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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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17/166

17お願い

カブトは変容の壁でダメージを青大将に飛ばし続け、レディは呪いの人形のダメージを飛ばし続けていた。呪いの人形の持つ、妖怪の数だけのダメージは、今では四に増えている。


だが、再生を持つ青大将ならば、これが十のダメージでも、再生することで全てのダメージを無かったことに出来てしまう。


膠着状態だったが、レディは老いぼれ馬を場に出した。


さあ、これでこっちは、好きに魔法も使えるぞ!


レディが薄く笑った時、


「ちょっといいですか?」


青井聡が、いつの間にかミオの横に立ち、囁いた。

廊下で話そう、とゼスチャーする。


ミオは迷った。

今は怪我で戦闘力がダウンしているようだが、カブトは元々、レディを殺そうとして、背後から襲った男なのだ。

レディを一人にするのも気が引けるし、第一、隣の白衣の男が本当に只の医者なのか、ミオに判断する術はない。


「ご相談があるだけです。安心してください」


蒼井は、切れ長の冷酷な目で、ミオを見つめた。


「順平君には聞かせたくないのです。お願いします」


ミオは迷った。

だがレディはゲームに夢中のようだ。

渋々、ミオは頷き、蒼井の後を追った。


廊下をしばらく歩き、蒼井は立ち止まった。


「カブトはもうすぐ死にます」


呟くように言った。


「確かに悪いようには見えるが…」


ミオは言葉を濁した。

時折、苦しそうに身を竦めたり、息が浅くなったりしている。

どうやら本当に怪我を負った様子だが、しかし危篤状態、とは言えないし、死に瀕した怪我人はミオは何度も見てきていた。

カブトが今すぐに死ぬことは無い、と感じる。


蒼井は振り向いて、言った。


「ゲームが終われば、傷をお見せします。

そうすれば納得してもらえると思います」


青井聡は、黒ぶちのプラスチックフレームの眼鏡をかけていた。

蒼井の切れ長の目には、やや不釣り合いに感じる。


「なぜ、我々に傷を見せるんだ。

私たちは何もしてやれないぞ」


「順平に黙って死ぬのは嫌だ、と恭平は言うのです」


「胡散臭い話だな。

最後に一目会いたかった、と言うお話か?

ならば、なぜ地下鉄の駅を破壊する必要がある?

電話一本で終わる話だろう?」


「それでは順平君が恭平の怪我を知ってしまう。

恭平は、戦いたかったのです。

影繰りとしては無理でも、最後に心を無にしてゲームをしたかったのです」


「それで心置きなく死ねる、というのか?

それだけのために、この騒ぎを起こしたのか?」


蒼井は、静かに首を振った。

極秘のお願いがあるのだという。


「恭平、いやカブトが唯一助かる方法があります。

それは適合する臓器を移植することです。

恭平は望んでいないが、私は望んでいる。

それをお話ししたかったのです」


「まさか、レディに臓器を譲れ、と言っているのか?」


「いいえ。

私は喉から手が出るほど欲しいのですが、恭平が納得しない。

彼は兄弟である順平君を愛しています。

ああいう事件を起こしたので、あなたは疑わしいと思うかもしれませんが、双子の兄弟の心は複雑なのです。

兄弟として、同い年の友達として愛しているし、おそらく思慕の感情もある。

そして、死に瀕した今では、自分の未来を順平君に託しているのです」


ミオは、前髪を下ろした姿のまま、目を細め、蒼井を睨んだ。


「では、どうしろと?

末後の水を取れ、とでも言うのか?」


眼鏡の奥で、蒼井聡の目が光った。


「カブトには内緒でお願いしたいのです。

内調の最深部にあるDNAコンピューターへのアクセスに協力してもらいたい」


さすがに、ミオも驚いた。


「馬鹿な!

ひっくり返っても、あそこに侵入など出来ない。

軍事的に制圧しても、あそこの扉は開かないんだぞ!」


「ですが、最近、どんな扉も擦り抜ける能力者が現れたそうですね。

その人がいれば、どんなに硬いセキュリティも素通りできるとか。


お願いします。

別に沢山のデータを取って来ようと思ってはいないのです。

ただ一人、恭平のDNAと適合する人物さえ分かれば、我々はそれ以上、なにも望みません。

私の望みは、恭平の命だけ。

信じて頂けないでしょうか?」


青井聡が涙を流していた。

ミオは言葉に窮した。


これは真実の涙なのか?

判断できず、ミオは、ただ涙を流し嗚咽する蒼井を、凝視していた。



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