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ついおくじゅう

昼食に用意された赤い果実の柔らかい果肉を味わってから飲み込んだリヒトーは考え続ける。

リヒトーの前には木の皿の上に乗った赤い果実と水が入ったコップ。

何気なくそれをじっと見る。


そして気がついた。

リヒトーはここに来てから果物と水しか食べていない。

明らかに偏った食事を続けているにも関わらずリヒトーの体調に変化は無い。


連鎖的に違和感に気がついていくリヒトー。

内心ではかなり動揺しているがそれ表に出していない。


「リヒトー。夜ごはんはどうする?」

「お前に任せる。」

「分かった。」


そのためシーダはリヒトーの変化に気がついていない。向かいの席でリヒトーと同じように赤い果実を口にしている。


シーダに悟られないようリヒトーはいつも通り夜まで体を動かしたり日向ぼっこをして時間を潰していた。


食事と寝る準備を済ませたリヒトーとシーダはこの日も同じベッドで寝る事になった。


「今日はこの本を読むね。」


この日も何事も無くシーダに絵本を読んでもらったリヒトーはゆっくりと夢を見る。



◆◇◆◇◆



「リヒトー。今日はこれ読んで。」

「分かった。」


この日は絵本を読む約束をした日。


すでに文字が読めるようになっているがシーダは相変わらずリヒトーに絵本を読んでもらっている。


この日渡された絵本は家族について。内容は父と母と兄と妹の四人家族の幸せそうな日常だ。

読み終えた後、シーダはリヒトーに質問をする。


「家族っていいものなの?」

「…さぁな。」


幼い頃に両親を失ってしまったリヒトー。両親と過ごした記憶が朧げの為、家族がどんなものかリヒトーもよく分かっていない。


「リヒトーでも分かんない事ってあるんだ。」

「あるさ。別に自分は物知りな訳じゃない。」

「そっか。リヒトーでも家族は分からないんだ。」


絵本に描かれている四人家族の幸せそうな笑顔の絵を見てシーダは呟く。


「でもいいな。俺も家族が欲しい。」

「なぜ?」

「だってこの絵の家族は暖かそうだ。帰る家があって、一緒にごはん食べて、おかえりとかただいまって言えて。凄い羨ましい。」


そう言って絵本に描かれている家族の絵を切望の眼差しで見つめるシーダにリヒトーは何も言えなかった。


その静けさを破ったのはリヒトーが持つ無線機からの連絡。


「悪い。少し出る。」


そう言って立ち上がりシーダから少し離れるたリヒトーは無線機から入った連絡を聞く。

無線機から聞かされたその情報にリヒトーを目を見開く。


「女王が?! 本当に?」


思わず声を荒げるリヒトーにシーダは気になってしまいリヒトーの方をじっと見る。

無線機の相手としばらく話した後、通信を切ったリヒトーはシーダに近づく。


「急な仕事が入った。しばらくお前に会えなくなる。」

「女王のせいで?」

「聞こえてたか。」

「リヒトー。女王って何? その人が何かしたの?」

「お前には関係無い話だ。」


そう言って立ち去ろうとするリヒトーの腕をシーダは掴んだ。


「待って。俺にも関係あるよ。」

「…なぜそう思う。」

「だって、リヒトーは剪定士だから。剪定士の仕事は吸血花を倒す事だろ。」


リヒトーはシーダの手を振り払わず話を黙って聞いていた。


「たぶん女王って吸血花だろ。リヒトーは今からそいつを退治しに行くんだろ。」

「そうだ。いつものように吸血花を殺すだけだ。」 

「いつも通りじゃない。」


シーダはリヒトーの言葉に首を横に振る。


「リヒトーがあんなに大きな声を出すのは初めて見た。女王って奴がどんなのかは知らないけど、リヒトーがびっくりするくらいの相手だって事は分かった。」


リヒトーの腕を掴む力が少し強くなる。


「強い吸血花、なんだろ。その女王って。」

「もしそうだとしてお前に何の関係がある?」

「あるよ! そいつと戦ったらリヒトーが怪我しちゃうだろ!」


感情に任せて大声で言うシーダにリヒトーは少しひるむ。


「女王が俺より強かったらリヒトー大きな怪我をするだろ。リヒトーだって痛いのは嫌だろ。止めようよ。」

「そういうわけにはいかない。上の奴らはすでに自分を最前線にした作戦を立てている。自分もそれに異論は無い。」

「嫌だ! 行かせない。」

「シーダ。いい加減に」

「どうしても行くなら俺も行く!」

「は?」


シーダからの思いがけない提案にリヒトーは驚愕する。思わずシーダの肩に手を置き止めようとする。


「お前、分かっているのか。相手は吸血花だぞ。」

「関係無いよ。リヒトーに痛い事する奴なら俺はそいつと戦うよ。」

「止めろ。相手は女王だ。」

「俺はその女王って奴がどんなのか知らない。止めたかったから教えてよ。」


リヒトーは口を閉ざそうとしたが、シーダの真剣な眼差しに負けて肩から手を離し正直に話した。


「…女王とは吸血花を生んだ始祖の呼び名だ。つまり、お前の母親みたいなものだ。」

「え。母親?」


リヒトーから思いがけない情報を聞いてしまったシーダは呆然とする。

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