27話 私の方が先に友達だったのに
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「理人、一緒にお昼食べましょう。良かったら鈴もどう?」
授業が終わってすぐに俺のところに来た紫音が、蒼月さんと陽向さんを連れて昼飯を誘いに来る。
教室内はその言葉にまたもどよめいているが、あまりに堂々とした誘いに、他の人間は誰も口を出さない。
「えっと、私もお呼ばれして良いの?」
「ええ、もちろんよ。色々話もしてみたいしね」
紫音の言葉に陽向さんはニコニコしながら同意、その後ろに隠れた蒼月さんはうんうん頷いている。
二人とも圧が強い気がするのは気のせいだろうか? いや、実際鈴もそれを感じ取ってちょっとビビってるっぽい。
「まっ、待ってくれ」
それに待ったをかけたのは、展開について行けずにフリーズしていた小鳥遊だ。
「なんで皆そんな陰気な奴と飯を食おうとしてるんだよ!」
そしてそれに続くように現れた山羊が、喧嘩腰に今にも襲いかかって来そうな視線で、キッと睨みつけて叫ぶ。
「まあまあ落ち着けよ。紫音達もいつものように俺と食べれば良いじゃないか。東雲さんももちろん歓迎するしな。それとも俺が何か気に食わない事したか?」
やんわりと山羊を抑え諭すように小鳥遊が言う。
だがその目は俺を厳しく睨み付け、山羊も不快感を隠そうともせずに俺を睨む。
「はぁ……私が誰と食事しようが勝手でしょ。いちいち貴方に指図されるいわれはないわよ」
「うっ……じゃ、じゃあ、何も紫音に付き合って皆で食べなくても良いじゃないか。な、なあ、真白、琥珀、二人もそう思───」
「私は天城くんと食べる」
「なっ!?」
「私も皆と食べるよ。遊木くんと食べる約束をしていた訳でもないし」
「な、なんでだよ……。なんでこんな奴が!」
「山羊。アナタが誰をどう思おうが勝手だけど、私の友達をこんな奴とか見下すのは不愉快だからやめて。さあ、さっさと行きましょう」
紫音はそう言うと俺の腕を取り立ち上がらせ、無理矢理引っ張って行く。
腕を取った瞬間、蒼月さんがすごい顔してたけど、これ、俺のせいじゃないからね?
そして逆向きのまま引っ張るのは勘弁してください。
「クッ……赤城……」
教室から出る直前、俺を睨み付けながら小さく俺の名前っぽいものを呟く小鳥遊。
どうやら奴の中で俺は、クラスメイトのモブから幼なじみ達を奪った憎き敵に昇格したようだ。
でも名前はちゃんと間違えている。いや、認識されても嬉しくもなんともないんだけど。
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「さて、それじゃあ説明してもらおうかな天城くん」
紫音に連れられやってきたのは空き教室の一つだった。
なんでも紫音は生徒会に伝手があるらしく、静かに飯が食える場所として、この教室を使っても良いと許可を得ているのだそうだ。The権力。
まあ、蒼月さん、陽向さん、紫音の三人が飯を食べてたら、その周辺に人が集まるのは容易に想像できる。
生徒会としてもその辺のトラブルを、最初から解消できるなら安いものだろう。
そうして連れてこられたこの教室で、何故か知らないが俺と紫音は早速正座させられていた。
「なんで私まで正座させられてるのかしら?」
元凶だからだと思う。
「むう。昨日までは普通だったのに、なんで今日になったらあんな羨ま───じゃなくて、ひ、人前でくっ付くのはやり過ぎ。もっと節度を持つべきだと思う!」
それは俺も思う。
「本音は?」
「あんなにくっ付いてウラやマしイ。それに……私の方が先にトモ達なったのに、紫音の方が先に名前で呼び合うなんてズルいズルいズルい」
怖っ。なんか闇が溢れ出とる!?
