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23話 順番が悪いわ

「あ、あはははは、冗談。冗談」


「んっ、ただのジョーク」


「もう、天城くんを困らせないで」


 ちょっと怒りつつ二人から俺を引き剥がす陽向さん。


「それに天城くんは……ゴニョゴニョ」


「うえっ、あのお姫様の!?」


「……それは強敵」


 俺を引き剥がした後、陽向さんが二人に耳打ちすると、それを聞いた二人が大袈裟なほどに驚く。


「うーん。あのお姫様のお気に入りかぁ。それはいくら家の強遺伝子を持ってしても相手が悪いね」


「ん、美形なんていくらでも見慣れてる私達でも息を呑むレベル」


「だね。可愛い可愛い末っ子でもあの子には勝てないもん」


「お姉ちゃん達、天城くんの前で強遺伝子とか変な事言わないでよ。飽きれてるじゃん」


 陽向さんの言葉に全員の視線が俺に集中する。


「いや、三人とも美人だし、それはその通りだと思うから別になんとも思ってないけど?」


「っ!?」


「へぇ〜」


「ほうほう……」


 なんだろう。全員がなんか変な反応をしているのだが?


「それで?」


「えっ、ああ、可愛いも綺麗も十人十色だから、誰が勝ってる負けてるじゃなくて、三人とも綺麗で可愛いんだからそれでいいんじゃないかなぁと思っただけです」


「ヒュア!?」


「う、ううん。これはなかなか」


「照れる」


 あっれ。もっと変な空気になった?


「えっとなんか変な声出てたけど大丈夫。陽向さん?」


「う、うん。平気大丈夫無問題!」


「明らかにテンションおかしくなってるわね」


「でも今のはしょうがない。私も少しダメージ食らった。範囲攻撃恐るべし……」


「確かに。はあ、でも良かったね琥珀。昔から変なのに付きまとわれてたから、私達全員心配してたけど」


「うん。理人くんなら安心」


「……お姉ちゃん達」


「あれ、もしかして友達だった? だとしたらごめんね」


「ああ、そんな事は全くないので大丈夫です」


 俺が微妙な顔をしていたからだろう。俺と小鳥遊が友達だと思った魅那さんが謝ってくる。


「ただ単にあのスペックで、近しい人間からこんな評価になるのがすげぇなって思って」


「まあ、確かに」


 一応あいつ、顔良し、性格(異性相手なら)良し、頭も良し、運動神経も良く、格闘技も数種類やっているという噂だ。


 それなのに惚れてる奴以外からの評価が最低ってある意味一番ヤバイな。


「あの子、昔から引っ付いて来るけど気持ち悪いのよね」


「そうなんですか?」


「本人は普通にしてるつもりなんだろうけど、視線がねちっこくてわかるのよ。私はこういう服好きだから、少しでも肌が見えてると露骨に視線感じるのよね」


「私もよく胸見られるし、家族しか知らない事をたまに知ってたり、その他にも色々……こっちが嫌がってるのにそれに気が付かないのも無理」


「うわ……ここでもか」


 俺の言葉に反応した皆に、蒼月さんを送った時のことを話す。すると当たり前だが全員が露骨に引いていた。


「ないわぁ」


「ない」


「ちょっとね」


「ウチの末妹は優しすぎ、ここまで来るとちょっとじゃないわよ。ああもう、本当に理人くんが惜し過ぎる。せめて相手があの子じゃなければとも思うけど、あの子はあの子で昔から知ってる妹とみたいなもんだし複雑」


「ん、せめて理人君が重婚出来る資格あれば、特攻させるのに」


 凪那さんの言葉に思わずビクリとする俺達。


 しまった反応を間違えた。


「えっ、まさか本当に超優良物件?」


「琥珀ちゃん。でかした」


 先程までの妹を思いやる優しい姉の雰囲気は何処へやら、猛禽類のような雰囲気を醸し出した思ったら、次の瞬間には両腕をホールドされていた。


 速い!?


 しかもさっきとは違い身体を密着させ絡ませるホールドは、両腕が凄く幸せなので困る。


「ねえ理人くん。本当に年上とか興味無いかな? 今なら美人姉妹ってご近所で有名な三人は確定で付いてくるよ」


「私達の一番上の姉もお母さんも美人だよ?」


 何言ってんっすか!?


 わざわざ耳元に顔を寄せて囁くように言われると、背筋がゾクゾクするからやめて欲しい。


 いや、マジでそう思ってますよ?


