49第三の敵
誠は、音に耳を澄ませる。
二体の殺人人形の音は、判明した。
ニワトリは、鋭い爪をカーペットに差して走るため、トトトト…、と硬い足音を立てる。
ボーガンをもった幼児の人形は、子供用のスニーカーのために、柔らかいカーペットをタタタタタ…、と軽い音を立てていた。
もう一体。
ボーガンの人形の先から、微かな足音がしている気がした。
カス、カス、カス、カス…。
そんな風な音だ。
超遠距離用殺人人形、というところだろうか?
たぶん、これは今まで攻撃をしていない。
銃か何か、一撃必殺の武器なのかもしれない。
影繰りが影を纏っている場合、銃弾も必ずしも必殺の武器とはなりえない。
影を纏っているとき、誠でも、百メートル近く落ちて地下鉄に着地しても、高飛びをしてマットに落下した程度の衝撃に感じる。
だが、それは、銃を撃たれる、と判っている場合だ。
予め判っていれば、確かに影繰りは銃弾を受け止めえたが、このような場所で、背後から、しかも軍用の大口径銃弾などを受けた場合、話が違ってくる。
影を纏っていたとしても、骨折ぐらいするだろうし、誠のように初心者ならば、致命傷も受けかねない。
しかもこの超遠距離攻撃者は、幾つかブースを透過したとしても発見でき無さそうな距離にいると、誠は感じた。
自分の死は、美鳥のピンチに直結している。
誠は、何とか、この三体の殺人人形は引き受けなければならなかった。
そして。
ドールマスターは、美鳥にワイヤーの罠を仕掛けたように、狡猾なトラップも、人形攻撃と同じくらい得意なのだ。
誠は、だから下手に動いて変なトラップに踏み込むよりも、近くにいる二体の人形に、この場で戦いを挑んだ方が良かった。
どの道、A11の場所は、美鳥しか知らないのだ。
おおよそ、歩いてきた方角と言うのは明らかなので、だいたいの向きは誠にも判るが、一人で、勝手に見当を付けて進むのは賢明ではないだろう。
誠は、喘ぎながら、そう考えた。
トトトトト…、タタタタタ…。
二つの足音は、誠の周囲で続いている。
ブースを背にしているせいか、敵はなかなか仕掛けてこなかった。
超小型ゲームソフト型殺人人形が誠を襲ってから、何秒も過ぎないのか、それとも何十分も過ぎたのか、誠には判らない。
スマホを開ければ、光で居場所を知られてしまう。
超遠距離のスナイパーには、それで十分かもしれなかった。
とはいえ、同じ場所に屈んでいては、時間がたつほど不利にはなる。
誠は、汗をかきながら考えた。
透視をして、罠の有無を確認しながら、少し動いた方がよい。
自分の背中のブースを、斜めに透視した瞬間、誠は悲鳴を上げた。
小型犬ほどはありそうに巨大な、血にまみれ、膿の浮いた裸足が、誠の目に飛び込んできたのだ。




