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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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53/166

53目

誠の持つ透過能力は、防御にも攻撃にも使える便利な力だったが、ただ一つ。


不意打ちには弱い。


まぁ、どんな人間の、どんな能力でも不意打ちには弱いのだろうが、誠は戦闘の素人であり、しかも運動神経が悪いこともあり、そもそも反射神経もとても残念な数値にとどまっていた。

小学生の頃から、他の子が好んで遊ぶような反射神経系のコンピューターゲームすら、ろくに遊べなかった。


周りに敵がいるのは判っていたのに!


しかし、体が反応できない、口惜しいが、それが誠の現実だった。


だから、出来るだけは頭で考えることで不利を補おうとしていた。

そう、誠は常に、出来るだけ多くの事を考えるように、この1か月を過ごしていて、それが良い方向に出てはいた。


今日、レディさんの行動を推測したり出来たのは、その賜物だった。


誠は、肩に矢が刺さったまま、影の手を使って倒れた体を引き摺った。


自分が怪我を負った時の事も、予め、考えていた。


怪我や痛みに我を忘れないこと。

敵が攻撃してきたら透過で、とにかく交わす。


羽根の代わりに鋭いナイフを胴体から突き出した鶏が、凄い速度で誠に突っ込んでくる。


そう…。


誠が怪我を負えば、その瞬間を狙って、敵は攻撃してくるに決まっている。

それは、とにかく全て透過するのだ。


鳥を、透過してやり過ごした。

すぐに再攻撃してくるだろうが、まず治療が先決だ。


これも、一通り考えている。


まず銃弾や矢、体内に入ったものは、透過して体外に出す。

それが一番、傷口を傷めずに済む方法だ。

だが、最小限、受けてしまった傷は、元に戻すことは誠には出来ない。

出血も止めなければならない。

これは、止血と感染症の防止を、最速で行い、被害を最小限に留める。


まず止血。

これは影の手という、便利な影を誠は持っているので、影の手を使って圧迫止血を行う。

影の手は、実は手足で四本、と決まっているわけではない。

1か月前の戦闘時、鴉に変身したアクトレス教官をコンクリートに封じるとき、誠は何十という手を同時に出していた。


止血では、これに意味が出てくる。

出血とは、破壊された血管から、血液と言う体液が体外へ流れ出てしまう肉体の疾患だ。

だから傷ついた血管を、1つ1つ小さな影の手を使って圧迫止血すれば、大きな失血は防ぐことが出来るはず、と予め誠は考えていた。


自分の体の中を透視しながら、血管を次々と止血していく。


誠は、躊躇わず、自分のブレザーを透過して落とし、Yシャツも透過した。

自分のYシャツで肩の傷の周りを縛り、感染症の防止に努める。


肩口なので、あまり目視は出来ないが、出血は最小限に抑えられているようだ。


そもそも僕は、殴ったり蹴ったりするタイプではないし、やっても決して強くもなく、運動神経も、影の体と重なってさえ、いいとこ平均点を稼ぐので精一杯だ。


だから、傷も負ったことだし、もう身体は動かさない。

前から、そう決めていた。


誠は、座り込んだまま周囲を見回した。


僕は、僕にできる戦いをすればいいんだ。


鶏の足音は聴こえていた。

速度を失わないよう、ブースを回って再攻撃を企図しているようだ。

頭上で、微かな鉄骨の軋みが聴こえた。


瞬間、誠は、透過で身を守りながら、影の手で数メートル、横にスライドしていた。


ハンマーが落ちてくる。


その一瞬で、誠は、天井についた傘のような足ごと、ハンマーを海底の底に落とした。


あと三体!


自分の視野が限られているのが、恨めしい。

運動神経や勘が鈍い分だけ、せめて視野が広ければ、もうちょっと戦えるのに!

影の手や足はあるのだから、影の目、とか、作れないものだろうか?


誠は、無数の影の手で必死に止血をしながら、周囲に気を配り、嘆いた。

影の手や足がある上に、影の体や目が、もっと言えば耳とかもあったら、僕の運動神経でも、まだ、もうちょっとは戦えるはずなのに…!


せめて美鳥さんの足を引っ張らないぐらいに…!


鶏が、突進してきていた。


ドールマスターは、決着をつけに来るはずだった。

ゾンビの足と、おそらく、最初に見た時、シルエットでゾンビの上半身になっていた、あのハンマーを海底に沈めてやった以上、これ以上の損耗はドールマスターの敗戦を決定づけるはずだ。

だから…。


鶏、幼児、第三の長射程人形の三体は、誠が対応できないよう、一気に攻めてくるはずだった。


影の目があれば…。


誠が焦って自分の心に叫んだ時。


誠の後頭部に、大きな1つ目が、縦に髪の毛を割るように、ぎょろ、と開いた。


同時に誠は、透視を使って、幾つかのブースの先を見ていた。


あ…。


あれが長射程人形か…。


それは、幼児の乗る三輪車に、ライフル銃を設置したような、特殊なマシンだった。

鳥、ボーガンの幼児、三輪車は、同時に誠に攻撃を開始していた。

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