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ついおくじゅうよん

「そういう訳だ。診ろ。」

「いやどういう事?!」


シーダに支えられながらリヒトーがこっそりとやって来たのは麻井の研究室。

早朝の為、この場にいるのは緊急時用に秘密裏に作られている非常口から入って来たリヒトーと何も知らないシーダ。そして研究室で仮眠をとっていた麻井の三名だけ。


「待て待て待て! いきなり叩き起こされたと思えばあんた大怪我してるし吸血花いるし! 何これ?! どういう状況??」

「うるさい。さっさと治せ。そしてこいつの事を診ろ。」

「いつにも増して理不尽すぎない?!」


二人が言い合っている中、何も知らないシーダはおろおろと不安そうにしながらもリヒトーの体を支えていた。



◆◇◆◇◆



それから数日後。


文句を言いながらもリヒトーからの無茶振りをきちんとこなした麻井は二人に報告する。


「まずは現在の吸血花について。リヒトーの予想通り、女王が死んだ後各地に生息していた吸血花はほぼ全滅。もしかしたら他にも生き残っている個体はいるかもしれないけど、今のところ世間では吸血花は全滅したって大喜び。」

「そうか。」


ベッドの上で上半身を起こし怠そうに麻井の話を聞くリヒトー。全身に治療の跡がはっきりと見える。


「でもそこにいる彼はぴんぴんとしている。」


そう言って麻井はリヒトーの隣に座って手を握っているシーダに目を向ける。麻井に視線を向けられたシーダは怯えるように肩を振るわせる。


「言われた通り検査したけどどこにも異常は無い、と思う。」

「あやふやだな。」

「仕方がないでしょ。生きてる人型の吸血花なんて初めて診たんだから。」


そう言って麻井は手元にあるカルテに視線を移す。


「だから分からない事だらけ。女王の死体も調べてみたけど、もう全然分かんない。何で女王が死んだら他の吸血花が死ぬのよ。本当、吸血花ってよく分かんない。」


ため息を吐く麻井。


「だから、ここからはあたしの仮説。あるいは妄想かな。本気にしないでよ。」


前置きを言って麻井はリヒトーに視線を合わせる。


「確か女王にトドメを刺したのは彼、シーダだっけ? そいつがやったのよね?」

「そうだ。」

「それのせいじゃない?」

「は?」


麻井の言葉にリヒトーは何言ったんだこいつと言わんばかりの冷たい目を向ける。


「だから言ったじゃん。妄想だって。」


その視線に臆する事なく麻井は言葉を続ける。


「そもそも吸血花の存在自体が分からない事だらけ。繁殖方法とか生まれた経緯とか全然分かんない。だからこうやって隅々まで調べて何とか分かった断片的な情報だけで考察するのが精一杯なの。」

「女王を調べても分からないのか?」

「分かんない! いや、本当。細胞とかめちゃくちゃだし体液もありえない数値を叩き出すし。もうね。生物かどうかも怪しい。」


疲れた様子の麻井はまたため息を吐く。


「まぁいずれ解明してやるけどさ。現時点で言えるのは彼が生きているのは女王を殺したから。それしか無い。他の吸血花との違いは。」


リヒトーは隣にいるシーダを見る。

シーダの表情からは不安が見えた。握られている手が震えている。


「あとさ。気になる事があるんだけど。」

「何だ?」

「彼を調べたらさ。似てるんだよね。女王と。」

「え?」


麻井の言葉にシーダは驚く。


「どういう事だ?」

「女王とシーダの細胞とか体液に類似している所が結構見つかってるのよ。遺伝子検査では血縁関係は無いし。前にあんたから貰った髪と今の彼の髪を比べて検査したら一致しない点が出てきた。つまりシーダが女王を倒した結果、シーダの体質が女王と似た感じに変化した。」

「似た? 俺が女王と?」

「そ。まぁこれも妄想だけどさ。でも、もしシーダが女王と同じ体質になったのなら、もしかしたらシーダも吸血花を生み出せるかもしれない。もしかしたら女王と同じ力を使えるかもしれない。そうだったらシーダは吸血花の王様かな。」


麻井の言葉にシーダは怯えた様子で黙り込み、リヒトーの手を握る手の力が入る。


「シーダ。どうする気だ?」


その手をリヒトーは強く握り返す。


「え?」


リヒトーの言葉にシーダはきょとんと目を瞬かせる。


「今の話を聞いてお前はこれからどうする気だと聞いている。もし吸血花を増やす気なら自分はお前をここで殺す。」


殺意が込もった目線をシーダに向けるリヒトー。

向けられたシーダは身震いし首を思いっきり横に振る。


「増やさない! これ以上リヒトーを痛い事をさせたくない。」

「ならいい。」


リヒトーはあっさりと殺意を引っ込める。


「吸血花の王になる気が無いなら気にする事はない。今まで通り生きればいい。」

「…いいの?」

「他人がどうなろうと自分の知った事ではない。自己責任で好きにやればいい。」


不安そうな顔のシーダに対しリヒトーは冷たく言い放つ。だけど握った手は離さない。


「自分も好きにやるつもりだ。お前以外の吸血花がいなくなったのなら剪定士は廃業だ。残った時間は好きに使う。」


そこまで言ってリヒトーはシーダの手を離し掛け布団に潜って横になろうとする。


「疲れた。寝る。」


話を一方的に切り上げたリヒトーはそう言って寝ようとする。


「おやすみー。」

「おやすみなさい。」


麻井とシーダの眠りの挨拶を聞いた後、リヒトーはすぐに眠りについた。

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