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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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135/166

135誰もいない

「フロアーを降りてみましょう。

小金井さんが敵の手に落ちてはまずいのだから、それが一番優先です」


誠は言った。


頭の中では、まだ虫の事を考えていた。

蜘蛛女との戦いで、あの動きを止め、脈拍までをコントロールする虫が何もしなかったのはおかしい…。


その事は、誠の頭に引っ掛かり続けていた。


ただし、美鳥に言われたことも納得できる。

糸の上での戦いを、虫使いは想定していなかったのではないか、というものだ。


そして美鳥の言う通り、一匹だけ見せるなんて馬鹿げている、というのも判る。


見えない攻撃がそうであったように、不意打ちが、攻撃としては常に最上のはずなのだ。

特に、影の戦いのように特殊な技の出し合いならば、自分の手のカードは見せず、見せた敵は必ず殺す、というのは理論上正しい。


僕のように、透過の坊や、となってしまうと、相手は射程に立ってくれないし、蜘蛛女は落ちないよう命綱まで付けていた。

落とせないから、僕はわざわざ相手の巣の中に飛び込んで透過を防御に使い、影の体で戦わなければならなかった。


戦いが、どんどん簡単ではなくなっている…。


だからこそ、予め相手に手の内を見せる、なんてことは意味がない。

不意打ちで、一気に全員に虫が取り付けば、それだけで相当の猛者集団でも沈黙させてしまう破壊力が、あの虫にはある。


体を、一部にしろ全く動けなくしてしまうのだ。

しかも、脈拍を操る、という猛毒にも等しい副作用まで持っている。

誠は、特に医学知識が無いから脈だけしか判らなかったが、詳しく調べればもっと別の体内コントロールをしてのけている可能性も充分にあった。


あんなものが2、3匹、身体に貼り付いたら、それだけで殆ど行動不能になる。

2,30匹いたら…、例えばミオさんやレディさんだって…。


そこまで考えて、誠は息を呑んだ。


「もしや、虫は下の階でダンサーチームに襲い掛かっていたんじゃあ…」


「ん、可能性はあるな…。

それならミオさんから何の返答も無いのも説明がつく」


井口が、下の階に降りる階段の傍で立ち止まった。


「下の階には虫が溢れている、と考えるのね…」


美鳥も唸った。


井口は頷き、


「誠が転んだのも階段から上がる時だったしな。

だとしたら、うっかり足を踏み入れるのは自殺行為だ。

まず、俺のトンビと美鳥の蝶で様子を見て、可能ならば、階を隔てたまま戦う方が賢い」


2人は、影を階下に飛ばした。


誠も、下の階ならば透視できる。


下の階には…。


誠が口を開くより早く井口が言った。


「おい、下の階には誰もいないぞ…」


誠の透視は、誠自身の立ち位置から下階をみるため、中央部のガス室が視界を遮る。

だが井口は吹き抜けから素早く3匹のトンビをフロアーに走らせ、精密な立体地図に構成する能力だ。


「いない…、下の階に降りたのかしら?」


透過してハンペンに侵入した誠達は、正確にそこが何階あるのかは把握していなかったが、登る階段の近くに、確かに下る階段もあったはずだ。


「迂闊に動くなよ。

虫の疑惑が晴れたわけじゃない…」


言いながら井口は階下を調べ、1分も立たないうちに全てを掌握した。


「…おい…、4人は何処にもいないぞ…」


「隠し部屋でもあるんでしょうか?」


誠の能力の方がそういうものは探しやすい。

だが、いくら透視しても隠し部屋は見つからなかった。


「どういうことだ!」


井口は怒気を発したが、誠が冷静に語った。


「三人目の影繰りがいるのでしょう…」





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