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おもいだした

「リヒトー!」


夢から覚め、リヒトーは起き上がる。

眠っていたベッドの隣にはシーダが座っていたようだが、リヒトーが目覚めたのを見て立ち上がっている。


「起きて大丈夫?」

「問題無い。」


体調の方は回復していた。吐き気や眩暈が治り立ち上がっても足元はしっかりとしていた。 

窓の外を見るとすっかり暗くなっていた。リヒトーが気絶し夢を見ている間に半日以上経っていたようだ。

 

「良かった。本当に。」


リヒトーが起きた事で安心した様子のシーダ。

近くには濡れたタオルや水が入った桶が置かれている。これを使って自分の事を看病をしていたとリヒトーは推測する。


「看病をしてくれたのか。礼を言う。」

「そんな。リヒトーが元気になってくれればそれでいいよ。そうだ。喉乾いただろ。水持ってくる。」

「いや。それよりもお前に聞きたい事がある。」

「何?」

「何故自分は生きているんだ?」

「…え?」


リヒトーが起きて安心して浮かべていた笑顔が一瞬にして消え顔を強張らせるシーダ。


「何、突然何を。」

「自分はあの時死んだ。頭を拳銃で撃った。即死だったはずだ。」

「…あ。もしかして」

「そうだ。全部思い出した。」


起きた時、リヒトーは何故今まで忘れていたのかと思うぐらい鮮明に自分のものとして全ての記憶を取り戻した。自分の最後の瞬間の記憶も含めて。


「自分は死んだはずだ。なのにこうして生きている。なら考えられる可能性は一つ。」


リヒトーは怒りが込もった目でシーダを睨みつける。


「自分を吸血花にしたな。」


シーダは何も言わない。緊張で手を振るわせ、視線を泳がせ、口を固く閉じている。

リヒトーはそれを肯定の返事と受け取った。


「やってくれたな。」


リヒトーは拳を強く握る。胸の中で怒りが込み上げてくるのを感じている。


「何故やった。言え。」


リヒトーはきつくそう言ったがシーダは何も答えない。青ざめた顔で視線を下に向けている。


「…そうか。」


シーダの様子を見てリヒトーはため息をついた。


「だったら麻井に聞く。」


そう言った直後、リヒトーは窓を開けてそこから飛び降りた。


「…え? あ!」


反応が遅れたシーダは急いで窓に駆け寄り身を乗り出してリヒトーの行方を見る。

すでにリヒトーは荊の壁の近くまで走り寄っていた。

何をするつもりだろうとリヒトーの様子を遠目で見ていたシーダはリヒトーが次に取った行動を見て唖然とする事になる。


跳んだのだ。


リヒトーは両足に力を込めて高く跳び上がる。シーダが建てた家よりも遥かに高く跳び上がり、荊の壁に足をつけると足場代わりにして再び高く跳び、壁の上へと跳び上がり今まで見上げるだけだった壁上の穴から外に出て行った。


「リヒトー!?」


まさか跳んで荊の壁を乗り越えるとは思っていなかったシーダは慌てて自分も外に出ようとようやく家から出てくる。

その間リヒトーが待つ訳が無く、荊の壁から外に向かって飛び降りる。地面に難なく着地するとそのまま走り出した。


「…本当に、吸血花になったのか。」


剪定士の頃以上の身体能力を実感しているリヒトーは走りながら一人呟く。吸血花になったのはリヒトーの勘違いという可能性は完全に無くなった。

全力で走り続けてもなお息切れ一つしない。体に痛みが走らない。今まで感じた事のない全能感。それらを感じながらリヒトーは走り続ける。

走って走って走って。

今は何も考えたくないから無我夢中で走り続けた。



◆◇◆◇◆



「了解。もう上がっていいよ。」


麻井がそう言うと書類を手渡しに来た部下が失礼しますと告げて退室する。研究室に残ったのは麻井一人。


「さてと。」


座り慣れた椅子の上で麻井は書類に目を通す。内容は


「そうか。陽斗らはまだ捕まっていないのか。」


リヒトーの言った通りだ。


「うっわ!?」


背後からの声に麻井は心底驚きすぐに後ろを向くとそこにいたのは麻井の持つ書類を覗き込んでいるリヒトー。


「リヒトー?! あんた、どうやってここに?」

「いつものように入っただけだ。」

「いつもって。あんたまさか記憶が?!」

「戻った。」


驚く麻井に構わずリヒトーは近くにあったソファに座る。


「今日はお前に聞きたい事があって来た。」

「え? 何?」

「自分が死んだ後、何があったか知っている事全て話せ。」


リヒトーの言葉に麻井は目を見開く。


「そこも、覚えてるの。」

「自殺した後の記憶は陽斗に監禁されかけた時よりも前のものは知らない。麻井。お前は知っているだろ。」

「…王子様、やっぱり話してなかったか。」


ため息をついた麻井は椅子を動かしてリヒトーに向き合う。


「分かった。話すよ。あたしの知る限りをさ。」


麻井の口から語られるのはリヒトーが自分の頭を撃ち抜いた後の事だ。

知らない自身の過去をリヒトーは真剣に聞くつもりだ。

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