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ついおくはち

数日ぶりにシーダと共に眠る事になったリヒトーはシーダから花の匂いを感じながら眠気に任せて瞼を閉じた。



◆◇◆◇◆



月明かりと自分の視力を頼りにリヒトーは鋏を使って髪を切っていく。


「出来たぞ。」


そう言ってリヒトーは切った髪を袋に入れていく。


「これでいいか?」


鏡を渡し仕上がりを確認してもらう。


「うん。ありがとうリヒトー。」


渡された鏡でリヒトーに切ってもらった前髪を確認し仕上がりに満足げなシーダは嬉しそうに微笑む。


「後ろもそこそこ切ったが長さはこれでいいか?」

「もちろん。」


前も後ろも髪は均等に切られている。

シーダは自分の髪を触って毛先を見たり前髪を確認している。


「文句が無いならそれでいい。」


リヒトーはシーダに首周りにかけていた大きな布を取りシーダから少し離れると布についた細かな毛を取る為に大きく振る。毛が大体落ちるとリヒトーは布を畳んで髪の毛が入っている袋と一緒にリュックサックの中にしまう。


「今日はこれで帰る。またな。」

「またねリヒトー。次の日、忘れないでよ。」


リュックサックを背負ったリヒトーはシーダに別れを告げて帰って行った。



◆◇◆◇◆



「やる。」

「えー! 本当に持ってきた!」


シーダに会ってから次の日。


昼前に麻井の研究室へとやって来たリヒトーはシーダの髪の毛が入った袋を麻井に手渡す。


「ありがとー。どうやって手に入れたのこれ?」

「たまたまだ。」


本当はシーダから髪を切ってとねだられ、髪を貰う事を条件にリヒトーは望み通り切って手に入れた物だ。


「ふーん。」


麻井は何か言いたげな様子ではあったが口には出さず髪が入っている袋を別の場所に保管する。


「ところでさ、体の方は大丈夫?」

「まだ動く。」

「そっか。今日も薬出しておくからちゃんと飲んでね。」


そう言って麻井は小さな封筒をリヒトーに渡す。封筒には《一日二回 食前》と書かれている。


「助かる。」

「何か異常を感じたらすぐに知らせてよ。」

「分かっている。無くなったらまた来る。」


リヒトーは渡された封筒を懐にしまうと麻井の研究室から出て行った。


「やぁ季花。」


軽く昼食でも摂ろうかなと考えながら歩いている時に声をかけてきた相手の顔を見てリヒトーは嫌そうに眉を顰める。


「その名前で呼ぶな。自分は季人だ。」

「嫌だよそんな男のような名前。君には季花という可愛い名前があるじゃあないか。」


リヒトーを昔の名前で呼んでいるのは陽斗だ。

リヒトーは進行方向に立っている陽斗に対して嫌悪感を露わにしている。


「何の用だ。」

「君の事が心配で探していたんだよ。」


近づいて来ようとする陽斗に対してリヒトーはすぐに距離をとる。


「つれないな。幼馴染に対してそれはないだろ。」

「そうか。知らなかったな。子供の頃から付き纏ってくるのを幼馴染というのか。」


リヒトーが季花と名乗っていた頃、剪定士になる前に陽斗と出会っていた。


出会った場所は病院。

季花が住んでいた場所に吸血花が襲ってきて両親は帰らぬ人となり、季花は命は助かったが大怪我を負った。 

傷がある程度癒え、リハビリに励んでいる時に季花は陽斗と偶然出会い、その後も陽斗は季花の見舞いにやって来た。

周りの人達からはひとりぼっちの少女を気にかける心優しい少年に見えていた。


季花はそうは思わなかった。

季花は気づいていた。最初に出会った時から陽斗が季花に対して強い執着心を抱いている事に。

なぜ自分にここまで執着するのか。季花にはその理由が全く分からなかった。


理由を陽斗に聞いたが


「君の事が気になるんだ。」

「君を守ってあげたい。」

「君の力になりたいんだ。」


などと言われた。

季花からすれば答えになっていない。


陽斗はほとんど毎日やって来て興味の無い話を延々としてきたり、無理しなくていいと言ってリハビリの邪魔をしたり、季花の好みじゃ無い見た目が愛らしい甘い菓子を大量に渡してくる。

季花からすれば陽斗の見舞いは迷惑なものだった。


周りの大人達に陽斗の見舞いは迷惑だと何度も言っても陽斗を病室に通されてしまう。

どうして自分の要望を無視されるのかと聞いて、大人達から答えを聞いた季花は仰天した。


退院したら季花は陽斗のいる家に引き取られる。


季花はそんな話を知らなかった。

詳しく聞くと、陽斗は身寄りの無い季花を自分の家に迎えさせようと両親に頼み込むと陽斗に甘い両親はその願いを叶え、季花を迎え入れる準備を進めた。

当の本人である季花の意思を一切聞かずに。

 

そんな事を望んでいない季花は憤怒し、陽斗にありのままの自分の気持ちを伝え止めるように言ったが


「遠慮しなくていいよ。僕の家に来れば季花は幸せになれる。何も心配しなくていいよ。」


と言って聞く耳を持たなかった。


自分で何とかしなくてはと決めた時、季花は剪定士の存在を知った。

剪定士になれば孤独で幼い自分でも生きていけると思った季花は何の躊躇いもなく剪定士になる事を決めた。

もちろん陽斗や陽斗の両親から止めるように言われたり、関係者に圧力をかけたりした。

しかし季花に剪定士として強い潜在能力がある事が検査で判明したり、人手不足であったり、季花がまだ陽斗の家のものでなく、本人の強い希望があって季花は幼い身で剪定士になり、名前を季花から季人へ変えた。

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