34透過
高屋が小型のハンドガンで、誠の手を握った男の子の人形の胴体に発砲する。
だが…。
人形の胴体は、羽根でも入っているかのように銃弾を貫通させてしまい、服に穴が開く以上のダメージはなさそうだ。
誠は、握られていた腕を透過し、跳ねるように子供の人形から距離を取るが、30体の人形たちは、じりっ、と誠たちを包囲するように動いていく。
「なんやねん、このマネキンは!」
高屋が叫ぶ。
誠は、
「力はとても強いようです」
袖をまくり、握られた腕を見せた。
赤く、痣が出来ていた。
「接近戦する意味は無いわね」
美鳥は言い、蝶を浮かばせる。
一体の豪華なドレスを着た人形が、美しい金髪を風にまき散らして、美鳥に襲ってきた。
蝶が人形の関節に貼り付き、動きを鈍らせたところで、美鳥はしなやかな回し蹴りを放った。
人形は、デッキを滑って外周の手すりにぶつかる。
「誠、落とせないの?」
美鳥の問いに、
「落とせることは落とせますが、下の人に、余分な敵を押し付けることになってしまうのでは…」
と、困惑の表情を見せる。
「全く。
あなた、頭が固いわよ。
下のフロアに落とすんじゃなく、その下にあるのは何!」
「あ…」
誠はポカンと気が付き、
「そうでした。
それなら…」
言うと、一瞬で、30体の人形を透過させた。
無人になった船首デッキを見渡し、高屋は感嘆する。
「ぼん、噂には聞いてたけど、凄いなほんまに…。
こんな強い子、風丸以来、久しぶりに見るわ…」
「風丸?
僕は、会ったこと、ないですよね」
「あたしの師匠みたいな人よ」
美鳥が、前髪を掻き上げる。
「彼は、世界中を飛び回っている、超一流の影繰りよ。
高屋さん、あまり坊やを、調子に乗らせないでください。
今だって、あたしが言わなければ、ただの案山子だったんですから」
「あ、あれは、咄嗟に判断が…」
「船内マップに囚われ過ぎて、外が海って事も判断できない子供なんだから!」
美鳥に怒られ、誠はしゅん、と下を向くが。
「最初は皆、素人なんよ。
ぼんは、ようやっとるわ。
まぁ、それよりも…」
高屋は船を見上げた。
船首フロアのうえに一等船室が三層にわたって作られ、その上に、艦橋が青空を背景に、そびえたっていた。
「どないしよ?
一旦下りて、他の班の応援に回る?」
誠も艦橋を見上げていた。
「いえ、このまま外壁を登って、一気に艦橋を制圧すれば、事件は解決するはずです!」




