞こえてくるのはしょうがない。
それでも極力聞かない努力が必要なのが女子の会話。
下手な関わり方は危ないからダメ絶対。
とはいえどうやら、さっき話した停学中の奴と自分の関係を話しているようだ。
学校の連中には知られていないが実は二人は付き合っている。多分、その事も含めて話しているのだろう。
「お待たせリトくん!」
先程までの借りてきた猫のような状態から一転。
内緒の会話から帰ってきた真白は何故かとても元気にいい顔で帰ってきた。
「……えーと?」
わけが分からず他の三人の顔を見ると何故か皆苦笑いしている。
そして───。
「今日から鈴ちゃんは私の新しい親友です!」
「だからどうして何があった!?」
急展開過ぎるのよ!
「ど、どうしよう理人君。あの蒼月さんと親友になれちゃった!?」
「お前は普通に嬉しいのな! 良かったね!」
「もう鈴ちゃん。蒼月だなんて真白でいいよ」
「えっ、えと、じゃあ真白さん」
お互いに名前で呼んで照れ合う二人。
うん。もう好きにすればいいよ。
「じゃあついでに私も琥珀で大丈夫だよ。鈴ちゃん」
「う、うん。やったよ理人君。あんなにできなかった友達が今日だけで三人も増えちゃった。しかもその三人があの真白さん達なんて、私今日あたり事故るかも!?」
ぼっち拗らせ過ぎとる!?
「落ち着け。そろそろやめないと可哀想な子のキャラで固定されるぞ」
「だって嬉しくて。あっ、普通に泣きそう」
「泣くなよ!?」
いや、苦労してたのは知ってるから気持ちは分からんでもないが。
「理人君」
「何?」
「皆と仲良くなってくれてありがとう」
「切なくなるからもうやめい」
いや、切実過ぎてこっちが泣きそうになるわ。
「でも、私もずっと鈴ちゃんとはもっと話してみたかったから嬉しいよ」
「そうなの?」
「うん。美人さんだし、勉強とか運動もできるし、お話ししてみたいなぁーって」
琥珀の言葉に真白も紫音もうんうんと頷いている。
「美人だなんて。三人の方が美人だし可愛いし、私こそ話してみたいってずっと思ってた」
うん。なんかすごいほんわかした空気が流れている。まあ、良いんだけど外との対比がすげぇなぁー。
そんなことを考えながらチラリと教室の外を見た。
そこには無数の人影、そして見えない壁の向こうにも人の気配が集まって、じっとこちらの様子を伺っている。
四人とも顔良いから、何気に人から注目されるのに慣れてて気にしてないが、俺は注目されることがそもそもないから、すごく居心地が悪い。
外の状況をガン無視だもんなぁ。
それでもこの教室に突入してくる人間がいないのは、この四人に少しでも嫌われたくないという気持ちの現れだろう。
「リトくん、聞いてる?」
「ごめん全く何も聞いてなかった」
「正直に言えば良いってものじゃないわよ。まあ、分かりきった嘘より好ましいけど」
「えっとね。今度鈴ちゃんとも一緒に遊びたいなって話をしてたんだよ。それで真白が今日も理人くんの家に行くから、良かったら皆で遊ぼうって」
我が家、すっかり真白のものになってる気がする。
「理人君がダメって言うなら、私の家でも良いよ。どうせ同じ階だし」
「えっ、そうなの!?」
「うん。実は私も理人君から少し安くお部屋借りて、同じ階に住んでるんだ。あそこならセキュリティもバッチリだから一人暮らしも許されてて」
「えぇ、今まで結構行ってたけど全然知らなかった……」
「あはは、私、家に帰ったらあんまり外出ないから余計かな」
「いーなー。私もリトくんとすぐ会える場所に住みたい」
「ブハッ!」
うん。思ってもみない攻撃に吐き出してしまった。攻撃力高いんだよ。
真白以外の三人がヒソヒソ話をして、鈴が何やら驚いたりしている。
うん。可哀想なものを見る感じ、やめようか?
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