81始動
内調の地下2階も、1階と同じように数十メートルごとに防御シャッターが下りていた。
構造的には普通のビルの防火シャッターと同じだが、鋼鉄製で、厚さは10センチに及ぶ。
内調は核シェルターになり得る構造をしていた。
誠達は幾つかのシャッターを透過して、立ち止まった。
「この上に5人がいます」
「全く動いていないの?」
美鳥の言葉に頷き、
「閉鎖空間で盛大に火を燃やすわけにはいきませんから」
「でも、彼らの目的は蒼井聡の救出か内調コンピューターの情報でしょ?」
「どの道、彼らだけで、蒼井聡の元に行くのは不可能です。
だが、いつまでも本部をこの状態には、内調側もしてはおけない。
ムーンライト号からの影繰りが帰れば、シャッターは開くはずです。
その時を彼らは待っているんですよ。
何しろマッドドクターがいるんですから。
催眠術により、五人が十人になり、ムーンライト号のように、やがて全員がマッドドクターの支配下に置かれてしまうんです」
「えらいこっちゃわ!」
「今のまま、敵を固めていたら、きっとそうなります。
戦闘中、一瞬の隙をついて催眠術にかけられたら、それで終わりですから。
彼らは無理に進む必要はないんです」
「だから俺たちはレディを催眠から引き戻す必要があるのか」
と、井口。
「一人でも敵の数を減らせれば勝機が見えてきます。
マッドドクターが戦わなければならない状況を作れれば、多少はマシでしょう。
しかし、催眠術にかかるのに普通の人も影繰りも変わりはありませんから、1対10でも20でも有利とはいえないかもしれません」
「でも、よー考えたら、ぼんを味方にできれば、とっとと地下まで行けるん違う?」
「そうですよね。
水上バスのときでも、僕を人質に取った時、なぜマットドクターがいなかったのか?
時間的にムーンライト号に行かなければならないにしろ、今、基地に乗り込んでいることを思えば、少し行動がおかしい気がします。
もしかすると、その辺に催眠術の弱点が潜んでいるのかもしれません」
「さっき、あたしたちが鎧男と戦った時も、術をかけるそぶりは見せなかったわね」
「その辺に秘密があるのかもしれない。
例えば、ボールに変身している高屋さんには催眠術が効かない、とか。
術をかけるところを、第三者に見られるのは困る、とか。
光を見せるらしい、と言うところまでは判っていますが、他に何かある、ということでしょうか?
言葉とか?」
美鳥は肩を竦めた。
「推測をいくら重ねても意味はないわ。
まずレディの救出。
そうでしょ」
誠は頷いた。
高屋にスタンバイしてもらい、美鳥は空間内に一定以上の数の蝶を飛ばした。
誠は、影の手を天井に伸ばした。
一瞬の後、レディが天井から姿を見せた。




