18話 友達が増えた食卓
「「「ご馳走様」」」
「あー、もうお腹いっぱい」
「もういいの? シメにうどんか雑炊が残ってたんだが」
「私はうどんで!」
「うっ、食べたいけどもう無理」
「同じく」
「そりゃ残念。デザートにりんごのシャーベットもあるけどそっちも無理そう?」
母さんから大量に送られてきたりんごで作ったものだが、それを聞いた深見さんと武本さんは、たいそう悩みながら絞り出すように食べますと言った。
「了解。じゃあ持ってくるね」
「うう、至れり尽くせりで太りそう」
「天城くん!」
「何?」
「私の分もちゃんとあるよね?」
「あるからお嬢様はうどん啜ってて下さい」
「はーい。あっ、美味しい」
全員でシャーベットまで食べた後、後片付けをして一息付き、さっきの質問に答える事にした。
「んで、さっきの質問。ここに住めてる理由と俺の稼ぎに関してだけど、俺の稼ぎは大まかに三種類ある」
「そんなにあるの!?」
「うん。一つ目は不動産投資の家賃収入。これが主軸だね」
「天城くんそんな事してるんだ!?」
「うん。んで、次が持ち株の配当。で、最後がネットの関係だね。プログラミングや動画収益、動画編集とか。それで興味があるなら深見さんに動画編集の仕事紹介したい」
「動画編集……正直出来る気はしないのだけど」
多少の期待があったのか、星宮さんは少しガッカリしながら呟く。
「動画編集って難しいの?」
「そうでもないよ。やる事はピンキリかな? こだわればめっちゃ大変だけど、仕事として軽くやる分には多少の知識でも出来る仕事はある」
「そんなのやってたなんて全然知らなかった。それって幾らくらい行くの?」
「聞きにくいことを普通に聞くわね。まあ、やるなら私も興味あるけど」
「えっと乱高下はかなりあるけど平均して家賃収入が少なくと200以上、株の配当が数十と株主優待、アルバイトは平均して月に10~20くらいだけど頑張ればもっと行くかな?」
「凄っ!? えっ、それって月収だよね!?」
「そうだよ。正直、軌道に乗れば動画編集だけでも30位は行けるようになる」
実際、そこまで行くのは大変ではあるけど無理ではない。運さえ良ければ企業案件や、定期的に依頼してくれる人も確保出来るようになる。
「動画編集のお仕事って凄いんだね」
「頑張り次第だけどね。んで、実は紹介したいって言ったのは俺の仕事手伝って欲しいからなんだ」
「仕事の手伝い? さっきも言ったけど私何もわからないわよ」
「それで良いよ。必要な事はこっちで教えるし、パソコンもあげ……いや、低価格で売る」
「なんで言い直して売るにしたの?」
「星宮さんの性格からして、タダで貰うとか嫌がりそうだから」
「そうね。はっきり言ってタダでくれるなんて言われたら、怪し過ぎて断ってたわ」
どうやらセーフだったようだ。
「まあ断る前にこっちのプレゼン聞いて下さい」
そう前置して俺は星宮さんに条件を話し始める。
まずパソコンは中古ということもあって五万で売る。そして代金は働く分から返して貰うので実施タダと同じ。
その代わり辞めたくなったら辞めても良いし、その際にパソコンが欲しいなら、残りの代金を払えばそのまま使ってもいい。
そして動画編集に必要なスキル関連は、こっちで教材のようなモノを用意するから、それを使って練習して貰い、実際に仕事をやりながら少しづつ学んで貰う形だ。
最初は試用期間として少し少ない金額で、それが完璧に出来るようになったら値段を上げる。
他のスキルに関しても同じようにする。
一通り出来るようになれば、月10万位を目安に仕事を振る。もっと必要ならそれに応じて仕事を振る予定だ。
「───と、こんな所。別に必ずしも俺の仕事を手伝う必要はないし、なんだったら仕事の仕方だけ教えても良いよ」
「ずいぶんと条件が良いのね。手伝うにしてもそうだし、手伝わなくても教えるなんて」
「まあ、友達になった訳だしね。困ってるなら出来る範囲で手助け位はするよ。んで、もちろんメリット、デメリットがそれぞれある」
定期的に仕事を回せるし、クライアント対応も基本は俺がやる。最初は教えながら出来るから、一人で始めるよりはかなり楽なはずだ。
言ってくれれば仕事の量も調整するので、自分の時間も確保しやすいだろう。
逆にデメリットは仕事を主導するのが俺のため、幾ら仕事をこなしても星宮さんの評価に繋がらない事だ。
「それはデメリットと言えるの?」
「言えるよ。ぶっちゃけ同じ仕事が出来る人間に仕事を任せようとするなら、今まで依頼をこなした数、仕事に対する評価数が高い方に案件振るのが当たり前だからね」
「確かにそうね」
「後はそうだな。ある程度星宮さんの予定を把握しないといけないって所かな?」
「それはなんで?」
「天城くんはそんなに紫音のプライベートを把握したいのかな?」
やめて、なんか威圧感が凄いから。
「いえ、そうではなくてですね?」
仕事を振るようになるなら、俺もいくらかそれに合わせて仕事を受ける。
それなのにいきなり、旅行行くんで一週間受けられませんなんて言われても困るというだけ話だ。
「前もって分かるならある程度教えて欲しい。どこで何するなんて詳しくはいいから、この期間受けられないとかその程度ね」
「なるほど、それなら納得だわ」
「まあ、こんな所かな。なんか質問ある?」
「……うん。それなら一つだけ。ここまで聞いても貴方にメリットあるとは思えないんだけど、仕事を手伝って貰えるなんてそれだけじゃ弱すぎない? それならまだ下心あるって思った方が納得出来るわよ」
「天城くん?」
殺気が増した!? いや、そうでなく。
「納得出来ないだろうけど実際それが一番の理由だよ」
「だからそれだと納得出来ないと言う話しなんだけど」
「それは世の中の理不尽を知らないから言えるんだよ」
「「「理不尽?」」」
俺の答えに三人の声が重なる。
そう理不尽。理不尽だ!
仕事を振っても期限を守らないくらいならまだ可愛い方。
指示した通りにやらない。
連絡がつかなくなる。
これが自分のやり方だとか言い始める。
自信満々に出来るといいながら、期限ギリギリにやっぱり無理ですとか、中には逆ギレしてくる奴も沢山いる。
「本当にそんなの居るの?」
「居る。仕事受けといて、旅行行くことになったからやっぱり止めますとギリギリで言われた事もあるし、全然言った事をやってないのに、お金請求されて流石に全く出来てないとか言ったら詐欺とか言われるし」
いやもうね。本当にそんなのに当たった時は泣きたくなる。
「そんなのばっかりじゃないけど、世の中にはそんなのがまあまあ居る。だけど知り合いなら、連絡つかなくなる事はほとんどないし、進捗も聞きやすい。それに星宮さんならちゃんとやってくれそうって信頼もある」
いや、まじで。
「納得したわ。それなら確かにメリットになるわね」
「わかってくれて嬉しいよ」
俺の説明を聞いた深見さんはどこかホッとした空気を出し、緊張を解いたようだ。
「悪いわね。身近にストーカーが居るとどうしても疑い深くなるのよ」
「いや、そうやって用心するのはいい事だよ。少しはそういうのもないとね」
「……そうね」
二人でソファーにだらしなく寄り掛かり、今にも寝そうな感じで満足そうに座る蒼月さんと日向さんを見ながらため息を吐く俺達だった。




