84甲冑男
永田が電話をかけると当時に、誠は本部地下に戻った。
と、同時に美鳥と高屋に押し潰される形で、廊下に倒れた。
「なっ、なんです?」
びっくりして誠が問うと、高屋は誠に抱きついた。
「わぁ、ぼん良かったわぁ、帰ってきてくれて!
えらいことになってんねん!」
高屋に抱き締められたままの誠に、やれやれ、と起き上がった美鳥が説明した。
「殺せていなかったのよ、あの甲冑男。
シャッターを押し開けて追ってきているの」
「ええっ、地下に埋めたのに死なないって、どういうことです?
不死身なんでしょうか?」
「判らない。
ただ現実にピンピンしていて、追ってきているのは事実よ」
「みんな急いで!」
井口は悲鳴を上げるように急かした。
「すぐ、そこのシャッターを開けるよ!」
井口はセキュリティカードと暗証番号で防火シャッターの扉を開け、逃げていたようだ。
立ち上がった誠は、不思議なものを見た。
きっちりと閉まった防火シャッターの下から、四本の指のような、平面の影が現れた。
サイズから見て、男の指のようだ。
そして、ミリッ、ミリッ、と下からシャッターを押し上げようとしている。
「こ、これが甲冑男の新しい力ですか?」
「そやねん!」
誠は慌てて、シャッターに駆け寄り、影の手を使って上からシャッターを押さえつける。
だが、押し上げる力は強烈だった。
「おばちゃんもやったるで!」
高屋もシャッターの継ぎ目に手をかけると、体重をかけ、同時に、ぶん、と膨れた。
体重も増加する影能力のようで、シャッターがギシリと軋んだ。
美鳥は蝶を出して、シャッターの床面に蝶をどんどん貼っていった。
綱引きにも似た力比べがしばらく続いたが、突然、シャッターを開けようとする力が途絶えた。
「諦めたんかなぁ?」
ハァ、と大きく息を吐き出して、元のサイズに戻りながら、高屋は言った。
「いや、たぶん駆け引きです。
また、きっと開けようとしますよ!」
誠はシャッターを睨んだ。
「ヤバいやん、早よ逃げな!」
誠は、廊下に設置されていた消火器を取り出した。
「ちょっと永田さんに教わった事があるんです。
成功するか判らないけど、付き合ってもらえますか?」
言っている傍から、またキシリと、シャッターを開ける力が鋼鉄十センチの鉄板の塊であるシャッターを軋ませた。
「高屋さん、もう一度、重くなって下さい」
わ、わかった、と言って高屋はシャッターを抑えた。しかし、今度は誠の影の手の力がないために少しづつシャッターは開いていった。
「手を放してください」
高屋が手を離すと、凄い勢いでシャッターが押し上げられた。
誠は、真正面から甲冑男と相対していた。
手に持った消火器を、甲冑の足に透過した。
そして、足と消火器を重ねたまま、透過を解いた。
バンッ!
低い破裂音が周囲に響いた。
男の片足が、太ももから、破裂していた。
男は、甲冑姿のまま、どさり、と倒れた。
「やったわぁ!」
高屋が叫んだ。
誠は、甲冑男の前に蹲った。
「誠、何をやってるの、井口君がシャッタ-を開けてるうちに、早く逃げるのよ!」
「今、男の止血をしています。
今日、吉岡先生に習ったばかりだから、練習しておこうと思って」
「決心をしなさい、と言ったでしょう!
治療してどうするのよ!
そんな事をすれば、後で自分の首を絞めるのよ」
「すいません。
練習に格好の傷だったので」
言うが。
甲冑男の腕が動いた。
誠の喉に、影のナイフが突き刺さる。
「ぼん!」
高屋が叫んだ。
「大丈夫です。
透過しています」
誠は、男の顔に手を伸ばす。
唐突に、男が昏倒した。
甲冑が消え、スーツ姿に戻っている。
「何をしたの?」
「窒息させたんです」
言って誠は、動かない男をコンクリートの中に埋め込んだ。
「また出てくるん違う?」
影が消えていますからね、これで、また現れたら本当に不死身としか思えませんね…」
誠達は井口の開けたシャッターへ歩いた。
「そういえば誠、宝田さんたちと入れ替わるとき、何か言おうとしていなかった?」
誠が、ああ、と話さうとしたとき、電話が鳴った。




