42ショッピングモール
瞬間、誠は自分の首に、透過、をかけた。
キンッ、と金属的な弦が撓る音がして、誠の、首を切断するように、ピアノ線は後部甲板の人工芝の上を走り、透明プラスチックの滑り台の下で垂直になった。
誠は、改めて滑り台を透過した。
バンッ!
びっくりして振り返ると、美鳥がテーブルを叩いていた。
「油断しないで!」
美鳥は、怒りに声を震わせる。
「死んだら、もう後悔なんて出来ないのよ…」
視線をテーブルに落としている美鳥に、誠は、すいません…、と呟いた。
美鳥は、親しい人間を、自分の手で殺していた。
それについては、美鳥自身、まだ傷はいえてはいない、と語っている。
青ざめた美鳥を見ると、その言葉が決して嘘ではないことを物語っていた。
「敵は、あなたを嫌がっているわ。
彼は物凄い力の持ち主よ、この船に乗っている57人の影繰りを、たった一人で制圧しようとしている。
特A級の影繰りと言っていいでしょう。
でも、あなた一人に、彼の思惑は狂わされている。
こういう時、影の使い手は、本当に躊躇なく、相手を殺しにかかるものよ。
邪魔なら殺す。
それは、この世界では、ごく当たり前の心理なのよ。
自分の能力に不都合な能力者が見つかったら、まず、最初に殺しておく。
それが、自分が生き残る、最良の手段なのよ」
確かに、誠は、少しドールマスターを甘く見ていた。
こういう方法があり得る、と予測する慎重さを、つい忘れてしまっていた。
「まぁ、いいわ。
どっちにしろ、これでドールマスターの尻尾は、完全に掴んだ。
さぁ、誠。
奴を追い詰めるわよ」
言うと美鳥はテーブルから立ち上がり、踵を返すようにショッピングモールに歩き出した。
「美鳥さん、見つけたんですね!」
煌びやかなョッピングモールに向かっていく美鳥に、誠は小走りに追いついた。
「誠。
油断しないで。
ここは、奴のテリトリー。
しかも、ここに向かった影繰りは、おそらく皆、殺されている。
ここは、奴にとって、まさに玩具箱のような場所なのよ」
誠は、ショッピングモールを見渡した。
確かに…。
さっきのラジコンカーのような物なら、いくらでも陳列されていた。
人形は、玩具店だけではなく、クリスマスオーメントとして、ショッピングモールじゅうに展示されている。
そして、ドールマスターは、ポップコーンでさえ蛇のように操って見せた。
電飾、キラキラした飾り紐、万国旗や二階、三階の吹き抜けになっている、モールの中央廊下を飾る無数の幟まで、おそらくドールマスターは、苦も無く操って見せるだろう。
「まずいですね…。
吉井一曹は一人で…」
「彼は、もう死んだわ」
あっさりと、美鳥は告げた。




