38ポップコーン
誠は、影の手を二つだし、高屋、美鳥と、井口、吉井一曹を掴んでいた。
それとは別に影の手足を出し、船の外壁を走るように、後部甲板に向かった。
報道のカメラなども回ってはいるが、影繰りは影を纏っている間は、ほぼ常人に見られることは無い。
誠たちは、無数の人たちが見守る中、気兼ねなく純白の豪華客船の外壁を進んでいた。
周囲は、多数の船が出て、何とか巨大な豪華客船を止められないのか思索中の様子だった。
「そこの壁を透過すれば、ショッピングモールが後部甲板につながっているよ」
吉井一曹が指示を出した。
壁を抜けると、多彩なクリスマスオーメントを売る専門店に出、そこを抜けると広々とした通路だった。
道には、噴水なども作られ、人口のイルカがLED灯で光りながら、噴水の周りを愛らしく泳いでいる。
玩具、本、ファション、あらゆる店が軒を並べ、カフェやレストランも賑やかにお客をな招いている。
ただ、その華やかなショッピングモールが、全くの無人だった。
「こういうとこ、始めて来ましたけど、全く商店街のようですね…」
誠が目を丸くする。
「一つの街、って感じだな」
と井口もいう。
「A11って言うのは、この先辺りのはずなんだが…」
吉井一曹は通信施設を探す。
「変ね。
少なくとも、誰か内調職員はいるはずなのに?」
美鳥は、用心深く、影の蝶を周りに飛ばさせた。
5人はショッピングモールを歩いて後部甲板に向かうが、モールはエスカレーターもあって、2階、3階と続いていた。
その先が後部甲板だが、そこにはコンパクトに、テニスコートや透明チューブの滑り台、温水プールやジャグジーバス、ボルダリングなどが楽しめるようになっていて、屋外用のテーブルや椅子もあり、総合アミューズメント施設のようになっていた。
「こっからドールマスター、探すん、えらいこっちゃね」
高屋も、全てをコンパクトに詰め込んだ施設を見渡し、困惑の声を上げた。
「俺と美鳥で、探索をしよう」
井口は三羽の鴉を上空に飛ばせる。
鳥の視力でなら、外甲板は三方から探せば、大抵のものは見つかるはずだ。
また美鳥は、蝶を3階あるショッピングモールの隅々に飛ばせられる。
屋内の捜査も、高精度に進められるはずだった。
高屋と誠は、捜索に集中する美鳥と井口を守るように、甲板とモールの間のテーブルで周囲を警戒した。
吉井一曹はA11通信施設を探し、またノートPCを探しにショッピングモールへ進んだ。
船のコンピュータへのアクセスは艦橋で調べてある。PCさえあれば可能なはずだった。
美鳥、井口は捜索に専念しているため、ほぼ無防備だ。
屋外用の白い椅子に座り、放心したように動かない。
「人形は、どうしたんでしょうか?」
誠は、美鳥の横に立ちながら、聞いた。
「ぼんとドールマスターの影能力の相性は最悪なんや。
だから、チャンスを窺っているんやで、気いつけや…」
高屋も銃を構え、周囲を見回す。
無人の後部甲板に、賑やかなアメリカンポップスが流れている。
船員や乗客は、全員、マッドドクターの催眠術でどこかにやられたのだろうか?
誠は、周囲を見回しながら、考えた。
後部甲板とショッピングモールの間は、自由に座れる、この白いテラス席で食べられるよう、様々な軽食屋台が並んでた。
ムーンライト号はアメリカの客船なのか、すべて英語表記で、屋台で売っているのもホットドックやピザ、トルティーヤなどが中心のようだ。
陽気なアメリカンポップスの流れる中、美味しい匂いも周囲に溢れていた。
ポンポン、と音がして、ふと、みるとお客さんに見えるように、か、ガラスのドームの中で、ポップコーンが爆ぜて、白い実が陽光に光っていた。
誠は、ついポップコーンに目を奪われた。
誰もいない屋台の中で、トウモロコシが爆ぜてポップコーンになった?
誰が、コーンを入れたんだ?
自動で出来る機械なのか?
調べたい…。
だが、誠は美鳥たちを守らなければならなかった…。




