59共闘
誠は囁いた。
「美鳥さん…?」
すぐに返答があった。
「何かしら。
今、こっちも忙しいのよ…」
微かに息を乱しているのが、声でも分かった。
誠は、コンピューター制御の人形と黒いボールの関係を語った。
美鳥は、少し黙っていたが…。
「まぁ、仕方ないわね。
名探偵鬼太郎君の名推理に乗ってあげてもいいわ。
それで、どうすればいいの?」
「美鳥さんの蝶で、天井、床下などの黒いボールを発見し、教えてください。
僕が見つけるのは限界があります。
そして、僕が落とすので誘導してください」
美鳥は再び、微かに黙考し、判ったわ、と語った。
「でも、こっちも身を守るのが先決だから、時間がかかるわね。
まぁ、期待しないで待っていて頂戴」
誠の考えが正解だとして、作戦が動き出すのは、確かに十分先か、二十分先か判らなかった。
とにかく、今は戦わなければならないが、敵もそろそろゲームコーナーの時のようなジョーク交じりの攻撃はしなくなっていた。
実弾を撃ってくる。
そして、それは誠の弱点を的確に突いていると言えた。
つまり、格闘戦用の分厚い影を纏っている近接戦闘タイプの影繰りならば、不意に銃で撃たれても、致命傷は負わない。
そもそも、接近戦では常に不意打ちが当たり前なので、戦闘中は常に鎧を着ているようなものだからだ。
だが誠は、中距離戦闘型で、およそ25メートルまでの相手を透過で落とすか、もっと近い敵は影の手や足で殴る影繰りだ。
影繰りになって1か月ということもあり、まだ、それほど堅牢な影を常時体に維持してはいない。
何とか意識して纏っていたつもりだったが、あっさりボーガンに撃たれてしまった。
あの程度の攻撃を弾けないのが、ドールマスターに知られてしまったわけだ…。
同然、弱点はあの時に既に露呈していた。
誠は、才能はあるかもしれないが未熟な餓鬼に過ぎず、影を纏うことも満足にできていない、ということだ。
銃を撃たれたら、到底防げないだろう。
だからドールマスターは、誠の周囲に銃を撃つ人形を集めているのだ。
これからは、常に不意打ちで背中から銃を撃ってくるだろう。
そして、それに注意が傾けば…。
前からいるような、早く動ける人形が、銃を警戒しているど素人の背後を襲う。
ドールマスターは、この広い豪華客船全体を射程に収める、超長射程の影繰りだった。
離れていても、むろん強いが…。
接近したら、能力が強まったり、正確性を増す可能性もあった。
誠は考えた。
敵のいる方向だけは判っている。
つまり、前方だ。
だが接近すれば、敵は強くなる可能性がある。
しかし、この場に留まっていても、敵は銃器を誠に集めてくるだろう。
動けば、少なくとも、あの三輪車のような、射程を合わせる時間のかかる長砲は防げるはずだった。
前進はすべきだ。
誠は思った。
だが、それは射程をはぐらかすための動きであり、接近するのは美鳥さんの声を待ってからだ。
なぜなら、PC制御の人形が使用不能になれば、幾分僕たちが有利になるからだ。
このファションフロアを動き回り、敵の標準を外しながら、僕は1台でも多くの人形を始末し、ドールマスターを追い詰めるんだ!
思うと、誠は、胡坐をかいたままで、もう一度、床に潜った。
下からの俯瞰で眺めれば、少なくとも動いている人形などがあれば、すぐに判る。
そして素早くフロアに出たら、早く動いて天井を探る。
自分の目でも、あの黒い奴を、一個でも二個でも落としてやろう。
天井に目を走らせた誠の至近距離で、棚に置かれた金属製の置物が、突然誠に飛びかかってきた。