「……ふーん。赤くなっちゃって、耐性なくて可愛いなぁ」


「ん。ちょっと萌える」


「……お姉ちゃん達?」


 ゾクリとする声。


 さっきの非ではない陽向さんのゾッとする程冷たい、無機質で感情の乗らない声が俺達を固まらせる。


「しまったやり過ぎた」


「ま、末妹がかつてないほど怒ってる。あんな表情見た事ない!? あれ、思った以上に───」


「天城くん」


「はい!」


 思わず背筋を伸ばして返事をする俺。


「今日は送ってくれてありがとう。お姉ちゃん達とは私がキッチリお話するから」


「了解であります」


 陽向さんの言葉に敬礼してバイクに乗る。


「さあ、お姉ちゃん達はゆっくりお話しようか?」


「引き際を見誤ったピンチ」


「理人くん! 出来れば本気で助けて欲しいんですけど!?」


「すいません無理です! では!」


「あっ、本気で逃げた!? あの……無表情で引っ張るの怖いからお姉ちゃん止めて欲しいなぁ……って、力、強っ!?」


「無念」


「さっ、お姉ちゃん達ゆっくりお話しようね」


 遠くから聞こえる悲鳴を聴きながら、今度生きて会えたら何か食事でも奢ろうかと考える俺だった。

 ▼▼▼▼▼▼▼

「ふぅ、なんとか生きてここまで辿り着いた」


 無事生還して喫茶店まで辿り着いた俺は、陽向さんでもあんなに怒ったりするんだなぁ。と考えながら星宮さんに連絡する為、スマホを取り出す。


「うおっと……」


 スマホの画面に映し出されたのは蒼月さんからのメールの数々。


 その全てが


【不穏な気配を感じた】とか【なんかイラッと来た】とか【天城くんがイチャついてる気配!?】などというメールだった。


 一番最初の送信は逆算すると、大体陽向さんを乗せた頃、その次は陽向さんを降ろしたくらいで、最後が俺が逃げ───ではなく、陽向さんの家を出発した辺りで終わっていた。


 この精度の高さよ。


 思わず蒼月さんに別の能力が芽生えたのかと疑いが生まれるレベルだ。


「とりあえず記憶にございませんと送って、星宮さんにもメールをっと」


 そのままちょっと待つが星宮さんの既読が付かない。


 仕方がなく俺は喫茶店に入って探すと、俺が貸したパソコンを開いて集中してる星宮さんを見付けた。


「お嬢様。お迎えに上がりましたよ」


「キャッ、あっ、ごめんなさい。集中しすぎてたみたい。全く気が付かなかったわ」


「で、感想はどんな感じ?」


「そう……ね。やってみないとわからないけど、面白そうだとは思うわ。結構好みかもしれない」


「ふむ。なら向いてそうだね」


「それは判断早いんじゃないかしら?」


「いや、向いてない奴だと細かくて面倒とか、こんなことまでするのかとか言うからね。大まかにさらった動画とはいえ、面白そうとか好みって言えるならやっぱ向いてるよ」


「そんなもんなのね」


「そんなもんです」


 二人で少し話しながら店を出ると、時間を見た星宮さんが結構時間が掛かったねという話になった。


「あー、家まで送ったら、ちょうど陽向さんのお姉さん達と会ってちょっと話ししてたらこんな時間に……」


 なんだかんだと十分近く話してたしな。


「なるほどね。お姉さん達って事は凪那さんと魅那さん?」

 

「そうそう」


「……感想は?」


「うーん。自分達でも言ってたけど遺伝子強者だな。美人姉妹とか本当に居るんだと思ったよ」


 俺はあの三人が並んで歩いていたらなんかの撮影だと思う。三人ともスタイルが良いから、普通の服を着てても周りからは雑誌撮影のように映るだろう。


「確かにそうね。一番上のお姉さんの瑠衣(るい)さんも凄い美人よ」


「さっき凪那さんも言ってたけどもう一人居るのか。凄いなあの姉妹っと」


「えっと、ここに足を掛ればいいのかしら?」


「そうそう。俺に捕まっても良いよ」


「ありがとう。っと、乗れたわ。初めてだけど結構高く感じるのね。って、何を笑っているの?」


「いや、三人とも同じ反応で仲良いなって思って」


「くっ、初めてなんだからしょうがないでしょ。それに順番が悪いわ」


 そう言いながら、星宮さんが肩に乗せた手に力を込めて来る。


 ちょっと痛い。


 でも、顔を赤くしながら反論する星宮さんは、普段よりも歳相応に感じて可愛かった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


ブックマーク・評価・リアクション・感想、本当に励みになっています。


真白の距離感、琥珀の反応、紫音との関係など、印象に残った場面があれば一言でも教えてもらえると嬉しいです。


続きが気になる方は、ブックマーク・評価で応援してもらえると励みになります。

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