19 覚醒
戦いは拮抗していた。
レディは、場に三体のブリキの人形を並べ、さらに愉快なピエロも2体いて、精霊サイクラーといいかげんな魔導士も召喚した。
場に6体の妖怪がいるので、呪いの人形で打ち込むダメージは6。
だが変容の壁があるため、全てを青大将に飛ばされて再生されてしまう。
しかしレディは精霊サイクラーが使えるので、タップで青大将をカブトの手札に戻すのは容易だ。
その後はヨシオドールで全ての魔法を封鎖して、場をロックしてしまえば、レディの勝ちなのだが…。
カブトの手の内が読めなかった。
カブトはレディのデッキを知っていたはずだ。
この状況をひっくり返す手はずを整えているはずで、その片鱗が水地形や森の魔導士なのだと思うが、どうも、未だ手の内が読めない。
まぁ、カブトに付き合ってやる義理もない。
向こうの手札が整はないうちに決着をつけてしまった方がいい。
恭平の息が荒くなっていた。
レディは心は逸らせながら、昔もこんなことがあったのを思い出した。
恭平が風邪をひいて寝こんだ時だ。
レディが学校から帰ってみると、新しいデッキを組んだから遊ぼう、という。
38度の熱がある恭平と、デュエルをした。
ふと、思い出に浸っているとき、恭平の横に控えた医者が、点滴の調子を見て、恭平の肘の内側に刺さった針を揺らした。
「あっ」
と痛さに呻き、恭平は手札を落としてしまった。
そうか…!
そういう手だったんだ。
レディは理解した。
恭平の手札には、全てを破壊するアイテム、破滅の卵と何匹かの青大将が入っていた。
平穏で全てのアイテムを破壊するのではなく、破滅の卵を炸裂させて場を一掃。
同時に再生によって青大将だけは場に残り、無人の荒野で大暴れする。
ただし破滅の卵は、自分のターンに場に出してから、起動するまでに時間がかかるため、その時間を持ちこたえられる鍵のカード、タップを封じる、多分、誠実な態度、を引き当てるのを待っていたんだ。
はは…、ははは…、恭平は苦しそうに笑った。
「バレちゃったね。
投了だ。俺の負けだよ」
言って、恭平は残りの山札を捲って見せた。
「これだよ。
石のメダルと、誠実な態度、それに破滅の卵も、あと二枚も入ってたんだけどね」
デュエルが終わったら、自分のデッキを見せて作戦を教え合うのは、子供の頃から二人のルールだった。
何時間も、こうして遊んだ。
思えば、訓練生になった後も、一緒の現場に出た待ち時間など、デュエルをしていた。
カブトが突然、レディをシャワールームで襲った前の日も、カブトの部屋に誘われて遊んでいた。
その頃、二人の間は微妙になっていた。
一つには、お互い中学生になり、子供の頃のように二人で風呂に入る、なんてことも少なくなったが、カブトはレディと入浴をしたがり、レディは嫌がっていた。
実は、昔から、二人っきりになると、身体の大きなカブトよりも、レディの方が気が強いせいか、それとも双子とはいえ兄だったからなのか、レディの方が強かった。
単純に力はカブトの方が強いのだが、レディはダウンジング能力の賜物か直観力が強く、恭平の嘘や秘密を見抜いてしまう。
根もしっかり者のレディは、日々の生活で恭平の世話を焼いていたため、恭平はレディに精神的に依存していたのだ。
襲撃前夜。
兄弟はデュエルをして、しばらくぶりに仲の良い兄弟に戻って、笑い合った。
あの夜、恭平は自分と共に海外に行って欲しい、と頼み、レディは断った。
だがレディは、恭平が日本を出る事は誰にも言わない、と誓った。
しかし翌日、レディは襲われ、前日の約束もあって、レディは怒りを爆発させた。
襲われた恐怖ではなく、恭平への怒りで、レディは影繰りに覚醒したのだ。




