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ついおくじゅうに

全身に痛みを感じる。血が流れている。呼吸がままならない。

それでもリヒトーは忙しなく動く。動きを止めたら最後、自分が死ぬと分かっているからだ。


女王討伐作戦が始まってからだいぶ時間が経った。

準備と作戦と剪定士達全員集められたおかげで女王に傷を与えられている。

しかし、女王が抵抗するたびに甚大な被害が出る。剪定士も大勢犠牲になってしまった。

残っている剪定士達も必死で女王を倒そうとするが、なかなか決定打を与えられない。

女王が一番の脅威だが、女王の周囲には吸血花が集まっており女王を守る様に動いている為女王に近づく事すら難しい。


真夜中だから吸血花の動きが鈍いが、女王は日の光がほとんど無いにも関わらず活発に動いている。

対して剪定士の方は作戦開始時よりも人数が減り、残った人員の方は体力は限界に近く武器や物資の消耗が激しい。


このままでは剪定士達は負けてしまう。そうなってしまえば人間は吸血花に対抗する手段が無くなってしまう。

それが分かっているから剪定士達は必死に戦うが、攻撃は他の吸血花に阻まれてしまい女王には届かない。


先の見えない戦いに犠牲になった剪定士達の姿を見て生き残っている剪定士達の士気は下がる一方だ。

女王に勝てないと思い諦めようとしている者がいた。

逃げ出そうとしている者がいた。


女王を殺そうと動いている剪定士はリヒトーだけになってしまった。


リヒトーは女王を守る吸血花の陣形の隙間を狙って走り抜け、女王の前まで辿り着く。

鉈を振るって女王を切りつけようとするがすぐに他の吸血花が群がって飛びかかりリヒトーに襲いかかる。リヒトーは迷わず対処しようとした。しかし、吸血花達によって視界が遮られてしまったせいで女王への注意が逸れてしまった。


女王は自身の腕を伸ばし周りにいた吸血花ごとリヒトーを殴り飛ばした。

リヒトーはなす術なく女王の攻撃によって吹っ飛んだ。


不幸中の幸いか周りにいた吸血花達が緩衝材の代わりになったおかげで直撃は避けられ、吹っ飛んだ先でも吸血花の死体が下敷きになったためリヒトーは即死をせずに済んだ。

だが。

命は繋げたが、負傷は激しい。

女王からの攻撃もあるが長期戦で体力が削られてしまった今のリヒトーはすぐに立ち上がる事が出来なかった。

それでも意識が朦朧としていても、痛みに耐えながらリヒトー何とか立ちあがろうとする。


しかし、それを待つほど女王は寛大では無い。


立ちあがろうとするリヒトーに向かって女王は伸ばした腕を振り下ろした。

腕は簡単に硬い地面を抉り、砕き、粉を舞わせる。


「王子様。王子様。どこ? 悪い悪い人達を倒したの。出て来て先生。」


リヒトーを殺した。

思考能力があるのかどうか不明だがそう思った、かもしれない女王は再び空想の王子とやらを求めて彷徨い歩く。


その姿をリヒトーは少し離れた所で見ていた。


リヒトーは生きていた。

抱え上げられて女王の攻撃から助け出されていた。


「大丈夫リヒトー?!」


女王からリヒトーを救ったのはシーダだ。


「…どうしてここに。」


シーダに支えられているリヒトーはただ驚いた。この場所にシーダがいるだけでなく、シーダに助けられたと理解したリヒトーは目を見開いてシーダの顔を見る。


「その。来るなって言われたけど、リヒトーの事がどうしても心配で。女王も俺のお母さんかもしれないって言われて気になって。…来ちゃった。」


自分の腕の中にいるリヒトーに顔を見つめられたシーダは申し訳なさそうに言う。

血まみれのリヒトーを前にしても。

女王がいるにも関わらず。

シーダはいつもと変わらない様子だ。


「助かった。」


シーダが正気を保てている理由をリヒトーには分からなかった。それ以上に興味が無かった。

素直にシーダに礼を言い立ちあがろうとする。


「さっさと帰れ。」

「帰らない。」


シーダは立ちあがろうとするリヒトーを抱きしめて動きを止める。


「何をする。離せ。」

「嫌だ。離したら一人で行くんだろ。」

「他に戦える奴がいないからな。」

「だから俺も一緒に行く。」

「どうしてそうなる。」


抱きしめられたまま聞いたシーダの言葉にリヒトーは呆れた様子だ。


「相手は女王だ。そこらにいる吸血花とは全然違う。」

「俺だって戦える。俺が強いのはリヒトーがよく知っているだろ。」

「それだけじゃない。女王はお前にとって」

「あいつはお母さんじゃない。」


リヒトーの言葉を遮りシーダは断言した。


「あいつを見たけど、何も感じなかった。よく分からないけど俺には女王の命令は聞こえないみたい。それに」


シーダは傷だらけのリヒトーの手を優しく触れる。


「あいつはリヒトーをこんな目に合わせた。」


そう言って怒りの感情が込められている目で女王を睨みつけるシーダ。


「だから、俺も戦う。リヒトーの邪魔にならないようにするから。」


シーダの言葉を聞いて、シーダの顔を見て、シーダが決意を固めた事に気がついたリヒトーはため息をついた。

そして、リヒトーも覚悟を決めた。


「離せ。」

「リヒトー。」

「くっついたまま戦う気か。」

「! じゃあ。」

「やると言ったからには最後までやれ。いいな。」

「うん!」


大きく頷いたシーダはリヒトーを支えて二人で立ちあがり、女王の方へ向かう。


そして二人は女王と戦ったのだが、ここから先は断片的な情報ばかり。

助っ人はいない。

周囲は敵だらけ。

判断を間違えれば即座に死ぬ。

そんな状況下で二人は女王を討伐する為に無我夢中だった。

まともに記憶出来ないほど苛烈な戦闘だった。


だから。

リヒトーがシーダと共に女王と戦った事でまともに覚えているのは結果だけ。

それはシーダがリヒトーの持っていた鉈で女王の頭を深々と切り割った瞬間だった。

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