40三方
「美鳥さん…。
判っていたんですか…?」
美鳥は、白いガーデンテーブルに両肘を付けるように持たれながら、
「あたしたちは、ドールマスターを追っているはずね?
なら、相手の人が、やりやすいようにしてあげるのも、良いダンスを踊るコツってものなのよ…」
だから、わざと井口さんと高屋さんは別の場所に移動させたのか…。
確かに美鳥らしいと言えないことも無い。
美鳥は、あのアクトレス教官と真っ向勝負に打って出るほどのファイターなのだ。
ドールマスターに相対しても、一歩も引く気はないようだった。
「誠、頼むわよ」
ん、と誠は動きを止めた。
真っ向勝負、じゃないのか?
瞬間、考えたが。
そうか…。
美鳥さんはドールマスターの本体を追っているんだ。
おそらく、何か尻尾は掴んでいる。
だから、この場は…。
誠は、ゆっくりと周囲を見回した。
ポップコーン、ウサギのぬいぐるみ、そしてラジコンカー。
ドールマスターは、どこに罠を仕掛けたのだろうか?
4輪駆動車のラジコンは、微かなモーター音を響かせて、誠たちのテーブルに向かってくる。
それは誠の正面、ショッピングモールから、ほぼ直線に進んで来ていた。
ウサギのぬいぐるみは、誠の背後だ。
そして、ポップコーンマシーンは、美鳥の背、斜め奥だった。
全てを同時に見ようとしても、誠と美鳥の座る、丸いガーデンテーブルを包囲するように三方に散っているため、同時に感知することは出来ない。
そして、ゆっくりとではあるが、ラジコンカーは、誠たちに近づいていた。
もう、ラジコンカーとの距離は、10メートル、無いかもしれない…。
まずい…。
ラジコンカーを落とせ!
誠が決断した瞬間、背後で、かさ、と音がした。
ウサギのぬいぐるみが、急に立ち上がり、猿のように誠に向かって、飛び跳ねていた。




