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かんがえて

「不用心にもほどがある。」


夢から覚めたリヒトーは夢で見た過去の自分に向けて独り言を呟く。


リヒトーは過去の自分が吸血花に対して絵本を読んであげた事に対してため息をつきたくなったが、隣でまだシーダが眠っているのでグッと堪えた。 

自分のすぐそばに絵本があったのでリヒトーはそれを手に取ると絵本のタイトルである《オオミのだいぼうけん》と書かれた文字が読めた。それだけでなく作者名のメイジ メイロと書かれた文字も読めた。

リヒトーは絵本の中を見ると昨日まで読めなかった文字がすらすらと読めていた。


記憶の一部が戻ったと解釈したリヒトーはシーダを起こさないようそっとベッドから抜け出し外に出る。

そして陽の光を浴びながら外で思いっきりため息をついた。


「なぜあんな事をした。」


リヒトーは過去の自分に問うたがもちろん返事は返ってこない。文字は再び読めるようになったが、わからない事が増えた。

過去のリヒトーが吸血花に対して絵本を読んであげると言う行為は今のリヒトーにとっては信じがたい行為だ。


「リヒトー! ここにいたんだ。」


リヒトーが一人で過去の自分の行動の意味は何か考えている時、少し焦った様子で家から出てきたシーダはリヒトーに近寄る。


「良かった。起きた時いなかったから。」


リヒトーはじっとシーダを見る。

シーダの前髪はかつて過去のリヒトーが切った時とほぼ同じ形だ。


「リヒトー?」


切られた時から前髪の形を維持し続けているのだろうかと考えているリヒトーはシーダの前髪をまじまじと見る。


「あのリヒトー。どうしたのそんなに見つめて。」

「…何でもない。」


しかしいくら一人で考えても答えは出ないと結論づけシーダから目線を外す。


「そう。分かった。ご飯用意するから待っててね。」


少し顔を赤らめたシーダはそう言ってすぐに家の中へと戻っていく。

リヒトーは顔を洗う為に湖へと向かった。



◆◇◆◇◆



「リヒトー。実は俺、しばらく出かける事になったんだ。」


朝食を終えた後シーダが決意を固めた目でリヒトーを見つめながらそう言う。


「そうか。」


リヒトーはそれをあっさりと受け入れた。


「俺がいない間のご飯はちゃんと用意しておくから安心して。なるべく早く帰るからね。」

「分かった。」

「後、あまり出歩かないでね。迷子になったら大変だし怪我したら痛いだろ。本も好きに読んでいいからね。それから」

「行くなら早く行け。」


その後、リヒトーの心配をしてなかなか出発をしないシーダの背中を押しながらリヒトーは見送った。


ここに来てから初めて一人になったリヒトーは陽の光を浴びながら地面の上に寝転ぶ。

そしてある事に気がついた。


「あいつがいないと夢が見られない。」


リヒトーの中ではシーダと一緒に寝る事が夢を見るきっかけであると考えている。実際に一緒に眠ってから昔の記憶を夢として見られるようになった。

しかし今日からしばらくシーダは帰って来ない。シーダと一緒に眠らなければ忘れてしまった記憶を思い出せない。

一刻も早く記憶を取り戻したいリヒトーとしては今の状況は好ましくなかった。



◆◇◆◇◆



夜になり、寝る準備を済ませたリヒトーは自室へと向かう。

最近は強い眠気に抗えるようになり一人で寝る準備をする事が出来るようになった。


リヒトーが自室へ向かう途中、シーダの部屋の前を通ろうとして、扉の前で足を止めた。

眠気で上手く動かない頭でリヒトーは考えた。


シーダのベッドの上で眠ればもしかしたら夢を見られるのでは?


そんな事を考えたリヒトーはシーダの部屋の扉を躊躇なく開ける。鍵はかかっていないため簡単に中に入る事が出来た。

ベッド以外の家具が無い殺風景な部屋だが今のリヒトーにはそれを気にする事はない。

リヒトーはベッドへ向かいそのまま倒れ込むように寝転がる。自分のベッドとは違いふわりと花の香りをリヒトーは確かに感じた。


「ん?」


その花の匂いにリヒトーは覚えがあったが眠気に抗うのが限界になり目を閉じて眠りに入った。

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