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ついおくろく

吸血花と戦った後、リヒトーは報告を済ませた後は見回りとして夜にいつもの場所へと向かった。

廃墟街にあるビルの中に入り待ち合わせ場所の本屋に向かう。

そこには誰もいなかった。


「…さすがにいないか。」


引き返し帰ろうとした時、リヒトーは気がついた。

本屋から少し離れた場所にある柱の影に吸血花が隠れてこちらの様子を伺っていた。


「何をしている。」


リヒトーは迷わず声をかけた。

すると吸血花は気づかれた事に驚き柱に一瞬隠れるが、すぐに顔を出してこう言った。


「嫌いに、なった?」

「は?」


吸血花の発言にリヒトーは少し戸惑う。


「突然どうした。」


リヒトーが近づこうとすると吸血花はまた柱の影に隠れる。


「もしかして昼の時の事を言っているのか?」


少しずつ近づきながらリヒトーは吸血花に話しかける。


「…うん。」


吸血花は柱の影に隠れたまま話し始める。


「俺、忘れてた。リヒトーは剪定士。俺達吸血花を殺すのが仕事。でもリヒトーは俺に優しくしてくれた。だから、今日リヒトーと戦う事になって俺、嫌な気持ちになった。」


気落ちした様子で吸血花は話し続ける。


「でも、リヒトーも嫌な気持ちになった。俺のせいで。だから、嫌われたと思って」

「待て。」


リヒトーは柱の前に立ち柱の向こうにいる吸血花の言葉を遮る。


「なぜ自分が嫌な気持ちになる必要がある?」

「え?」


リヒトーの言葉に吸血花は思わず顔を出す。


「だって俺、吸血したんだよ。」


吸血花は暗い表情で俯く。


「? それがどうした。」


それに対してリヒトーは心底分からないといった様子で答える。

リヒトーの言葉に吸血花は戸惑う。


「え? でもリヒトー、剪定士だから吸血花から人を守るのが仕事、だよね。だから俺を倒そうとしたんだよね?」

「そうだな。自分は例えお前であろうと仕事の時は躊躇なく殺す自信がある。今日だってそのつもりだった。」


断言するリヒトーに吸血花はまた柱の影に隠れて怯えで体を縮こませる。


「だがそれはお前の事を嫌いになる理由にはならない。」 

「…え?」


リヒトーの言葉に吸血花はきょとんとする。柱の影に隠れているためそれに気づかないリヒトーは淡々とした様子で言葉を続ける。


「確かに自分は剪定士だ。剪定士になったからには吸血花は殺す。」


親しくしている相手であろうとリヒトーは容赦なくそう言う。


「じゃあ、なんで俺に優しくするの?」


リヒトーの言葉に怖がり、戸惑いながらも吸血花は疑問に思った事を口にする。


「…そうだな。」


それに対してリヒトーは少し考え込んだ後、考えながら話し始める。


「無視ができなかったからだ。」

「むし?」 


そこでリヒトーは一旦言葉を切り、言うか言わないか少し迷った後、話す事を決めた。

 

「初めてお前に会った時、自分はお前の事がなぜか強く印象に残っていた。人型の吸血花は珍しいからな。その後は、そうだな。」


そう言ってリヒトーは柱を覗き込み吸血花の方を見る。


「一緒にいても不愉快にならない。それにお前は無防備な所があるから気になる。」


リヒトーは自分の正直な感想を吸血花に伝える。

顔を上げてリヒトーと目を合わせた吸血花はリヒトーが嘘をついていない事に気がついた。根拠は無い。ただ、本当にそう思った。


「お前と、一部の奴ら以外はどうでもいいと思っている。」

「…え?」


その言葉もリヒトーの嘘偽りの無い本心からのものだと分かった吸血花は思わず呆気にとられる。


「昼間にお前を殺そうとしたのはそれが仕事だったからだ。通信が入って近かったからな。お前が吸血していた奴らを助けたのもそれが仕事だったからだ。」


感情の乗っていない声でリヒトーは話し続ける。


「仕事じゃなければ自分がいない所で吸血花が暴れていようとどうでもいいとすら思っている。」

「え。」


リヒトーの言葉に吸血花は言葉を失ってしまう。思いがけないリヒトーの言葉に吸血花はなんと言ったら分からずただひたすらに困惑する事しか出来なかった。


「つまりだ。」


吸血花の反応を見ても心を揺るがさないリヒトーははっきりと自分の答えを言う。


「自分はお前の事が嫌いではない。」


その言葉に吸血花はリヒトーの目を見る。


「…本当?」

「嘘は言わない。それより今日は絵本はいいのか?」

「読んで! 今日は、あれがいい。」


絵本の話になった途端少し調子を取り戻したのか、或いはこれ以上考えるのを止めたのか吸血花は本屋の方は小走りで向かう。

リヒトーは吸血花の後ろ姿を見ながら歩いて本屋の方へ向かう。


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