13話 楽しい時間の終わりに
「天城くん。右お願い」
「オーライ。こっちはクリア。そっちは?」
「こっちも被害なしで終わったよ。そろそろボスかな?」
「そのはず……っと、出てきた。攻撃は俺が撃ち落とすからガンガンよろ」
「りょーかい」
今、俺達は、ファーストフード店でダラダラと喋った後、蒼月さんがたまに親友二人と遊びに来るというゲームセンターに来ていた。
そして今、格ゲー、パズルゲームの対戦ときて、協力プレイでシューティングゲームのボス戦の真っ最中だったりする。
デカいゾンビがトマホークを投げまくってプレイヤーを攻撃してくる中、俺がトマホークを撃ち落とし、蒼月さんがボスの攻撃を担当している。
「あっ、パターン変わった」
「うえぇぇ。なんか自由に左右に動き回ってるんですけど!? しかも無駄に素早い!?」
「トマホークも増えたな。まっ、余裕だけど」
「なんで同時に何個も飛んでくるのそんなに余裕で撃ち落としてるの!?」
「んー、腕前の差?」
「エイム下手っぴでごめんなさいね!」
などと騒ぎながらもなんとかボス戦をクリアする。
「あっ、やった! 新レコードだ。しかも一位だよ」
「おー、マジだ」
「名前は……んー、よし。天城と蒼月でAAってことで」
「安直。まあ、そのセンスは嫌いじゃないけど」
「次、何やろっか?」
シューティングゲームを終えた俺達は、ゲーセンの中を見て回りながら、いろいろと対戦したり、協力プレイをしたりする。
「あっ、あれ可愛い」
散策していると蒼月さんが、クレーンゲームのコーナーにある猫のぬいぐるみに食いついた。
「やる?」
「んー、私、クレーンゲームって苦手で取れたことないんだよね」
「じゃあ俺がやるよ」
猫のぬいぐるみはわりといい位置にあるし、これなら多分、一度か二度で取れるだろう。
というわけでチャレンジした結果、予想通り一回のプレイで目標のものが取れた。
「はい」
「わぁ、ありがとう。天城くんクレーンゲームうまいんだね」
「コツがあるからそれさえ分かればそれなりにね。まっ、できない人はできないけど」
「私はできない派かぁ」
「よし。じゃあ、ここからはクレーンゲームに移行して……荒らすか」
「物騒!? 荒らすって言葉はよくないと思うよ」
「じゃあ……根こそぎ行く? 取りまくる?」
「うん。荒らすで合ってるね」
結局肯定された!?
「まあいいや。じゃあ、取れそうなの片っ端から行くか」
「おー」
こうして俺達二人は、目についた景品で取りやすそうなものを片っ端からゲットしていく。
フィギュア、ぬいぐるみ、ヘッドホンなんていうちょっと変わった景品から、小腹がすいたのでお菓子までいろいろと取りまくった。
「やー、大量大量……多少やりすぎた感まであるから、これで最後にしようか?」
「そうだね。っと、はい。お菓子」
「見ての通り、今手が離せないです」
「んー。じゃあ、あーん。なんて……って、本当に食べてくれた!?」
「しまった集中しすぎてた。って、別にやらかしたわけではないが……」
いやまあ、今めっちゃ顔が熱いし、恥ずかしいけど。
「てか、これ美味っ」
「えっ、本当? 本当だ美味しっ。えー、今度から見つけたら絶対買っちゃうかも」
「それは別にいいのでは?」
「コンビニでお菓子ばっか買ったらお金もなくなるし、なにより太っちゃうもん」
「別に気にしなくていいと思うけど?」
俺の言葉に自分の体を見下ろしながら黙る蒼月さん。
「……つまり、天城くんは胸がもっと大きいほうがいいと?」
「ブハッ!? そんなこと一ミリも言ってませんよね!?」
「私、それなりにはあると思うけど、もっと大っきいほうがいい?」
「無視!? 触りながら言うのも止めい!? ってか、そんなことつっこませないでもらえません!?」
「つっこむなんていやらしいなぁ」
俺の言葉にわざとらしく恥ずかしそうな反応をする蒼月さん。
「意味が違うの分かってるよね!?」
君、だいぶすごいこと言ってる自覚ある?
