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ついおくじゅうご

過去の夢の中で眠った後、リヒトーは現実の世界で目を覚ました。


目覚めは最悪だった。

頭痛がする。

眩暈がする。

気分が悪い。


「リヒトー! しっかり!」


リヒトーの不調に気がついたシーダは必死にリヒトーに声をかけるが、リヒトーはその声に応える余裕が無い。近くにいるシーダの声すらうまく聞き取れない。 

それでもリヒトーは考える事を止めなかった。


あと少し。あと少しで何かを取り戻せる気がする。


自分が座っているのか立っているのかすら分からないほど不安定な状態でリヒトーの頭の中ではそんな考えが浮かんでいた。


吸血花の生みの親であり元凶である女王を倒した後、過去の自分とシーダがその後どうなったのか。それを知ればリヒトーの記憶が完全に戻る。

確証は無い。にも関わらずリヒトーは不調に苛まれながらも確信していた。


だけど今はそれどころでらない。

頭痛はさらに強まりリヒトーの意識が朦朧としてきた。


「リヒトー! リヒトーしっかり!」


必死に名前を呼ぶシーダの声に何も応えられないリヒトーはそのまま意識を手放した。



◆◇◆◇◆



気絶したリヒトーはこれから過去の夢を見る。

これが最後だ。

この夢を見終わった後、リヒトーの記憶が完全に蘇り、本当の自分を思い出す事になる。



◆◇◆◇◆



見慣れた廃墟街を歩き約束した場所へと向かうリヒトー。

背中には使い慣れたリュックサック。ジュースが入った瓶数本と軽食が入った袋を片手に持ったままリヒトーは慣れ親しんだ廃ビルに入る。

いつもの本屋だった場所にシーダが待っていた。


「リヒトー!」


読んでいた絵本を置いたシーダはリヒトーに駆け寄る。


「久しぶり。体の方は大丈夫?」

「問題無い。」

「でも」

「それより土産だ。」


何かを言いかけたシーダだったがリヒトーが意図的に話を遮り持ってきた物をシーダに渡す。袋の中を覗いたシーダは嬉しそうな顔をリヒトーに見せる。


「もしかして、お菓子とジュース!」

「今日のパーティの為に用意された物だ。美味いと思うぞ。」

「パーティ?」

「剪定士達を讃えるためらしい。」

「たたえる?」

「女王を倒して凄いからお祝いしようと他の奴らが開いたパーティだ。」

「お祝い! …あれ?」


嬉しそうな顔から一転。シーダは困惑する。


「女王を倒したのはリヒトーになったんだよな?」

「そうだ。」


世間で公表されたのはリヒトーが女王にトドメを刺したという偽りの情報だ。

嘘の情報を流した理由は吸血花であるシーダが女王を倒したと素直に伝えても信じてくれる可能性が低く、仮に信じられたとしても生き残ったシーダに人々がどのような対応をするか検討がつかないためリヒトーと麻井は口裏を合わせて嘘をでっち上げた。

女王の頭にリヒトーの鉈の形をした武器が刺さっていた為その嘘はすんなりと信じられた。


人々はリヒトーの事を女王を倒した英雄として讃え、持ち上げ、喜びで大騒ぎ。


そしてこの日、前祝いとしてリヒトーと生き残った剪定士を祝うパーティが開かれる事になった。このパーティは剪定士達が気兼ねなく楽しめるように開かれた非公式のもの。正式なものは後日開かれる事になっている。


「リヒトーが主役なんだろ。パーティは終わったのか?」

「いいや。抜け出して来た。」

「え?! 良かったの?」

「良くはないな。だが自分は興味無い。」


話の途中でリヒトーは月光によって明るくなった場所に座り背負っていたリュックサックを降ろす。

シーダも続いてリヒトーの隣に座る。


「それにあのままあそこにいたら死ぬまでの間いいように利用される。」


世間ではリヒトーは英雄そのものだ。そのリヒトーを担ぎ上げて自分達の都合の良い発言をしようとする者が大勢いると知っているリヒトーは早々に抜け出そうとしていた。


「だからこのまま逃げるつもりだ。」 


そう言ってリヒトーは背負っていたリュックサックに目を向ける。中には日用品や食料が入っている。


「逃げるの。剪定士はどうするんだ?」

「前にも言っただろ。辞める。お前以外の吸血花がいなくなったんだ。」

「剪定士辞めてどうするんだ?」

「特に決めていない。」


それを聞いたシーダは何かを決心した様子の顔つきになりリヒトーに向き直る。


「だったら俺と家族になって!」

「…は?」


シーダの唐突な告白にリヒトーは唖然とした。

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