↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
PR
65/166

65戦い

ああ…、良かった…。

ドールマスターに頭を撃たれて僕は死ぬのか、と思ったが、吉井一曹が来てくれたなら、もう大丈夫だ…。


誠は吐息を漏らした。


「よしぃ…しゃ…ん。

ドョゥリュ…、マシュ…タャァ…は…?」


「大丈夫だ、小田切君。

今、俺が殺したところだから」


吉井一曹は誠を抱き上げ、優しげに笑った。


ドールマスターが死んだ…。


それは素晴らしいニュースだった。

これで問題は全て解決する。


原子爆弾も爆発せず…、仲間は皆無事で、死んだはずの吉井一曹も…。


誠は、考え込んだ…。

深く思考しようとしても、頭に靄がかかったようで、上手く考えられない。

なにかが、おかしいと思ったのだが、それが何なのか、に思い至らない…。

美鳥さんが、何か、言っていたような…。


「よしぃ…しゃん…、きゃら…だが…」


「心配するな小田切君。

それは単なる揮発性麻酔薬だ。

すぐに覚めるさ」


そうか、やはり神経ガスなどではなかった。


誠は動かない指先を、カーペットに擦り付けた。

皮膚の、感覚がない…。

なるほど、麻酔で間違いはないようだ…。


足は動かそうとするとグラグラと震えるだけで、役に立たない。

口からは涎が止まらない。

誠は、必死に考えをまとめようとしていた。


「よしぃ…しゃん…、げぇんちぃ…、ばぁくだ…ぁんはぁ…」


「ああ。

小田切君。

それはこれだろ」


吉井一曹は、ポケットからジッポライターほどの大きさのスイッチを取り出した。


「しょ…う…でぃしゅ…かぁ…」


誠は涎を流しながら、スイッチを見つめた。


誠は、体の中で、影の手を動かそうとする。


ちら…。


一瞬、影が集まった。


誠の体内から飛び出した影は、カメレオンの舌のように吉井一曹の腕に巻き付き、スイッチを奪った。


「おい!

何をする、小田切!」


吉井一曹が誠から起爆スイッチを取り返そうとするが、誠はスイッチを口の中に入れ、必死に歯をかみ合わせた。


「ふざけるなよ、この小僧!」


吉井一曹が叫んだ瞬間。


「よくやったわ、誠」


明るいはずのキッズルーム前の空間が、不意に、闇に沈んだ。

同時に、女性下着コーナーの壁に目立たないよう隠されていた職員専用の扉が勢いよく開き、体にいくつかの擦過傷を作った美鳥が、何千羽もの蝶と共に姿を現した。


「川瀬か。

そんなに傷だらけになってどうした」


美鳥は、ふっ、と笑った。


「あなたにやられて、いい加減頭にきているのよ、ドールマスター」


吉井一曹が何か言うよりも早く、大量の影の蝶が吉井一曹に襲い掛かり、真っ黒いブロンズ像のように吉井一曹を固めてしまった。


ゴトン、と音を立てて倒れるドールマスターを誠は、まだ涎を垂らし歯噛みしながら、見ていた。


美鳥さんは、吉井一曹が死んでいる、と言っていた。

美鳥さんの蝶は、圧倒的な量と様々な感知能力を併せ持った最強の情報収集能力を持つ影だ。

何千羽の蝶は、普通に視力を美鳥に送るだけではなく、聴覚、嗅覚、触覚までも美鳥に届け、また熱を感知したり、音波で距離を感知したり、といった特殊な能力まで持ち合わせているのだ。

その美鳥が間違う訳はなかった。


そのため誠は故意に、体が、とだけ吉井に告げた。

あえて、はっきりした症状は何も語らなかった。


だが吉井は、揮発性麻酔薬、という、見てきたような返答をした。

まさに仕掛けた本人にしか判らない情報だ。


誠は、どこにドールマスターがいるのか、理解した。

その上で、美鳥がドールマスターに戦いを挑まない理由を探した。


やや危険な言葉、ではあったが、ドールマスターは油断をしていた。

原子爆弾は、と誠が問うと、あっさり起爆装置を取り出して見せたのだ。


美鳥がドールマスターを殺した、と報告をする足元で、誠は、涎を垂らしながら、口から起爆スイッチを吐き出していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。