41蛇
誠は、ラジコンカーが人工芝から消えるのを確認する間もなく、背後に影の手を伸ばしていた。
ウサギのぬいぐるみは、今や直立し、体長30センチ程ながら、二足歩行する生き物のように変化していた。
ウサギはおもむろに、自分の胸のジッパーを下ろすと、刃渡り20センチほどのアーミーナイフを取り出し、誠目掛けて飛び込んできた。
影の腕が、間一髪、ウサギの胴体を握った。
ウサギは空中で止まられたが、強力なバネでも仕込まれているかのように暴れ、ビュンビュンとナイフを振り回す。
無表情なウサギのぬいぐるみが、身体中で怒りを漲らせてナイフを振り回す姿は、動きの生々しさゆえに、かなり不気味だった。
と…。
カチャ…。
誠の背後から音がした。
慌てて振り向いた誠は、屋台のボップコーンマシンの側面の扉が、ゆっくりと開いていくのを見た。
甘い香りが、周囲に広がっていく。
えっ…。
まさか?
ポップコーンが、ゆっくりと扉から、一列に連なって、蛇のように、流れ出てきていた。
ポップコーンの蛇は、甘いカラメルの匂いをさせながら、ゆっくりと誠の方へうねってくる。
つぅ…、と、ポップコーンの蛇は、鎌首を上げる。
しゃぁー、とポップコーンの口が開いて、威嚇音を発した。
ぞっ、と誠は嫌悪感を感じ、即座に蛇を落とそうとした。
「誠、それは罠よ!」
美鳥が叫ぶ。
えっ!
驚く誠の目の前で、ポップコーンの蛇が落ち、一列に並んだポップコーンが端から順に落ちていき…、その先は、まだポップコーンマシンの中にあった。
続けざまにマシンが落ちると…。
ひゅん…。
マシンに隠されるように貼り付けられていたピアノ線が、空気を切り裂く微かな音と共に、誠の首に迫ってきた。




