99包囲
咄嗟に誠は穴から離れた。
さほど意味のある行動ではない。
1回地下を突貫して誠の足元に槍を突き出せた以上、同じことは何度でも行えるはずだ。
ただ、足元が割れた一瞬の、痺れるような恐怖から、誠は距離をとったに過ぎない。
何処なら安全だろうか?
天井なら、槍の動きもみられるし、咄嗟に床に降りることも影の手で素早く逃げることも可能だろうか?
誠が逡巡している間に、ダンサーチームは甲冑男ナイトに接近し、ミオがパンチを連続して放った。
近接戦闘用のミオのパワーパンチは、ナイトをぐらつかせた。
だが、それは高屋の特攻アタックとそれほど違いはない。
やはりナイトを絶命させるには、レディの振り子を体内で爆発させる必要があった。
そのためには、ナイトをしばらく釘付けにし、レディは振り子を放ち、誠はタイミングよくそれを透過しなければならない。
のだが…。
ミオが前線で戦っていると、レディもそれに従うので、迂闊に振り子を放てない。
振り子の分銅の爆発は、もし誠が透過に失敗すれば、周囲を火の海にしてしまうためだ。
ミオも被害を被ることになる。
そうならないためには、誠もうまく戦闘に参加し、ダンサーチームを有利にするように透過や、影の手を使い、タイミングを合わせて最後の分銅透過まで繋げる必要があった。
だが接近すればするほど、足元から槍が飛び出してきたときの恐怖が増加していく。
「誠、心配しないで!
あなたはあたしが守るわ!」
美鳥が叫んだ。
あ…。
誠はいつか、周りが目に入らなくなっていたのだ。
ここには美鳥も、井口もいた。
2人は今は、誠の横について、援護をしてくれていた。
前線の戦況は、ミオと高屋の連携された攻撃で、ナイトの動きは封じられつつあった。
そうだ。
今、僕がちゃんと透過できれば、この戦いは必ず勝てる!
「お願いします!」
叫び、誠はナイトの片足を30センチほど、コンクリートに落とした。
少しだけ落とす、というのも最近覚えた誠の新技だ。
例えば走っている人の片足を落とすと、走っている速度分の負荷が落とした足にかかり、上手くすれば骨折したり、捻挫したりを狙う事が出来る。
影の手で殴る以外、直接攻撃の少ない誠には、これでも大分有効な攻撃だった。
ナイトは大きくバランスを崩し、グシャリと倒れた。
たぶん、あっちが生きている足だったはずだ。
左足は、前に誠が消火器を透過し、重ねた状態で透過を解き、爆発させている。
これで甲冑男は!
と誠が勇んだ瞬間、横の壁が爆発した。
しまった!
誠は戦闘に集中し過ぎていた。
おかしなヘッドギアを付けたカブトたちが、全くの無表情で、壁の穴から誠達を眺めていた。




