76進撃
高屋さんは、横幅車二台分、高さは大型クレーン車も通れるコンクリート剥き出しの薄暗い通路を、銃器でスーパーボールを撃ち出したかのような速度で上下左右に弾みながら、甲冑男に向かっていく。
通路が全面のコンクリートで、ほぼ真四角の一直線通路であることが高屋の特攻の勢いを増していた。
甲冑男は戸惑ったように高屋ボールの方向を特定しようとするが、高屋ボールは弾むたびに加速していくようで、男も剣を向ける向きに迷うようだ。
「ミサイルを撃つわ!」
美鳥は、走りながら蝶をミサイルにまとめていく。
走りながら!
と、誠は驚いた。
運動の苦手な誠は、そんなことは、とても思いもよらなかった。
止まって影を使うか、走るか、2択しかないのだ、と漠然と今までは思っていた。
そうか…。
これから僕も、走りながら落とすとか、色々練習しないといけないんだな…。
今、初めて誠は気が付いた。
井口も普通に、走りながら甲冑男の死角から、大烏を襲い掛からせ、男の行動を妨害していた。
甲冑男は煩そうに烏を払い、高屋ボールに剣を振ろうとした。
が…。
高屋は、突然、落ちた。
任意の変化球も操れるらしい。
甲冑男は盛大に空振りをし、そこに美鳥のミサイルから炸裂した蝶が、男の顔を塞いでいく。
誠は、走る速度を落としながら、何とか透過を甲冑男の周囲5メートルに使った。
ドン、と男はバランスを崩したように体勢を崩しながら落ちていく。
透過能力は、人を落とすことに使う場合、落とし穴に非常に似ている。
使われた相手は、足場を突然奪われ、無様な態勢で地下に崩れ落ちていく。
一瞬後、高屋はポン、と空中で一回転して、ふくよかな体で滑らかに地面に降りた。
「やったで!」
快哉を高屋は叫んだ。
誠は地面を見つめている。
「誠、どうしたの?」
「あの甲冑男、地下6メートルで、まだ引っかかっているんです。
どうも、まだ生きているようです」
「心配いらないんじゃないのか?
地下6メートルだろ?
内調の構造物はそこら辺のビルと違って核シェルターと同じくらいの耐久力があるはずだ。
幾ら力持ちでも、あの甲冑男じゃあ、6メートルを破って外に出るのは不可能さ」
と井口。
「そやで、今は先に行かんと、レデェちゃん、先に進んどるんやで!」
「そうね。
どのみち、あなたが落とせない敵を、あたしたちもどうしようもないわ。
先に進みましょ!」
美鳥の声で、全員が走り出した。
全力で走られると、高屋さんまで、誠より足が速かった。
誠は、ただ必死に3人の背中を見ながら走っていた。




