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さぐって

リヒトーが実験の後始末を終えた頃には夜になっていた。 


家に戻ったリヒトーは眠気に耐えながら食事を済ませる。

片付けを済ませるととリヒトーはいつもより早く寝る準備を始める。

実験の為に血を流したせいか気怠さを感じたリヒトーは今日は早く寝ようとしていた。

顔などを洗う為に湖へ向かおうとリヒトーは外に出た。


「リヒトー。」


その時に名前を呼ばれた。

声がした方を見ると帰ってきたシーダの姿が見えた。


「シーダ。」


駆け寄ってくるシーダにリヒトーは自然な様子を取り繕う。


「帰ってきたのか。」

「うん。」


リヒトーのそばまで移動してきたシーダはそこでソワソワと落ち着かない様子で黙り込む。


「?」


何も喋らないシーダをしばらく見た後


「…あ。」


何かを待ち望んでいる期待に満ちた目を見てある事を思い出したリヒトーはシーダの期待に応える。


「おかえり。」


リヒトーがそう言うとシーダは満面の笑みを浮かべる。


「ただいま!」


交わした約束を守った。リヒトーにとってはそれだけの認識だった。

この場所にいられる対価として要求された言葉でここまで喜ぶとは、とリヒトーは思っていた。


[俺が帰って来たらおかえりって言ってほしい。]


対価は何がいいとリヒトーが聞いたらシーダはそう言った。

なぜそんな要求をしたのかリヒトーは分からない。


「早く家に入ろ。」

「寝る準備を済ませてからな。」

「そうだね。一緒に行ってもいい?」

「構わない。」


が、嬉しそうなシーダを見てリヒトーはそれ以上考えるのをやめた。

本人が望んでいるのならそれでいいと判断した。

そしてリヒトー自身、悪い気分じゃないなと思っていた。


数日ぶりに会った二人は寝る準備をする為に湖へと向かった。



◆◇◆◇◆



湖で寝る準備を済ませ、家に帰ってきた時。

先に家に入ったシーダを見てからリヒトーは動いた。

 

「あ。」


リヒトーは入口のわずかな段差につまづき転びそうになった。


「リヒトー!」


転びそうになったリヒトーに気がついたシーダは咄嗟にリヒトーの体を支え倒れるのを阻止する。

その時にリヒトーはシーダに抱きつく。


「大丈夫?」


心配しているシーダに気づかれないようリヒトーは服に触れて探っている時、リヒトーはシーダのベッドで寝た時に嗅いだ花の匂いを感じた。

心が落ち着く甘い匂い。その匂いがシーダから香る。

花の香りの正体を知った時、リヒトーはシーダの服のポケットあたりに何か固い物に触れた。


「大丈夫だ。ん?」

「どうしたの?」

「何か、固い物が。」

「あぁ、これ?」


体制を立て直したリヒトーは何食わぬ顔でそう言うと何も気がついていないシーダはポケットから中の物を取り出した。


「ただの時計だよ。」


見せてくれたのは片手で収まるほどの大きさのデジタル時計だった。時間の他に日付と室温も表示されている。

リヒトーはその時計に見覚えがあった。過去の自分がシーダにあげた物だ。


「そうか。どこで手に入れたんだ?」


リヒトーがそう言うとシーダはこう答えた。


「えっと。…リヒトーに貰ったんだ。」


言い淀んだかと思えば素直に話すシーダの表情に後ろめたさをリヒトーは感じ取った。


「そうか。渡した時、自分は何と言っていたんだ?」


詳しく聞こうとするリヒトー。


「え。その。持ってると便利だからってくれたんだ。それだけ。」


リヒトーはシーダが嘘をついているとすぐに分かった。

曖昧な受け答えに分かりやすい態度。

ここに来てからリヒトーは気がついていた。これはシーダが嘘をついたり詳しい話をしたくない時の反応だと。

シーダは何かを隠している。リヒトーはそう思った。


「そうか。」


リヒトーはそれ以上追求はしなかった。記憶を少しずつ取り戻している事を悟られないために。

夢で過去の記憶を見ているとシーダに知られたらまずいとリヒトーは直感的に思っていた。


「あっ! そうだリヒトー。出かけた先で新しい本を見つけて持ってきたから、良かったらこれも読み聞かせするよ。」


話を逸らすように本を取り出すシーダ。

リヒトーはその本の題名がしっかりと読めていたが、読めないふりをする。


「それはいい。是非頼む。」


今は記憶を取り戻す事が先決だと判断したリヒトーはシーダにバレないように未だに記憶が戻っていないように振る舞う。


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