100挟撃
最悪のタイミングだった。
可能ならば、ナイトを倒した後で、マッドドクターが強化した影繰りと当たりたかったのだが、これではで左右から挟撃されることになってしまう。
誠は、カブトたちを透過した。
奇妙なヘッドギアを使たカブトたちは、一瞬で、頭だけを地上に出した状態で、コンクリートに埋まった。
「上手いぞ、誠君!」
ミオがナイトに連続パンチを撃ち込みながら、声をかけた。
この隙に、なんとかナイトの体内にレディの分銅を透過させたい!
高屋がナイトの背後の防御シャッターに当たって、ナイトの後頭部を痛打した。
ナイトの右足はまだ、床のコンクリートに埋まったままだ。
「誠、行くぞ!」
レディが叫んだ。
レディの背中に浮かんだ3つの分銅の一つが、鎌首をもたげるように浮き上がり、ナイトに向けて撃ち込まれていく。
だが…。
「何をやっとる!
そんなもの、すぐに出られるだろう、お前たちは!」
マッドドクターが4人が開けた穴の奥から、叱咤した。
すると、その瞬間、分厚いコンクリートの床に、ビキツを音を立ててヒビが入った。
誠は、しかしナイトに集中していた。
この瞬間で、ナイトは殺せるはずだ。
レディの分銅は、ナイトに向かって加速している。
美鳥と、井口が四人に向き直った。
2人は、僅かな時間でもヘッドギアの4人を抑えるつもりだ。
その一瞬。
ナイトの手に持った槍が、レディの分銅を弾いた。
なにっ!
分銅は天井に突き刺さり、真っ赤な炎を吹き上げた。
誠は迷った。
レディとミオを透過で守ることもできる。
だが、炎は、ナイトの体も舐めるだろう。
その瞬間、透過をすれば、殺せないにしても幾何かのダメージを与えることは出来るはずだ。
誠の横では、ダイナマイトでも仕込んでたかのようにコンクリートが爆発し、四人の影繰りが戦場に復帰していた。
井口のカラスが別々の3人に襲い掛かる。
美鳥の蝶も、井口の手から余った円盤使いに蝶を向かわせていた。
ぐらり、ナイトが揺れた。
誠は、ナイトへのダメージを優先したのだ。
ダンサーチームの防御力の高さを信頼しての行動だった。
思ったとおり、ミオとレディは、ソシアルダンスのように、クルリと回転し、ミオの花弁の上を滑って炎を回避していた。
誠は、影の手を伸ばした。
レディの振り子が届くほどの距離ならば、誠の影の手も届く。
影の手がナイトの顔面を殴りつけた瞬間、高屋もナイトのボディに強烈な体当たりを仕掛けていた。
ナイトの至近距離に、1匹の蝶が飛んでいた。
「誠!」
「透過します!」
誠は叫んでいた。
ナイトの顔面に貼り付いた蝶はそのまま甲冑を透過し、中の男に顔面に貼り付いた。
不意に呼吸機能を奪われた男は、弾けるように顔に手を当てた。
だが、次の瞬間には、ナイトの影は消え失せ、ラクビー選手のような屈強な肉体のスーツ姿の男に戻った。
誠達は、四人の影繰りに向き直っていた。
井口のカラスが、1撃で空中で粉砕された。
3羽、同時にだった。




