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ついおくきゅう

剪定士になった後も季人は陽斗に話しかけられる。


「剪定士なんか止めて家に来て。」


会うたびにそんな事を言われたが、季人は気にかけなかった。


それでも陽斗は諦めなかった。

季人と名前を変えても、リヒトーと周りに呼ばれるようになった今でも陽斗は季花と呼び続けた。


そして今でも陽斗はリヒトーに執着している。


「この後時間あるかな。一緒に食事でも」

「行かない。」


陽斗の話を遮りリヒトーは引き返して別の道に進む。

その後を陽斗は小走りで追いかける。


「待ってよ季花!」


リヒトーは慣れた様子で無視して歩き続ける。それでも陽斗がついてくる為さらに歩く速度を上げようとした時だ。

突然強い眩暈に襲われ、その場で膝をつく。


「季花!」


リヒトーに駆け寄り肩に触れる陽斗。


「触るな!」


鳥肌が立つのを感じながらリヒトーは肩にある陽斗の手を強く払う。そして近くの壁まで這うように動き、壁に手をつけてどうにか立ち上がる。


「季花。まさか、もう。」


リヒトーの状態を見て何かを察した陽斗は再びリヒトーに近寄る。


「もうこれ以上待てない。早く俺の家に行こう。あんな女の所よりも俺の家なら適切な処置を受けられる。」


そう言いながら陽斗はリヒトーを横抱きにして連れて行こうとした。

が、それよりも早くリヒトーが動いた。陽斗の手をかわし早足でその場から離れる。


「季花! いい加減素直になりなよ! このままじゃ」

「聞いているのか分からないが何度でも言ってやる。自分に、これ以上踏み込んでくるな!」


脂汗をかいて急いでこの場から離れようとするリヒトーは去り際に大声でそう言い残した。

リヒトーの気迫に押し負けた陽斗はとうとう足を止め、リヒトーの去り行く後ろ姿を呆然と眺めていた。



◆◇◆◇◆



「異常があった。診ろ。」

「早!」 


麻井の研究室へ逆戻りしたリヒトーは青ざめた顔で扉を閉めるとその場で膝をつく。


「あいつが、入って来ないようにしろ。」

「はいはい。了解。」


麻井が鍵をしっかりと閉めるとすぐにリヒトーの診察に入る。

リヒトーに肩を貸して医療用のベッドまで連れて行く。リヒトーをそこで寝かせ器具や機械を使って慌ただしくリヒトーの体を診て調べる。


それからしばらくした後。


「しばらくそこで寝てて。」


点滴を受けおとなしくベッドの上で横になっているリヒトーの顔色が先ほどよりもかなり良くなっていた。


「いきなり容体が悪化するとは。でもリヒトー、剪定士になってから結構経つもんね。剪定士歴最年長だし。」


そう言いながらも麻井は動かす手と足を止めない。機械に表示される情報を記録したり薬品棚を見たりと相変わらず慌ただしい様子だ。


「麻井。自分はあとどのくらいだ?」


リヒトーがそう言うと麻井は動きを止める。


「…あまり、長くない。」


沈んだ顔つきで麻井は手元にあるリヒトーの情報をまとめたバインダーに目を落とす。

その様子を見て自分の体が麻井の言う通り長くはもたないとリヒトーは理解した。


「そうか。」


リヒトーは淡々とその事実を受け止めて天井を見る。


「でも!」


しかし麻井が大きな声を上げた為そちらの方を見ると麻井はリヒトーの方を真っ直ぐと見ていた。


「あたしならそうはいかない。あたしの手にかかればリヒトーはもっともーっと長生きできるからね! あたしにどーんと任せなさいよ!」

「そうか。」


胸を張る麻井の姿を見てリヒトーはほんの少し口元を緩める。


「リヒトーには貸した金を返してもらわなくちゃね。」

「お前に金を貸した事は一度も無い。」

「あれれー? そうだったっけ?」


すぐに元の淡々とした表情に戻り、リヒトーは白けた目で麻井の方を見る。

麻井の方はリヒトーの反応に慣れた様子で戯けていた。

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