87決戦
誠達がいるのは、甲冑男に追われて逃げた先だった。
1枚の防御シャッターを透過した先は、直線の長い廊下だ。
みな甲冑男に、防御シャッターをこじ開けられてしまったのだ。
誠達は、その1枚1枚のシャッターを下ろしながら、マッドドクターたちがいる地下1階と二階をぶち抜いた穴に向かって進んだ。
もし、再度逃げる羽目になった場合、それが逃走を助けてくれるはずだ。
僕にできるんだろうか…。
誠は、胸にもたげてくる不安と戦っていた。
確かに、あの強い甲冑男を倒した。
だけど、僕の影はレディさんみたいに直接、相手を破壊できる力じゃない…。
レディは一瞬で相手を殺せる。
誠も、普通の状態ならば、一瞬で相手を落とせるはずなのだが、残念ながらここは内調本部だった。
落とせば、マザーコンピューターまで落ちてしまう場所だ。
だから、不用意に敵を落とすことが、今の誠にはできない。
そして、落とせない誠の戦闘能力は、敵味方合わせた中でも、おそらく最弱だろう。
気を張って、影の体を自分の肉体に貼り付けてはいるが、そうしてさえ美鳥よりも、高屋よりも弱い。
なのになぜだか、誠は、まるで戦いのエースのように自分が振舞ってしまっていることに、自分で一番、戸惑っていた。
やがて、シャッターが閉まっているエリアに到達した。
誠が透過して、マッドドクターたちから逃げたルートだ。
「この先にレディはいるのか…」
ミオさんは、不安げに言った。
「あと多分、シャッター10枚と言うところでしょう…」
「どんな様子なん?」
「一見すると、全員、上の階で、互いに距離を取って休んでいるように見えます。
レディさんは、カブトの車椅子の近くで、何か話しています。白人の男は、老人の世話をしているようです」
「連中が何で動かないのか、推理できないのか小田切?」
井口の問いに誠は。
「無理ですね。
ただ…」
言葉を一端切って、
「防御シャッターを下ろして進んだ音が、聴こえていないとは考えられません」
「もーちょっと、油ァ差しといて欲しいなぁ、ほんま」
「まぁ、防御が目的なんで、消音性とかは考慮されていないだろうからな…」
ミオは苦笑した。
「つまり、あたしたちを待ち構えている、ってこと?」
美鳥は、既に船上でドールマスターと戦った時の顔になっていた。
「だからかしら。
異様に静かね」
美鳥の蝶は、戦闘でも高い性能を持っているが、様々な感知センサーを持った探索にも優れた影だった。
「行きます」
誠は、呟くように言い、5人はシャッターを透過して、レディが大穴を開けた地下2階の部屋に侵入した。
誠達が部屋に入ったと同時に、二人の男が軽々と穴を飛び降りてきた。
金髪に近い明るい茶髪の白人男性と、ロン毛の日本人の2人だった。
遅れて、レディも降りてくる。
ミオはファイティングポーズをとり、ミオを中心として、4つの影の花弁が花開いた。
この花弁を回転させながら、ミオはボクシングスタイルで、ジリジリと敵に向かっていく。
美鳥も、無数の蝶を舞わせた。
頭上には、蝶のミサイルも浮かべている。
高屋も、防御シャッターを押したときのように、一回り大きくなっていた。
井口は、頭と両肩に巨大な3羽のカラスを止まらせる。
一方、白人男性は、フリスビーにも似た回転円盤を頭上に浮かべていた。
日本人らしいロン毛男は、片手に大口径のハンドガンを、もう片手には軍事用自動小銃、マシンガンを構えていた。
その2人の背後で、レディも分銅を浮かべる。




