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誠の動きを知る、至極簡単な方法に誠は気が付いた。
真上から誠をマークする、ことだ。
このゲーム販売ブースの天井は、見上げてみると恐ろしく高かった。
5メートル? 目測量では正確には判らないが、天井はゴミゴミと換気ダクトや、結束バンドに巻かれたカラフルな電線の束が網の目のように広がっていたりする、鉄骨と工事用足場材に近い鉄柱、それに網目のような足場と思われる鉄板が交差した、天井板を取り払った構造だった。
そこに、まるで蜘蛛か何かのように、べったりと巨大な人形らしきものが貼り付き、誠の動きに合わせて、ゆっくりと歩行していた。
ひっくり返した傘のように、骨組みに近い細い足が十何本か、天井を捕え、じりじりと動いていく。
そして、その傘の中心に、あの馬鹿げたハンマーが取り付けられている。
どんな剛力でハンマーを操っているのかと思ったが、そうではない。
ただ、頭の上から落ちてくるのだ。
この人形を避けるのは、訳はない。
走れば、多分追っては来られない。
自重が重すぎる。
だが…。
誠の周囲には、三重の輪が出来ていた。
鶏、幼児、そしてまだ見ぬ長射程の人形だ。
誠は、包囲さえ崩せればいいのだが、このハンマー人形が、それをさせない。
こいつは、落とせないからだ…。
落とせば、誠が潰れる位置の物は、誠は落とせない。
いや…。
透過できるのか?
だが…。
自分の頭上の物を落とすと同時に、自分は透過してその場に残る、などという曲芸が可能だろうか?
誠自身にも判らなかった。
その時、例えば誠の頭上に重なるハンマーは、透過するのか、残るのか?
影能力は物理法則ではない分、どっちだ、と明確な答えは出ない。
透過できたらいいが、例えば誠の体分、残ったハンマーに誠が押しつぶされてしまったら、美鳥を悲しませることになる。
そう、美鳥さんは、思う以上に悲しむ!
そう考えると、誠は軽々に自分の命を天秤に乗せることも躊躇われる。
そうして誠が、自分の頭上のダモクレスの剣に気を取られていると、周りの人形が襲う隙になる。
包囲を突破しようと周りに気を移すと、頭上のハンマーに、狙われる…。
どうすればいい…。
誠は、いつの間にか、また汗を流していた。
よく出来た将棋の手にハメられたようだ。
動きようがない。
将棋は素人だけど…。
誠は考えた。
この罠が崩れる時があるとすれば、それは…。
誠は、ゆっくりと前進した。
敵が攻撃をしてきた時だけだろう…。
ぼたり、と汗を緑のカーペットに垂らしながら、誠は気を張り詰めていた。




