45闇夜の黒猫
渡り廊下を歩いていく、一歩ごとに、周囲は暗くなってくる。
最も大きな画面には、アメリカのゲームだろうか、日本の漫画チックな絵ではないリアルな画面で、グロテスクな怪物たちが暴れ回っていた。
どうも、人間を襲うと1ポイント、とか建物を壊すと5ポイントとか、怪物に得点が入るらしい。
テトリスの要領と言うのか、怪物が破壊したことによって、沢山の人間が連鎖して死んだりすると、加速度的に点数が増加されていく。
その奥には、任天堂などの日本のゲームが映るモニターもあった。
ゲームブースはかなりの規模で、左右沢山の画面が、暗闇に浮き上がっている。
マリオが飛び、ストリートファイターが戦い、ぷよぷよが消えていく。
しゅっ。
微かな音に、誠は反応する間も無かった。
かつっ、と空中で、小型の矢が跳ね、緑のカーペットに落ちた。
美鳥の蝶が、矢を弾いたのだ。
誠の額を、どっ、と汗が流れた。
「…すいません…」
「謝る必要はないわ。
ただ、次も守れるかは判らないので、学習すること」
美鳥は、神経を張り巡らせながら言った。
改めて思うが、美鳥は強かった。
周囲360°の視界を持っているし、影の蝶は、ナイフ使いのナイフも、弓矢も弾いてしまう。
それに比べたら僕は…。
誠は項垂れた。
せめて、背後が見えたらよかったのに…。
透過する先が見える誠の感知能力は、落ちるのにはいいのだが、あまり戦闘には役立たない。
敵を知覚できれば、もちろん落とせるのだが、ドールマスターは同時に無数の人形を操る上に、形が自由なので、影繰りの闇の視力をもってしても、敵を発見できなかった。
突然、大音量で車のエンジン音が高鳴り、左手前に荒野をバギーが疾走する画面が現れた。
一定時間画面が切れ、突然、デモ画面が現れたのだ。
誠は、思わず身を屈めた。
が、何も起こらず、ゆっくりと身を起こした時。
ちらっ、と3階吹き抜けホールの手摺に、黒い影が見えたので、誠は落とした。
「よくやったわ。
それが、さっき矢を撃ってきた、赤ちゃんサイズの殺人人形よ」
美鳥が言い、誠は微かにホッとした。
「気を抜かない。
少しづつ、私たちはドールマスターに迫っているのよ。
近づくほどに、危険はどんどん増えているのよ」
美鳥は囁いた。
渡り廊下を渡ると、購買ブースに辿り着いた。
近くで見ると、ほんの薄暗い明かりがあり、しかも特殊な照明なのか、商品は、わりとハッキリ、見えるようにできている。
格闘ゲーム、RPG、迷路やアドベンチャー、様々なジャンルのゲームが、ぼんやりと輝いていて、対応するゲーム機械は、やや高い位置に、スポットライトを浴びて浩然と輝いていた。
なにかいる…。
それは、誠も感じたのだが…。
それは、闇を走り回る黒猫のように、捉えどころがない敵だった。