「私、琥珀には負けるけど紫音よりは大っきいよ?」
「やめろと言ってるのに、なんでそんな情報を叩き付けてくるの!?」
誰か知り合いに見られたらどうすんの!?
変装しているとはいえ、可愛いから普通に見てくる人間はいるんだから少し気を付けようよ。
「でも、天城くん嬉しいでしょ? 戸惑い一割、羞恥二割、興味が三割、嬉しさ四割のピンク色だし」
「……人の空気を見て正確に診断すんのやめようか?」
なんて恐ろしい子。
「天城くんのエッチ」
「理不尽すぎる……」
「でもさすがだね。こんなに動揺しててもちゃんと景品取れてるし」
「嬉しくない。今この状況で褒められても全く嬉しくないからな?」
「でも天城くん、本当に遠慮なく取りまくったね。途中から店員さんもチラチラ見てたし」
「いや、蒼月さんも途中から遠慮なく欲しい景品言ってたよね? なんなら後半はこれも含めて蒼月さんが言ったものしか取ってないんだが?」
「えへへ。だって、ゴブ神の景品あったから欲しくて。見て、可哀想なモンスターシリーズだよ。レアだよ!」
「まあ、言いたいことは分かるけど」
蒼月さんは今まさに取ったばかりの景品を取り出し、俺にずいっと見せてくる。
そのぬいぐるみはデフォルメされたイノシシのモンスターで、涙目になっている。
「他のもそうだったけど、分割するとステーキ肉っぽくなるのがいいよね」
「このシリーズ、全キャラ涙目で、胴体部分で分割できるようになってるんだよな。全部、同じようにステーキ肉が付いてるし」
確かになんとも言えない愛嬌がある。
「ゲームセンターの景品にしかないから諦めてたんだよね。だからすっごい嬉しい」
「喜んでもらえてなによりです。お嬢様」
「あの小説のグッズって、ゲームセンターの景品が多いんだよね」
「ああ確かにそうかも」
「うん。これからは天城くんに取ってもらうから、ゲームセンターの景品もちゃんとチェックしとくね」
「ガッツリ取らせる気満々」
「ダメ?」
いやね。自分が可愛いのを理解して小首傾げて可愛く振る舞うのズルくない? まあ、それが嫌じゃないのがどうしようもないけど。
「仰せのままに」
「えへへ。ありがと。ちょっと座って休憩しよっか?」
「ああ、じゃあなんか飲み物買ってくる」
「ありがとー。私、オレンジで」
「じゃあ俺もそうしよ」
自販機でジュースを買って戻りながら、改めてたくさん取ったもんだと少し反省する。
椅子で休憩している蒼月さんの横には、背負っていた大きめのリュック、そして俺が持っていた折りたたみのリュック二つ。
そして、景品を入れる無料の袋に詰め込まれた戦利品の数々が、一枚の袋にぎゅうぎゅうに押し込められている。
うーん。途中からやりすぎたなぁ。
「はいよ。買ってきたよ」
「ありがとー。うん。美味しい」
「熱中して喉が渇いていたとか、どんだけだろう俺ら」
「あはは、本当だね。でもそろそろ帰る時間かぁー、楽しいと時間が経つの早いなぁ」
「だな。俺も久しぶりに時間忘れて遊んだ気がする」
「ふふっ、なら良かった。じゃあ帰る前にちょっとお手洗い行ってくるね」
「あいよ」
蒼月さんを見送り一息つく。
本当に時間を忘れて遊んだのなんて久しぶりだ。
人間関係なんて煩わしいとか考えていた癖に、蒼月さんと友達になってからというもの、毎日が楽しいなんて我ながら現金なもんだ。
って、あれ?
ふと人の気配に気づくと、こちらに向かって誰かが真っ直ぐ近づいてくる。
「あら、やっぱり天城くんだった。ずいぶんと大量の荷物ね」
「えっ……と、星宮さん」
そこには、チラリと荷物に視線を向け、何か含みがあるようにニコリと笑う、蒼月さんの幼馴染にして親友の一人、星宮紫音が立っていた。




