88目的
「…ちょっと正面から行き過ぎたんじゃないのか…」
井口が困惑して呟いた。
目の前には、フリスビーのような影の円盤を5つ浮かべた白人男と、銃を両手に構えたロン毛男が、殺気を吹き上げて誠たちを睨んでいた。
「甲冑男は本当に恐ろしい影繰りでした。
でも、この2人は、それほどには見えません」
誠は、自分がスラスラと強気な発言をしてしまうのが不思議だった。
本当に、妖怪でもついているんじゃないだろうな…。
「おばちゃん、鉄砲とか嫌いやねん」
「三人の長距離攻撃を同時に相手にするのは難しいわよ」
美鳥も唸る。
「大丈夫…。
そうはなりません…」
誠は唸るように言い…。
喋りながら、透過で落ちた。
誠達が落ちたのは、地下3階だった。
不意打ちだったが、全員影を纏っているので、その程度でダメージはない。
同時に、レディだけが3階に落ちていた。
「やると思ったぜ、誠」
レディが苦笑している。
「あのままではレディさんが、前と後ろに敵を抱えてしまいますから」
レディはシリアスな表情で、
「俺を信用するのかよ?」
「前から、ずっと信用していましたよ」
レディは、鋭く誠を、ぐい、と睨んでから、
「良かった。
ミオを助けてくれたんだな」
言って分銅を引っ込めた。
ミオは、深く安心して溜め息を漏らした。
「レディ、帰ってきてくれたんだね…」
レディ、というか少年姿の春川順平は、へへへ、と笑い、
「俺は最初からマッドドクターの嘘が判っていたんだ。
と、同時にドクターに操られている奴らも薄っすらと判った。
カブトも、完全にドクターに操られていた」
「マッドドクターは、本当にダメージを受けていたの?」
美鳥が聞いた。
レディが、逆に聞いてきた。
「いったい、お前ら何をしたんだ?
ドクターは痙攣しながら倒れて、今はちょっと動けないぐらいにバテてるぜ」
「人質の頭に入っていたマッドドクターの影を消したんです」
誠の返答に、レディは驚愕する。
「体の中に、マッドドクターの影が入っていたのか!
ただの催眠術だと思ってたら…」
ぞ、と鳥肌が立ったようで、
「俺は大丈夫なのか?」
「おそらくレディさんは、防護壁を壊す段階で催眠術は解けていると思うのですが…」
誠の横から、ミオが素早くレディの顔にフラッシュを焚いた。
頭上から、微かな叫びが聞こえてくる。
「この基地、意外と防音状態が悪いようだけど、本当に核シェルターの機能なんてあるのかしら」
美鳥は訝った。
「なんだ?
今のが、マッドドクターを苦しめた攻撃なのか?」
誠は、催眠術の原理をレディに教えた。
「人の心に中に入り込むなんて胸糞悪い影能力だな…」
レディは気味悪そうに、自分の腕を撫でた。
「なんやねん、こんなんなるなら緊張して損したわ。
先、教えてーな」
高屋は、少し怒っていた。
「あの場合仕方なかったんです。
皆さん、本気で戦うつもりだったから上手く騙せたんです」
まぁ、そうだろうな…、と井口も苦笑する。
高屋も、
「こんなら、もう、こっちのもんやね。
勝ったも同然や」
さっきまで怒っていたのに、もうニコニコと笑うが、レディが、
「それが、そうでもないんだよ。
奴らは奥の手を持っているんだ。
ムーンライト号の爆弾の起爆装置は、ドクターが持っているんだ」
レディの言葉に、全員が息を呑んだ。
「じゃあ、アクトレス教官たちが海上にいるうちに、爆弾を起動させると!」
誠は叫んだ。
「たぶんな。
ドクターたちが本部に入ったのは、蒼井聡の救出なんかが目的じゃない。
ここなら、爆弾を破裂させても安全だからだ」
来週は予定があって連載できないので、次の掲載は20日(土)になります。
すみません。




