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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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61/166

61決断

本当にA11ポイントに向かうのは、美鳥さんの体制が整ってからだ。

だけど、だからと言って止まっていれば、格好の狙撃チャンスを敵に与えてしまう…。


だから誠は、動き続けなければならなかった。

無論、その間に一体でも敵の人形を減らす必要はある。


だけど…。


誠は逡巡していた。


ポップコーンまで人形として操れる影繰り相手に、果たして人形の数を減らすことが、どれほどの意味を持つのだろう。


ドールマスターは、おそらく、そうする気になれば、目の前の、謎のバットまがいの棒を構え、多分来る球を打とうと待っているらしいマネキンも、自分の人形として操れるはずだ。

可動範囲や、どれだけ滑らかに動けるのか、などは、事前に手を加えているか、とか重さやバランスの問題などもあるのだろうが、誠という、未熟な影繰りを1人、この場で殺せばいいのであれば、それはさして問題になるまい。

ボーガンの矢も跳ね返せない、素人同然の影繰りなのだ。


誠がドールマスターだったならば、たぶん不意を衝いて、同時に攻撃を仕掛ける。

それを凌げたとしても、きっとボロを出すと思うので、波状攻撃を繰り返せば、おそらく。

そう何分も持たずに、この餓鬼は臨終になるはずだ。


ドールマスターが、それをしないのは、ひとえに他の影繰りがいるためだった。

57人の影繰りが乗り込んでおり、吉井一曹は殺されている、とのことだが、まだ他の影繰りが残っているので、誠一人を集中攻撃する、という訳にはいかないのだ。


だがそれも、美鳥と誠がドールマスターに接近している状況では、優先順位が変わってくる。

まず己の身の安全を図るのは、誠たちも、ドールマスターも同じことだからだ。


すると、ドールマスターは本気で僕の抹殺にかかる…、ってことかな?


誠は考えた。


だけど、もしかすると美鳥さんを倒すことを優先させるかもしれない。


誠は空中で胡坐をかいたまま、ゆっくりスポーツウェアを着たマネキンたちの方に進んでいく。


つまり、僕は最初に考えたように、守りがボロボロなのは見抜かれてしまったから、いつでも殺せる、と考えておかしくない。

そして美鳥さんの蝶が、ドールマスターの居場所を唯一感知している、のは今までの流れで推察できているとすると。


僕が、ただ位相的に近い位置にいても、あまり、そこに実は意味はない。

A11の場所も何も知らないのだから。


壁一つ挟んでいただけで、ドールマスターにしてみれば、小田切誠の脅威は、ほぼ無きに等しいはずだ。

真に恐るべき敵なのは、実戦経験も豊富な川瀬美鳥だった。


だから僕にできることがあるとすれば…。


と、誠は、つい夢中になり、親指の爪をカリッ、と噛んだ。


ドールマスターを焦らせるような、こいつも判っているのかもしれない、と錯覚させるような行動をとればいい。


だが…。


どうすれば、本当は何も判っていないことを、知ってる風に振舞えるんだ?


誠は考え、結論付けた。


そんな演技力は僕にはない。

残念ながら、僕に、いわゆるトレーディングカードゲームで言うところの、ブラフ、を使うのは無理だ。


だから…。

出来ることは、本当に知ることだった。


僕だって壁の透視はできるんだ。

そして、ドールマスターが先にいることも、場所は近いことも知っている。


美鳥さんが言うのを、待ってるんじゃいけない!


誠も敵の居場所を発見するのだ。

そうすれば、多分…。


演技じゃなく、本当に知ったのならば。

それはドールマスターも気づくだろうし…。


唯一、ドールマスターという、57人を同時に相手にできるようなエリート影繰りを、影も満足に纏えない素人の僕が、ヒヤリ、とさせられるはずだ。


誠は、マネキン人形の先、キッズルームと書かれた、幼児用遊具のたくさん並んでいる部屋の壁を、透視した。


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