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ついおくさん

シーダに添い寝してもらい本を読んでもらう事になったリヒトー。

ベッドの上で本を読むシーダの声を聞きながら目を閉じるとあっという間に眠ってしまう。

そして夢を見る前兆を感じながらリヒトーは意識を夢の中へと委ねる。



◆◇◆◇◆



時刻は夜中。


リヒトーは廃墟の街を散策しながら人型の吸血花の事を思い浮かべる。

一度目は目を合わせたのかすら分からなくて。

二度目は殺し合いの末ようやく目が合った。

言葉を交わしてはいない。

そもそも吸血花が喋るところをリヒトーは聞いた事がない。


それでもリヒトーは吸血花の事が忘れられなかった。ふとした瞬間に吸血花の事を考えてしまうくらい気になっていた。

こうして例の吸血花と数日前に交戦した後にも関わらずいつものように一人で一度目に吸血花を目にした廃墟の街にやって来るくらいには気になっていた。


他の人や剪定士達から止めるよう何度も言われたがリヒトーは構わず武器を持って一人でやって来た。何人かリヒトーの後を着いてこようとしたがリヒトーはさっさと撒いてしまった。


リヒトーは時々建物内に入りながら散策を続け、ある廃ビルの中に入り外から入ってくるわずかな月光と夜でも周囲が見える自身の目で建物の中を歩き、本屋がある区画に立ち入った時に見つけた。


月光で照らされてる床の上であの時の吸血花が座って本を眺めていた。


吸血花がリヒトーに気がつき一瞬リヒトーの方を見てきた。

リヒトーは身構え武器を構えようとする。

だが吸血花はすぐに本へと視線を戻したのでリヒトーは警戒しながら武器から手を離した。


リヒトーは吸血花から距離を保ちながら観察する。


リヒトーが切った前髪はそのままであるため吸血花の美しい顔をはっきりと見る事ができた。

もしこの場に他の人がいたら月光の下で本を見る吸血花の姿を見て幻想的な美しさを見出し見惚れていただろう。


しかしリヒトーは吸血花自身よりも吸血花の持つ本に注目していた。

逆さまだ。

吸血花は上下逆さまで本を見ていた。


「逆では?」


思わず声に出してしまうほどリヒトーは気になってしまった。


「ぎゃくでは?」


吸血花はリヒトーの方を見てきょとんとした顔で声に出した。

リヒトーは少し迷ったが、立ち去る事なくシーダに話しかける。


「お前は字が読めないのか?」

「おまえはじ、じ? じー。」


吸血花はそう言いながら本をくるくると回す。

吸血花の反応を見て幼さを感じ取ったリヒトーは次はどう話しかければいいのかと考えていると吸血花が立ち上がりリヒトーの方へ近寄る。


「なんだ?」


いつでも武器を構えられるよう身構えていると吸血花は本をリヒトーに差し出した。


「じ、できる?」

「…は?」


リヒトーは吸血花が何をしたいのか分からなかった。

吸血花はリヒトーの反応にお構いなしに本をさらにずいっと前に出す。


「じ、できる?」

「…読めというのか?」


思わず本を手に取り表紙を見ると《オオミのだいぼうけん》と書かれた題名と可愛らしい絵柄で描かれている左目に花をつけた少女の絵が月光のおかげで確認できた。

表紙から目を離し吸血花の方を見るとじっとリヒトーの事を見ている目と合ってしまった。

リヒトーは本を開き試しに最初のページの文字を読み上げた。


「あるところにオオミという名前の魔法が使える少女がいました。」


絵本の文章を読み上げて再び吸血花の方を見ると期待に満ちた目でリヒトーを見ていた。続きを読んでほしいという無言の欲求を感じ取ったリヒトーは再び絵本の文字を読み上げる。


「オオミは魔法が使えましたが友達がいません。生まれた時からひとりぼっちでした。」


再び吸血花の方を見ると先ほどと変わらず期待に満ちた目でリヒトーを見ていた。

それを見て観念したリヒトーは月光で明るい場所に行き床に座り込む。


「来い。最後まで読んでやる。」


振り返って吸血花にそう言うと吸血花は嬉しそうに笑い小走りでリヒトーの元に近づきリヒトーの隣に座り絵本を覗き込む。


「友達が欲しいオオミは友達探しの旅に出かける事にしました。」


思っていた以上に近づいて来た吸血花に少し戸惑いながらもリヒトーは絵本を読み上げていく。


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