「って、そうじゃなくて。つ、つまり人前であんなに引っ付くのは良くないと思う! ねっ、琥珀」
「そうだよね。昨日までは違ったのに……私達を送った後に何をしたのかな?」
「特に何もしていません」
「ちょっと天城くんは黙ってようか?」
理不尽。
「本当に何も無いわよ。強いて言えば母さんに絡まれて、その後少し話したくらいだもの」
「「麗奈さんに絡まれた?」」
「……ええ」
面倒くさそうな顔で紫音が同意すると、二人もなんとなく察したようだ。
「……でもそれだけで名前で呼び合うようになるとかやっぱズルい」
「なら簡単ね。真白も名前呼びすれば良いわ」
「ふえっ!? いや、それは、その、まだちょっと早いかもだし……」
「うごっ……」
わたわたとする姿に和みつつ話を聞いてると、思いっきり脇腹に肘を入れられる。
横を見ると紫音が悪い顔で嗤いながら、俺にとある指示を出してきた。
「マジか、がはっ!?」
また肘が脇腹に突き刺さった。
分かりました言いますよ。やるから肘やめてください女王様。
「俺は蒼うぐっ……真白が呼んでも良いって言うなら嬉しいな」
あっ、やばい、吐血しそう。
キャラじゃない言葉を吐いた拒絶反応で血を吐きそうになる。しかも蒼月さんと呼ぼうとしたら思いっきり脇腹をつねられた。
だがこれは本音でもある。
なんだかんだと友達になった俺達だが、名前で呼び合ったことはまだ一度もない。
それというのも、お互い友達が多いわけじゃないから、どのタイミングで名前呼びに移行するのかが分からないからだ。
実際、鈴を含めた名前呼びの人間は割と初めから名前呼びしていたか、名前で呼べと言われたことがあるから呼んでいる。
だが俺達は互いにどちらも自分から言うタイプではないので、なんとなく二の足を踏んでいた。
なのでこのタイミングでのテコ入れは、正直ありがたいというのが本音だったりする。
はい……ただのヘタレです。
そうして吐いたセリフだったがその効果は予想以上だった。
俺の言葉に一瞬で真っ赤になった蒼月さんは、小さな声で自分の名前を反芻している。
ちょっと可愛い。
「予想していたとはいえ想像以上ね。効果は抜群よ」
とても悪い顔でサムズアップする紫音。
流石エスパータイプ、あくタイプの攻撃はとても効くようだ。
「ほら真白。貴女も名前で呼びなさいよ」
「ふえっ!? あっ、そそそ、そうだよね」
紫音さんの言葉にわたわたと慌てふためく蒼───ではなく真白。
「おほんっ。えっと……り、理人……くん?」
「うん。って、なんか照れるな」
昨日もやった互いに恥ずかしがりながらの名前呼び。しかも今回はギャラリー付きとか、なんの罰ゲームだろうか。
「えへへ。理人くん。理人くん理人くん理人くん理人くん」
おかしい。最初は熱くなる感じでドキドキしてたのに、急に背筋がゾクッとする感じでドキドキして来た。
「……狂気を感じる」
やめるんだ紫音さん! 考えないようにしてたのに言うんじゃない!
「ハッ!? でもこれだと紫音と同じだし、私はもうちょっと先に行きたい。うーん、理人……リヒト……リト? うん。私はリトくんって呼んでもいーい?」
「うん。構わないよ」
名前呼びはあるが、愛称を付けられることはあまりないので新鮮である。
「えへへ。よろしくね、リトくん」
「じゃあ私も理人くんって呼んじゃおうかな? 私の事も琥珀って呼び捨てで大丈夫だよ」
「うん。琥珀もよろしく」
「うーん。男の子に名前呼び捨てにされるとやっぱり照れちゃうね」
頬を手で扇ぎながら言う姿はとても推せる。
「……リトくん。とても嬉しそうだね。なんだったら私の時よりも嬉しそうじゃない?」
「そんな事はありませんが!?」
「強いて言えば狂気が透けて見えないからじゃない?」
うん。余計なことを言うのやめてくれませんかね紫音様!?
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真白の距離感、琥珀や紫音の反応、理人が振り回される空気など、
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