77再誕
直線の道をしばらく走り、70度ほど折れ曲がると…。
誠達は息を呑んだ。
コンクリートの通路は再三の爆発に黒々と焼け焦げ、そして…。
厚さ10センチはあるという内調の、鋼鉄の防護シャッターが、ひしゃげて、穴をあけていた。
「あいつ、やっぱ凄ぇな」
同級生の井口は感嘆した。
「ま、確かに破壊力なナンバー1ね」
美鳥は冷淡に言った。
戦ったら自分が勝つ、と思ってるんだろうな…、と誠は推測した。
美鳥はスマホで永田に報告する。
非常シャッターは本部内にも複数設置されているので、それを閉める、と永田は答えたが、通用しないのは永田も判っていた。
「アクトレスたちが、今、そっちに向かっている。
それまで辛抱してくれ」
自分たちは3人を追う、と美鳥は答えて通話を切った。
ほぼ同時に、誠たちの目の前の防御シャッターが、音もなく降りてきた。
「あれ、俺達はどうするの?」
井口は慌てるが、美鳥が、これ、がいるでしょ。
と誠を顎でしゃくった。
誠は苦笑しながら、
「じゃあ透過します」
と第一の壁を透過して進んだ。
「音がしないわね。
ずいぶん先にいてしまったのかしら?」
美鳥の問いに誠は、
「いえ、3つ先のシャッターの中に閉じ込められています。
でも…。
あれ、おかしいな、マッドドクターたちの他に今まで見なかった2人が合流しているようです」
「え、他に透過できる奴がいるのか?」
井口の言葉に高屋が、
「内調内部の人間は、通路間を移動できる道があんねん。
たぶん、内部に協力者がおったんやで」
1か月前に入ったばかりの誠だけでなく、練習生の美鳥や井口には知らされていない秘密が、内調にはまだあるらしい。
「しかし、新手2人が影繰りだと、ちょっと手ごわいんじゃないか」
井口の言葉に、誠は考える。
「何とか攪乱して、出来れば五人を別々にしたいですよね」
「誠なら、上手くやれば、とか考えているわね?
無理よ、未知の影繰りが二人も混ざっていたら」
「そうそう。
影繰りは、相手の能力を知らない、っていうのが一番怖いんだぜ。
あの甲冑男だって、誠の能力を知っていたから、落ちずに耐えたんだ。
手の内が判っていればやりようはある。
初見は、それだけで1ランク上と見積もらなきゃならないのさ」
美鳥と井口の言葉に、なおも誠は考えながら、
「しかし、敵の分断は、どうしても必要ですよ?
1人はレディさんで、1人は戦争経験者のマッドドクターなんですから」
「さっきの男も強かったなぁ、あんなん5人もいたら手ぇ出しよーもないわ。
みんなでやったから勝てたんやで。
作戦立てて1人づつ潰さんと、とっても難儀やで」
高屋の言葉に誠が頷く。
「僕たちは1階下に落ちるというのはどうでしょう。
そして、まずレディさんを落とすんです。
もし説得できれば、だいぶこちらが有利になります」
美鳥は目を伏せて、考えていた。
俯くと、美鳥の睫毛は意外と長いので、誠は驚き、ドキリとした。
美鳥は目を開き、
「いいわ。
それなら何とかなるかもしれない。
でも一つ聞くけど、レディと誠は、相性が悪いんじゃないの?」
誠は頷く。
「レディさんを首まで落としたとしても、問題はあの分銅ですから、僕一人ではとても対打ちできないでしょう」
「あらら。
ぼんがそれじゃあ、どうするの?」
「説得できなかったら、その時は迷わず殺すのよ。
ミオさんの事なんかは後で考えればいいの。
まぁ、あなたに戸惑いが見えたら、あたしの蝶であの子を殺すけど」
美鳥の言葉に、誠も重く頷いた。
コンクリートの通路に、ビシッ、と亀裂音がこだまして、甲冑の手が、穴から突き出てきた。
甲冑内には、30分ほどは活動できるだけの酸素も蓄えられているのだ。
甲冑男は、水中行動も、実は得意だった。




