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じっけんして

「…なるほど。」


夢から覚め起き上がったリヒトーはぽつりと呟く。

夢を見て過去の自分がなぜシーダに対して好意的な態度と行動をとっていたの理由が分かり、そして納得した。過去の自分からシーダに対して好意的な感情を抱いている理由を聞いて確かにと思った。


「…ん?」


しかしリヒトーは夢で見たシーダの発言に引っ掛かりを感じていた。しかし具体的にそれが何なのかまでは分からない。


新たに不明瞭な疑問が生まれモヤモヤとした気持ちのまま、リヒトーはひとまず身支度を済ませようとベッドから出ていく。



◆◇◆◇◆



この日は曇り空。


日の光は少ないため思う存分日光浴が出来ずリヒトーは不満に感じていた。ここに来てから日向ぼっこをしている時が一番時間を忘れられる。

今のリヒトーは時間を持て余していた。

シーダの持ち物である本はつい先ほど読み終えてしまった。字が読めるようになった今ではわずかな暇つぶし程度にしかならない。

話し相手のシーダは現在不在。


暇つぶしの手段が無くなってしまったリヒトーは手持ち無沙汰のまま目的も無くうろうろと歩く。

シーダからはあまり出歩くなと言われた事は覚えているが、素直に従う気はリヒトーには無い。


「ここには自分しかいないのに。」


独り言を呟いた時、リヒトーは気がついた。朝から感じた引っ掛かりの正体を。


リヒトーはこの場所に来る前に聞いたシーダの言葉を思い出す。


「今の俺は吸血花の中でも高位な存在なんだ。だから誰も俺に文句を言う人はいないよ。」


これは剪定士であるリヒトーが敵対関係である自分と共に行動して異端扱いされないのかという質問に対して返ってきたシーダの答えだ。


「…嫌われてる。近づくと逃げたり攻撃してくる。」


そしてこれは過去のリヒトーが聞いたシーダの言葉。

過去のシーダは他の吸血花から弾きものにされ孤独だった。そのシーダが他の吸血花を付き従えさせている事にリヒトーは強い違和感を感じた。


今と過去の時間の差がどれだけあるのか今のリヒトーには分からない。

リヒトーが知らない間にシーダが吸血花として高い地位に着いている可能性はある。

しかし、リヒトーはそうは思わなかった。

確証は無い。

だがそれは違うという自信がリヒトーの中にあった。


考えれば考えるほど違和感に気づいていく。この場所にもリヒトーは強い違和感を感じとった。


「…ここには本当に吸血花がいるのか?」


夢を見た影響で知識もだいぶ思い出してきたリヒトーは大抵の吸血花が人の血を啜るために見境なく襲いかかってくる事を知識と経験で学んでいる事も思い出していた。


その吸血花が剪定士であり人であるリヒトーがすぐ近くにいるにも関わらず姿を現す事すらしない。

上位的存在であるシーダの命令を聞いて大人しくしている。リヒトーは一瞬そう考えたが、すぐにその考えは破棄した。

吸血花の獰猛さを身をもって体験してきたリヒトーにからすれば吸血花が命令一つでおとなしくなるのはおかしいと思っている。


リヒトーは周囲を見る。聞く。肌で感じる。

しかし、静けさしか感じない。今まで感じてきた吸血花特有の気配がしない。


「何もいないのか?」


答えは返ってこない。

意識すればするほど静けさが気になって仕方がない。


「…やるか。」


吸血花がいるのかいないのか。

それを確かめるためにリヒトーは自分を使って実験しようとした。

そのための準備としてまずリヒトーは家に一旦戻り置いてあったボロ布を持ち出してまた外に出た。

次にリヒトーは袖をまくり腕を露出させるとそこに強く歯を当ててそのまま噛み切った。

自分で作った傷口から血が流れ出てくる。リヒトーは血が地面に落ちないよう用意しておいたボロ布で流れ出る血を受け止める。そのままリヒトーはあちこち歩き回った。


リヒトーは自分の血で吸血花を誘き寄せようとしている。


歩いて歩いて歩いて。

傷が塞がればまた噛み切って血を流す。しばらくはその繰り返し。ボロ布が真っ赤に染まるまで続けた。


「…出ない。」


にも関わらず、吸血花は出てくる気配すら無かった。


この場所には今、吸血花がいない。

そう結論つけたリヒトーは深く穴を掘りそこに血が染まったボロ布を入れ埋める。

そして手の汚れを湖で洗い落とす。

その間も吸血花は出てこなかった。


「やっぱり嘘をついていたか。」


シーダが何か隠し事をしている事には早いうちから気がついていた。しかしシーダが嘘をついた理由までは分からなかった。

ひとまずリヒトーは詳しい事が分かるまでシーダに対しては何食わぬ顔で過ごそうと決めた。

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