35一等デッキ
「ぼん?
どうやって、ここを登るの?」
高屋は唖然としたが、美鳥は、薄く笑った。
「見せて上げなさい」
誠は、影の手で高屋と美鳥を掴むと、もう一方の影の手を壁面に伸ばした。
さらに影の足のようなものも現れ、まるでキングコングのように、そびえる一等客室のフロアを登り切り、上階デッキに一秒もかからずに登り切った。
そこでは美鳥と同級になる井口が、三羽の鴉の影を使って人形と対決していた。
影の鴉は、スキンヘッドのマッチョ人形の耳を齧り、目を抉るが、人形は煩そうに追い払うだけだ。
井口とコンビを組んだのは空手三段だという吉井一曹だったが、周りを人形に取り囲まれていた。
一曹は、蹴り、殴り、人形をバラバラに砕くのだが。
そのまま、転がるように船の揺れに合わせて床を転がった手や足は、パチンパチンと戦列を離れたところで、合体し、再び立ち上がっていた。
砕かれた足や手は再生できないようで、幾つものパーツが床に散乱していた。
そのため人形は、幼い子供の顔に成人男性の胴が合わさり、片手は白人女性で片手は熊のような男の手、などと言う不気味な容貌になっていたが、人形なので異に感じることも無く再び戦いに参加する。
誠は、それらの人形を一瞬で海に落とした。
「ああ。
誠か!」
井口とは、度々練習場で顔を合わせているので、誠は笑顔で挨拶した。
「井口君、あたしたちは艦橋に向かうわ!」
美鳥が言う。
「吉井、あんたらも合流して」
と、高屋。
どうやら高屋は吉井一曹の上官に当たるらしく、即座に計画はまとまった。
誠は、影の手で四人を掴み、白い鋼鉄製の塔のような環境に向かって、登りだした。




