78爆弾
勝鬨橋を開橋させた男、山崎は今、ムーンライト号の巨大な機関部にいた。
通常の現代の船ならば、コンピューター制御されているのが普通なのだが、ムーンライト号に関しては電子部品は完全に外されていた。
完璧に、プロが今の状況を計画し、機関部を止められないよう独立稼働させているものらしい。
山崎の他に、機械の専門家として大平がエンジンルームにいた。
彼は山崎の能力とは少し違う、電気を操る影繰りだった。
戦闘は得意ではないが、こういった精密機械の電気の流れを追うことが専門分野で、特に現代の機械は全て電子的制御の全くないシステムは有り得ないので、山崎は毎日引っ張りだこだった。
とはいえ、完璧にコンピューター制御を外されている状況で、大平は門外漢なのだが…。
しかしエンジンルームに不明な電気の流れがあり、それを大平は追っていた。
特に原子爆弾を探す過程で見つかった謎の電子機械。
その謎を解き明かすことが大平の使命だった。
大平の感知能力は、電気の流れを可視化して追っていく。
エンジンルームの照明、換気ファン、トイレの設備…。
大平は几帳面にコンピューターからプリントアウトした図面を見ながら、問題無い物は朱鉛筆で除外していった。
何だ…。
謎の電気の流れが、使途不明の電気機械から、巨大なディーゼルエンジンに、複雑に偽装された配線で流れ込んでいた。
これは…。
山崎は、エンジンを止めようと悪戦苦闘していた。
普通エンジンというものは、車でも船でも同じ、燃焼室での爆発を回転エネルギーに変え、スクリューを回して推進している。
なのでエンジンの回転速度を落としたり、止めたりと言ったことは、艦橋の操舵室から電気的に操作できるのだが、ムーンライト号ではエンジンが完全に独立して動くよう改造されており、しかもエンジンルームからですら、エンジンが止まらないよう細工されていた。
これは、もう燃料を抜くことでしかエンジンは止まらないな…。
早い段階で山崎は見切りをつけ、安全に燃料供給を止めるべく、作業を進めていたのだが…。
「山崎さん!」
大平が叫んだ。
その切迫した言葉に、山崎はエンジンの上から、床に立つ大平を見下ろした。
「これ…、もしかしたら爆弾かもしれません。
しかも…」
大平は周りを見回しながら言った。
エンジンを止めたら、おそらくスイッチが入る仕組みらしい…」
山崎は、えっ、と放心し、屈んでいた姿勢から身を起した。




