101戦略
誠達は、青いパステルカラーが無残に打ち砕かれた、コンクリートの壁面に並ぶ4人の男と向き合っていた。
彼らは、誠が首まで埋めた床を一瞬で破壊し、誠達と向き合った。
瞬間、誠は透過を使った。
地下2階から、地下四階に、自分と仲間を落としたのだ。
「うわっ!」
井口が叫ぶ。
不意を突かれた井口は尻餅をついたようだが、誠を含めた他の4人は、おおよそ予想していたようで、スマートに着地が出来た。
「すいません、井口さん、何も言わずに…」
誠は謝るが、ミオが、
「いや、あの場合では仕方が無かった。
あの4人と同時に当たるのは、たぶん甲冑男と当たるよりも厳しいからな」
ミオは甲冑男ナイトと戦った手応えを思い起こし、唸っていた。
防御と腕力に特化した影繰り、とはいえ、あそこまでミオのパンチが効かない奴も珍しかった。
しかもレディの分銅を、槍で突いて逸らす、などかなりのテクニシャンでもあった。
「しかし、あの甲冑男が死んだだけでも、まだ我々に利がある、とは言えるだろう」
「それなんですが…」
誠は眉をひそめる。
「あの銃使いとノコギリ使いを美鳥さんが蝶で覆うのは、僕も目視しているんです。
でも、彼らは生きていた…」
「甲冑男が生きている、と言うのか!」
ミオは愕然とした。
なんだ、このゾンビの群れを相手にしているような感覚は…。
ハラり、と天井から埃が落ちてくる。
誠は上を見上げ、
「彼らは、バラバラに分かれて行動を開始しました」
「はっ、なんだそれは!
俺たちが一対多で襲っても、別に問題ない、とでも言いたいのか!」
レディがキレた。
「そんでも、一人ぃ時間取られてたら、別の奴っちゃ何するんやろね?」
高屋が唸る。
「待って、
そもそも彼らの目的は起爆装置と、そしてコンピュータ-に保管されている情報でしょ?」
美鳥の言葉に、あっ、と誠は気が付いた。
「それらは、永田さんたち指令室に接触すれば、自ずと判ることです」
「本部を狙っているのか、確か、あそこには永田さんを含めて3人しか影繰りがいない、って言っていたっけ」
井口が思い出す。
えっ、と、とレディは、
「永田さんと、後は佐藤副長が影繰りだよな?
もう一人は?」
ハァ、と美鳥は溜息をつく。
「吉岡先生でしょうね」
誠は、誠に影の治療を教えてくれた吉岡先生の香水の香りを思い出した。
「危ないですね」
「あ、お前知らないのか。
吉岡先生は、人間を治すのと同じくらい、壊すのも得意な鋼鉄の女なんだよ」
レディは面白そうにクククと笑った。
「連中、うっかり医療棟に迷い込んだりしたら、それで壊滅もありうるぜ」
「あなたと同じよ。
脳の動脈を塞げば、人は気絶する。
先生はお医者さんだから、そんな人間の体の構造は無尽蔵に知り尽くしているのよ。
どんなに体を強化しても、先生にかかれば秒殺されるわ」
誠達は視線を交わした。
「つまり医療棟は先生に任せればいいわけだから…」
レディが言った。
「…手近かなところから、一人づつ潰していくか」




