46包囲
ゲームの購買ブースはかなり広く、沢山のゲーム機やソフトが売られていた。
体育館ぐらいあるんじゃないかな?
誠は用心深く、暗い室内を見回した。
右手前でマリオの画面と共に特徴的な音楽が鳴っていた、と思うと画面が消えて、左奥の大型スクリーンにファンタジー物のRPGらしい、激しいアクションがヒロイックなロック音楽と同時に流される。
巨大なドラゴンが首をもたげ、グルンと首を蛇のように回転させると、その先に小さな人間の弓使いが大弓を引き絞っていた。
画面に弓使いが大写しになる。
肩で息をしながら、ドラゴンに向け、鋭い弓を撃ち放った。
誠の顔の横を、ヒュン、と弓が通り抜けた。
ゲーム画面と、ドールマスターの攻撃が連動した?
偶然なのか?
薄暗い購買ブースに、確かに何者かがいて、走り回っているのだが、小さすぎてとても追えない。
遠くの画面が突然光り、外国風に格好良くデザインされた骸骨が、腹を抱えて、笑いだした。
どうやら、敢えて笑う骸骨を映して見せたらしい。
ドールマスターは、おそらく、このブースを支配しており、誠たちは周囲を敵に囲まれている、らしかった。
また、別な画面が浮かび、闇夜の墓地の地面から、死人の手が土を破って飛び出して来る。
誠は、異様な気配を感じ、ふと背後を見た。
漆黒の犬人形が、飛び掛かってくるところだった。
影の手で、犬を空中で押さえ、そのまま落とした。
パン。
誠の側頭部に、ツブテのような物が飛んできた。
美鳥の蝶が、それを弾いた。
「今の動きはよかったわ。
引き続き、気を抜かないのよ」
美鳥は、唸るように言い、ゆっくり歩を進める。
二次元の画面に、ドット絵で描かれた芋虫が、迷路を歩き回っている。
電子音の簡素な音楽に合わせて、緑の葉が、ちょこちょこと逃げ回る。
緑の葉は、種をまいて花を咲かせて通路を塞ぐ。
芋虫は、花を食べられるのだが、上手く、葉が、一定時間、芋虫の動きを止められれば、芋虫は、巨大な鳥についばまれ、画面クリアになるゲームらしい。
新しい画面では、芋虫が2匹になっていた。
緑の葉は、せっせと逃げていく。
だが、今度は左右から芋虫に挟まれてしまった。
音楽が、緊迫していく。
トトトトト…。
誠の横を、何かが走って行く。
タタタタタ…。
そこし遠くで、微かな足音もする。
美鳥は、急がずに歩いていた。
誠は、こんな敵の包囲網の中は駆け抜けたかったが、たぶん…。
それは、相手の思う壺なのだろう。
遠距離の攻撃をする敵と、接近して襲い掛かる敵が複数いて、常に包囲した相手の隙を狙っている。
混乱して、走り逃げようとすれば、包囲を縮めて襲い掛かれる。
美鳥は、全ての攻撃を押えながら、確実にドールマスターの潜む場所に歩き進めているのだ。
「美鳥さん、ドールマスターがいる場所って…」
誠は囁いた。
「吉井一曹が探していた、A11の放送設備なんですか?」
「…設備と言うほどの物じゃ無いわ。
たんなる、マイクの接続端子の付いた箱に過ぎない。
ただし、まぁ、そうね、私たちが向かっているのはA11といってもいいでしょうね…」
誠は唾を飲んだ。
ここで吉井一曹は殺されたのだ…。
暗闇は、酷く重く感じられた。




